前出の菊地、住吉同様、プロ入りには遅い年齢に加え、インコースを克服するため、極端なアウトステップからアッパースイングする独特の打撃フォームを心配する声もあったが、本人は「プロで通用するかどうか不安でないと言えば嘘になりますが、この打ち方をあみ出したからこそ、ここまで来れたと思うんです。直すつもりはありません」(週刊ベースボール11月25日号)と“男のラストチャンス”に賭けた。
だが、和製大砲と期待されての入団とは裏腹に、1年目は出場5試合の10打数1安打。2年目も23打数5安打と苦闘の日々が続く。そして、3年目の94年9月29日の日本ハム戦、芝草宇宙から待望のプロ1号を放ち、「これからは気楽に打席に入れます。これまでわかっていても開き直れなかったから」とようやくプレッシャーから解放された。
これがプロ5年間で唯一の本塁打となり、通算37試合、打率.143、1本塁打、4打点で96年に現役引退。プロで花開くことなく終わった全日本の4番は、都市対抗予選で3試合連続弾、本選でも5試合連続の9本塁打と、怒涛のように本塁打を打ちまくった91年が、「(野球)人生のピークでしたね」と回想している。
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。