「株式会社竹内まりや」がなぜ繁盛したのか分析し、それを貫く価値を言語化していた。成功したビジネスを解説し、一般化する「マーケティング教室」そのものだと思った。講師が使った「ミドルオブザロード・ミュージック」がよくわからなかったので、「middle of the road」を英和辞典で引いてみた。「(人、政策、音楽などが)穏健な、中道の」とあった。そうか、道の真ん中の音楽か。真ん中だから売れたとは、単純明快で実にわかりやすい。そう思った記憶がある。

■自分から遠い人の存在が見えなくなる理由

 それから4年。7月9日のラジオを聞いて、なぜ山下さんの総括が「ご縁とご恩」になったのかを考えた。「ミドルオブザロード」の限界。そう思った。道の真ん中にいるからビジネスは成功した。だが、真ん中にいればいるほど、自分から遠い人が見えなくなるのはよくあること。山下さんも「性加害」を一般論として否定はしても、「被害を受けた」と訴える一人ひとりの顔が見えない、だから無視してしまえるのではないか。そう感じた。「ミドルオブザロード」ゆえの強みと弱み。マーケティング的にはそんなふうに表現するのだろう。

 NHKの番組で、山下さんの出演は声のみだった。彼の静止画像は映っても、語っているところは一切映らない。徹底した戦略を立て、守ってきた人なのだと感じた。竹内さんの音楽について「人間存在への強い肯定感」があると言っていたが、そう言えるのは「自分への強い肯定感」があるからだと思う。音楽センス+ビジネスの成功=自分への強い肯定感。これも、自分から遠い人の存在が見えなくなる理由で、真ん中という隘路にはまったのが今回の問題だったのではないかと思うのだ。

 男性の限界もあると思う。女性として62年間生きてきたから言い切るが、世の中を動かしているのはおっさんだ。少しずつ、変わってきているかもしれないが、真ん中にはどーんと男性がいる。2023年版「ジェンダーギャップ報告書」で男女平等125位と認定された国の、それが実態だ。逆に言うなら「真ん中でない人」を感じることについては、女性が得意で男性は苦手。男性の中でも、成功体験が大きければ大きい人ほどそれが苦手になる。肌感覚でもそう思うし、いろいろな事象がそう思わせる。

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小池百合子とプーチンと習近平と同い年