山下達郎さんのラジオでの発言に注目が集まっている。山下達郎さんは、同じ事務所に在籍していた音楽プロデューサーが、「メディアでジャニーズ問題について発言したことが理由で契約が途中で終了した。山下達郎氏も事務所の方針に賛成している」という趣旨の発信をしたことで、音楽ファンらから批判を受けていた。ラジオでの発言は、そのことについて、自身の見解を示したかたちだ。ただ、その弁明を聞いてもどうにもすっきりしない。コラムニストの矢部万紀子さんが山下さんの発言を読み解いた。
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ミュージシャンの山下達郎さんがジャニー喜多川さんについて語った、7月9日放送のラジオを聴いた。経緯などをすっ飛ばし、山下さんが語ったジャニーさんの「性加害」についての認識を、短くまとめるとこうなる。
・性加害問題について私自身は、1999年の裁判のことすら聞かされていなかった。
・本当なら許し難く、第三者委員会等での事実関係の調査は必須と考える。
・私自身がそれについて知っていることが何もない以上、コメントを出しようがない。
・自分はあくまで一作曲家、楽曲の提供者である。
自分とジャニーズ事務所との歴史、アイドル論なども語ったが、そちらは省略する。
「性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許し難いことであり」と最初の方で述べ、「繰り返しますが、私は性加害を擁護しているのではありません」と最後の方でも述べていた。だけど、やっぱりわかってないなーと思った。頭では理解しても、本当のところで「性加害」をわかってないのだと思う。
山下さんは「1999年の裁判のことすら聞かされていなかった」から、知っていることがない、だから意見を言いようがないーーという立場だった。ジャニーさんをめぐっては、被害を受けたと証言する人が日を追うごとに増えている。だがそういう状況には触れず、「裁判のことすら聞かされていない」とした。事実認定をする場である「裁判」でさえ知らない。そう語ることで、事実認定されていない「証言」は眼中にないと匂わせる。そういう論理展開かもしれない。そうだとしても、「聞かされていない」ってどうだろう。誰かがわざわざ「聞かせてくれる」ことしか知らなくてよい。山下さんはそういう人だとなってしまうが、それでいいのだろうか。などなど、すっきりしない弁明だった。