■司法人材を増やすため2004年法科大学院設立
法科大学院設立の背景には、政府が1999年以降に施行した司法制度改革がある。日本は先進国の中で司法人材が圧倒的に少なく、国民に十分な司法サービスが届かないとして、フランス並みの司法人材数を目指し、5倍増を目標とした。法科大学院もこの流れで、高度な専門性が求められる職業人を育てる専門職大学院として、2004年に設立。その目的を、水野教授は次のように話す。
「司法試験対策を、点から線へ変えていこうという動きがありました。当時の対策は予備校が主流で、受験技術の一発勝負で合否が決まってしまう弊害もあった。そこで法科大学院でしっかり教育し、良い人材を育てていこうという気運が高まり設立されたのです」
設立後、修了者の司法試験合格率が当初の想定よりも大幅に低かったことなどから志願者が減少し、募集停止を余儀なくされた大学院もあった。しかし近年は合格率も上昇傾向にあり、法律を学ぶ学部を3年で早期卒業し、法科大学院へ進学できる「法曹コース」を開始するなど、改革も進んでいる。
司法試験受験資格を得るには法科大学院修了のほか「予備試験」がある。受験資格はなく誰でも受験可能だが、合格までにかかる時間は受験生次第、合格率も3~4%と狭き門だ。予備試験対策のため予備校に通う人も多い。
法科大学院には、法学部などで法律の基礎を修得した学生が対象で2年間学ぶ「既修者コース」と、基礎から3年間学ぶ「未修者コース」がある。未修者コースの入試では法律知識を問う出題はない。水野教授によると、法学部出身者でも、あえて未修者コースで3年間しっかりと学ぶ学生が増えているという。野嶋教授は、予備試験対策予備校にはない、法科大学院での学びについて次のように話す。
「法科大学院では、私たちのような実務家教員が経験した具体的な事件を元に、どう筋道を立て被疑者を弁護したのか、実務的なことを教えています。そこに法科大学院の意義があります」