■これから重要性が増していく環境系のリカレント教育
環境システム学専攻には、地球環境に関連する各分野の教員が集まり、さまざまな測定機器や分析装置なども活用して研究を進めている。
気象学が専門の渡来靖教授は、植物や地学の専門家と話すと気づきや刺激があり、同時に研究の難しさも感じるという。
「私たちは自然環境から離れて生きていくことはできません。専門分野に閉じないで情報や意見を交換しながら実際に起きている環境問題にアプローチしていくことは、私たちの責務であり日本や世界にとって必要なことです」
地質学を研究する川野良信教授は、過去の環境を知る学問である地質学が今後の環境問題を推測する上で必要になると説明する。
「これまでに起きたさまざまな環境変動の原因を一つひとつ知ることで、人間が今からこんなことをしてはいけないのではと考えることができます」
米林仲教授は専門の生態学について「研究対象が人間以外の生き物の暮らしぶりから、人間と自然との関わりへと広がっています。生物や自然のあり方を学ぶことは、人間が環境と共存していく基礎になります」とその役割を解説する。
吉田教授は情報工学が専門で、地球環境情報学を担当している。
「工学は何かを作ることが目的ですが、環境系はフィールドワークを重視して自然環境の複雑な相互作用を明らかにしようとします。どちらも社会をよくするためで、工学の世界とはアプローチが異なりますが、めざすところは同じと実感しています。環境系という切り口から研究をすることには、大きな意義があると思います」
グリーンと呼ばれる領域では、理系・文系の枠を超えたさまざまな専門的な知が求められる。社会に出てから自然や環境に興味を持ち、学び直したいというときに、それを受け入れられる場はまだ多くない。環境系のリカレント教育は、これからさらに重要性を増していくはずだ。
【プロフィール】
吉田紀彦 教授(よしだ・のりひこ)
立正大学地球環境科学部環境システム学科
埼玉大学名誉教授、2021年から現職。1979年東京大学工学部計数工学科卒業。81年同大学院工学研究科計数工学専攻修士課程修了。工学博士(1990年)。最近はサウンドスケープ(音の風景)にアンビソニックス(三次元全周型録音技術)を取り入れた環境音の立体的な解析などに興味を持つ。
(取材・文 福永一彦)