※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 2年間しっかり研究に打ち込む大学院修士課程でのリカレント教育。その学びは社会でどのように生きるのだろうか。技術力と経営管理能力をあわせ持つMOT(技術経営)修士の育成に取り組む大学院と、環境問題についてさまざまな専門領域からアプローチする大学院について、AERAムック『大学院・通信制大学2024』で取材した。

【ランキング】アクセス数の多かった講座トップ20はこちら リカレント教育のポータルサイト「マナパス」

*  *  *

 優れた技術を持ちながらものづくりに生かしきれていない──。製造業ではこのような例が少なくない。背景には有能な技術者が実力を発揮できない、社会のニーズを的確に把握できていない、といった課題がある。山口大学大学院技術経営研究科では、こうした課題を抱える管理職者や経営者がMOT(技術経営)修士の修得をめざす。また環境への負荷を減らすことが地球規模の課題となるなかで、「グリーン調達・購入」や「グリーン投資」が注目されている。立正大学大学院地球環境科学研究科環境システム学専攻では、この「グリーン」と関わりの深い自然科学の領域を研究している。

■技術力を生かすために、マーケティングや経営を学ぶ

 山口大学大学院技術経営研究科は、MOT(技術経営)修士を育成する専門職大学院として2005年に設置された。学生は製造業で働く30代から40代の社会人が中心だ。MOTはManagement of Technologyの略で、このMOT修士は技術者のためのMBA(経営学修士)といえる。ものづくりや技術に強みを持つ会社がMOTの学位を取得した人材をもつことで、戦略的な経営手法を採り入れて業績を回復したり、さらに発展させるための知識やノウハウを得ることができる。どのような目的でここに学びに来るのかを、同研究科でテクノロジー・マーケティング特論などの授業を担当する福代和宏教授に聞いた。

「まず多いのが、企業に勤めるエンジニアが部課長などになって、マーケティングや組織のマネジメント、財務の知識を求められるというケースです。中小企業の経営者やその後継者の姿も目立ちます。『今までに得た知識や経験だけでやっていけるのだろうか』という思いから、経営について体系的に学び直したいというケースです。製造業だけでなくサービス業などに従事していたり、ものづくりの施策を研究する自治体の職員、工場などの施設・設備や技術を見る目を鍛えて融資判断に役立てるため、金融機関から来る人もいます」

次のページ
最初から売ることを考えて開発計画を立てる