商品開発に必要なマーケティングの基礎知識の授業では、製品と商品は違うということを強調するという。

「設計図通りに製品を仕上げても、それが商品として売れるとは限りません。最初から売ることを考えて開発計画を立てるというマーケティングの基礎を知って、ものづくりへの認識が一から変わることもよくあります。中小企業なら、用途に合わせて適切な素材や低コスト化を提案することで、言われた仕様の通りに作るだけの下請けから抜け出せます。信頼を得て競争力が高まり、さらには自社ブランド商品の開発にもつなげられます」

 学生同士の横のつながりから新たなアイデアも生まれる。商品企画会社の経営者である学生が金属加工会社の社員の学生とコラボ商品を開発して販売しているのがその一例だ。「社会人は大学院でしっかりと知識やスキルを得て持ち帰ろうとする高い意欲を持っています」と福代教授は話す。

■何のために大学院で学ぶか、明確な目標を持つことが大切

 授業は社会人に配慮して基本的に土曜日に集中させている。対面形式だけでなくリモート形式も採り入れて教室から中継するとともに、録画もして空き時間に視聴できるようにもしている。

 ゼミ形式の「特定課題研究」では、修士論文にあたる研究報告書を作成する。自社が取り組むべきテーマを取り上げ、調査した資料をまとめたりビジネスプランを練る。企業の管理職であればその成果は実際に事業計画に反映される。中小企業ならば新商品開発や社内の教育体制の整備などにつなげていく。修了後に会社に戻ると取締役や工場長など幹部クラスになる例も多い。アカデミックな研究成果を応用できる実務家を育てることに力を入れていると福代教授は語る。

「大事なのは、企業の管理職なら今からこれだけの能力が必要になる、経営者なら会社を立て直したり大きくしたいというイメージを持つことです。なんとなくスキルアップできそうだからと来ていてはだめで、何のために学ぶかという目標が明確なら、学びと仕事の両立が大変でも乗り越えられるでしょう。大学院では教授に直接聞いたり演習に参加することで、個別の疑問も解決できます。これまでのように学部生を受け入れるだけでなく、学びたいときに学べて、また社会に戻れる場にする必要があります」

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ITの基礎から学びたいという声にも応える