同専攻主任の吉田紀彦教授は「私たちの研究分野は、それぞれがグリーンという自然環境を広くとらえたキーワードに関わっています」と話す。一口にグリーンといっても気候変動、次世代エネルギー、SDGs、カーボンニュートラルなど範囲は広いが、多くの課題を抱えていることは間違いない。それを解決することが、次なる成長につながるとされる。
これまでに環境システム学専攻で修士や博士の学位を得た社会人の多くが、20代から30代で学びをスタートしている。彼らの修士論文、博士論文はさまざまな領域に及ぶ。
2000年に研究科が開設されてから最初の社会人学生は文系出身者で、以前から興味を持っていたバッタの種類と生息地の環境との関係を研究するため、勤務先の埼玉県庁を退職し、修士課程に入学した。2002年に修了し、現在は環境コンサルタントとして働いている。
また、環境コンサルティング会社に勤務しながら希少植物の水草の多様性を復活させるためにDNA関連の技術を学んでいる人もいる。
同大学の地球環境科学部出身の女性は、卒論執筆の際、研究に興味を持ち、いったん就職したものの退職して修士課程に進んだ。地下水への化学物質の流入状況を詳細に分析し、さらに博士後期課程に進んで現在は1年次に在学中だ。
もう一人の女性は同大学修士課程を修了して気象関連会社に就職後、転職して航空管制に関わる仕事に就いた。現在は大学教員で、博士号取得のため2021年に入学、研究内容は自らの職歴に深く関わる。上空を流れるジェット気流に沿って縞模様の雲が出現すると乱気流が発生することが、航空管制の現場ではよく知られている。しかし科学的な研究対象とした例は少ない。この現象についてデータを集めて雲と気流の関連性を分析し、飛行機がより安全に航行できるようにすることをめざしている。
中学校で理科を担当し、教員を退職後に60代で入学した人もいる。埼玉県飯能市に分布する礫岩について、多摩川と荒川のどちらから流れてきた礫なのかを研究する。もともと大学時代は地質学を学び、就職後も学校教員の同好会に加わり調査活動を続けていた。修士課程から博士課程に進学し2年次に在学中だ。