※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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大学ランキング2024』(朝日新聞出版)では、小学校教員の採用ランキングを掲載している。その一部を大幅に加筆し、国立大学と私立大学の教員採用実績を比べて、教員養成のあり方について考えてみた。

【大学ランキング】小学校教員採用者数ランキング1~15位はこちら

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 公立小学校の教員採用試験で競争率が低迷を続けている。

 2022年度の全体の競争率は2.5倍で、1979年度の調査開始以来、過去最低を更新した。就労環境の厳しさから教員志望者が減少している一方、採用数は増えているからだ。12.5倍と過去最高の競争率だった2000年度は3683人の採用だったが、22年度は1万6152人と採用数が約4.4倍に増加。採用が増えている背景には、定年を迎えた教員の大量退職に伴う教員不足がある。

 なかでも教員の年齢層の偏りが大きい自治体が影響を受けており、採用者数が安定している自治体は競争率を維持している一方、採用者数を増やしてきた自治体は競争率が低下している。競争率の低下は「教員の質」の低下にもつながりかねず、各自治体が対策に乗り出している。

■教員採用者数が「私立大学>国立大学」となる地域も

 こうしたなか、小学校教員採用者の大学別について大きな変化が見られるようになった。

 小学校の教員養成は、地元の国立大学の教員養成・教育学系学部が強かった。長年、多くの教員を送り出してきた実績があり、教育委員会、小学校とのネットワークがしっかり築かれていた。

 しかし、2010年代になると、小学校教員で、地域によっては私立大学のほうが国立大学より教員採用者数が多くなるケースが出てきた。

 2022年の採用実績を見てみよう。

*栃木:白鴎大149人>宇都宮大62人

*東京:玉川大222人>東京学芸大215人

*埼玉:文教大251人>埼玉大129人

*石川:金沢学院大30人>金沢大29人

*三重:皇学館大108人>三重大69人

*岐阜:岐阜聖徳学園大217人>岐阜大99人

*奈良:畿央大90人>奈良教育大63人

*兵庫:武庫川女子大89人>兵庫教育大81人

 私立と国立の逆転現象が起こった背景には、さまざまな要因がある。

 まず、国立大学教員養成・教育学系学部の学生が教員志望をやめて他業種に進路を求めたことが大きい。教員という仕事が大変できつい「ブラック職場」的に受け止められたようだ。長時間労働で、いじめ、不登校、モンスターペアレントなどへの対応に追われ激務というイメージが持たれており、実際、国立大学教員養成・教育学系学部からの教員採用試験受験者は伸び悩んでいる。

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教育系学部が増えた私大