一方で、私立大学は2010年代以降、教育系学部が増え、国立大学以上に指導を熱心におこなうようになった。校長や教頭などの管理職、教育委員会幹部などの経験者が、教員志望の学生にていねいに指導している。
私立は大学の生き残りをかけて教員養成に力を入れてきた。
私立が国立と拮抗している(しつつある)地域を紹介しよう(2022年)。
*神奈川:横浜国立大94人、鎌倉女子大89人
*静岡:静岡大104人、常葉大80人
*京都:京都教育大86人、佛教大79人
*岡山:岡山大88人、環太平洋大81人
*山口:山口大64人、山口学芸大53人
*鹿児島:鹿児島大71人、鹿児島国際大56人
■国立と私立の差がなくなってきている
国立、私立の両方で教員の養成を担当した教育学者はこう話す。
「優秀な人材は国立に多く集まります。しかし、昨今、国立の学生は学校を“ブラック職場”として敬遠して他業種に進みたがる傾向が見られます。自分の優秀さを試したいのでしょう。一方、私立には国立より子供たちを教えたいという強い意志を持つ人材が多く見られます。なかには学力が十分でない学生はいます。が、彼らは一生懸命に勉強する。以前は、国立のほうが私立よりも優れていると思われていました。いま、両者の差はなくなっていると思います」
学校でより良い教育を行うために、教育現場は変化が求められる。
たとえば、小学校で英語教育が本格的に行われることになった。私立大学はこの分野で力を入れている。関西外国語大英語キャリア学部英語キャリア学科には小学校教員コース、桃山学院教育大人間教育学部人間教育学科には小学校教育課程のなかに英語教育コースがある。
学校は「ブラック職場」と言われることがある。それでも「学校の先生になりたい」と夢を抱く大学生、そして小中学生や高校生はたくさんいる。彼らの夢をつぶさないように学校で働く環境を改善してほしい。
教育は国の根幹をなす「事業」である。国づくりに必要なのは学校制度をしっかり整備し、教育を充実させることである。
教育において、あらゆる分野に優れた人材、適材適所の人材を送り出すことができるようにする。それが国民のしあわせにもつながる。
(教育ジャーナリスト・小林哲夫)