国内きっての人気観光地の一つ、沖縄。新型コロナウイルス感染症の5類移行で混雑必至の今夏だが、梅雨明け直後から夏休みに入るまでの間は「穴場」とされ、旅行代金も比較的リーズナブルだ。例年の梅雨明けは、6月中下旬。予約するならいま、ということだ。
コロナ前と後では、閉店や移転など現地の様子に変化が多いので、事前にしっかり確認しておきたい。久々の沖縄旅行なら、定番&最新のおみやげのチェックも必須。6月20日に最新版が刊行されたばかりのガイドブック『大人絶景旅 沖縄 慶良間諸島’24-’25年版』では、定番中の定番ともいえる沖縄の伝統工芸品や銘菓について、誕生秘話や歴史を紹介している。そのコラムを公開したい。
よく知っているつもりの名品も、その背景を知ると見方が変わる。旅の思い出とともに沖縄という土地への愛着も深まるはずだ。まずは「ちんすこう」から、名品を巡る旅を始めよう。
琉球王国御用達「ちんすこう」
沖縄みやげの代表的銘菓であるちんすこう。多数のメーカーから販売され、種類は定番から変わり種までさまざまだが、その起源は琉球王国時代にさかのぼる。
琉球の頃、王家や貴族の間で食された琉球菓子の中で、最も親しまれていたのがちんすこうと言われる。今では手軽に手に入るが、当時は高貴な者しか口にできないとされた逸品で、庶民の憧れの存在だった。
ちんすこうは、琉球王府の包丁役を務め、1863年、和と唐の菓子方式を伝授された新垣筑登之親雲上淑規(あらがき・ちくどぅん・ぺーちん・しゅくき)によって創られたと伝えられている。筑登之親雲上(ちくどぅん・ぺーちん)は琉球王府の位階名で下級士族にあたり、包丁役(料理方)を務めていた新垣淑規(あらがき・しゅくき)は、首里城下に店を構える老舗、本家新垣菓子店の初代。本家新垣菓子店は初代の志を継ぎ、150年以上にわたり琉球菓子の伝統を守ってきたのだ。
ちんすこうの材料は、時代とともに上質な物を取り入れているが、配合は当時のままだという。王朝時代から親しまれた銘菓は、時代により繊細に変化しながら、職人たちの手によって守られてきたのだ。