ぬくもりの器「やむちん」
温かみあるデザインで親しまれる伝統焼物「やちむん」にも、中国や朝鮮、東南アジア各国の影響が見られる。1682年、琉球王府が各地に点在していた窯元を那覇市壺屋に統合したことを機に、やちむんは大きな発展を遂げた。
戦後、比較的軽微な被害ですんだ壺屋は、再興とともに勢いを取り戻す。しかし、窯が市街地に集中していたことで煙害が問題視され、薪窯の使用が難しくなった。
時を同じくして、基地返還による土地転用を模索していた読谷村は、窯元の積極的な誘致を行った。1972年、人間国宝の故・金城次郎氏が読谷に窯を移したことを機に、個人窯と共同登窯が多数集まり「やちむんの里」が形成された。
やちむんは、琉球時代より続く歴史の中で、時代の波にさらされながらも職人たちの情熱によって守られた。読谷と壺屋は伝統を支える二大エリアとして、発展してきたのだ。
慶事に欠かせない「ののじまんじゅう」
最後に紹介するのは、「ぎぼまんじゅう」。干菓子や松風と並ぶ沖縄県内の祝事用菓子の一つだ。中央の文字は「熨斗(のし)」の「の」に由来し、通称は「ののじまんじゅう」。結婚式や進学祝いなど、あらゆるお祝い事に用いられてきた。
中華まんじゅう風の見た目だが、材料は別物。小麦粉を生イーストで発酵させ、塩や砂糖でシンプルに味付けした生地で粒あんを包んでいる。創業100年を越える老舗の専門店「ぎぼまんじゅう」では、沖縄でサンニンと呼ばれ、昔からご飯やお餅を包む際に使用される月桃の葉を、持ち帰りの際のラッピングに使用。この爽やかな月桃の葉の香りが、沖縄らしく、いいアクセントになっている。
沖縄は出生率が高く、また、助け合いの「ゆいまーる精神」が根付いている。そのため、親族同士のつながりも強く、家族や親族の人生のお祝い事に関わる機会も多いのだ。こうした文化的背景も手伝い、ののまんじゅうは人々に愛される幸福の銘菓になっていったのだろう。
(構成/生活・文化編集部 白方美樹)