2020年に始まったコロナ禍で医療界が受けた大打撃――受診控えやコロナ患者受け入れによる一般病棟の削減、それらによる「手術件数」の落ち込みなどを、データ比較を交えながら検証した記事を、22年3月に報じた。さらに1年が過ぎ、医療現場はどうなっているのか。20年に減少した手術は今にどう影響しているのかを続報する。本記事は好評発売中の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』から一部抜粋した。取材は22年12月から23年1月におこなった。
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■コロナ禍以前には届かないものの、新患や手術の数はV字回復
国内82の医学部のトップと138の大学病院の病院長で構成される「全国医学部長病院長会議」は、2020年度版に続き、「新型コロナウイルス感染症が大学病院経営に与えた影響(2021年度)」を23年1月に発表した(下表)。
これによると、実質「コロナ禍初年度」となる20年度に急激に落ち込んだ「外来延べ患者数」「初診患者数」「入院患者延べ数」「手術件数」「救急患者」は、21年度にいずれも回復の兆しをみせた。コロナ禍前には届かないものの、患者が病院に戻り始めていることが見て取れる。中でも「初診患者数」は19年の335万5千人から20年度の282万3千人を経て21年度は314万4千人に、また「手術件数」は153万3千件から142万4千件を経て152万2千件へとV字回復をみせている。
しかし、例えばがんのような重大疾患は、1年でも発見が遅れると病気が進行して取り返しのつかないことになりかねない。
そこで今回は「がん」にテーマを絞り、コロナ禍で患者の受診形態にどんな変化があったのか、その結果見つかるがんのステージや医療対応にどんな動きがあったのかを、4人のがん治療医の話をもとに検証する。
■肺がんは受診・健診控えの影響が色濃く出た
東京都文京区にある東京医科歯科大学病院は、コロナ禍の最初期から積極的に感染者を受け入れる施設として、メディアでもたびたび取り上げられてきた。同院呼吸器内科教授の宮崎泰成医師によると、気管支鏡検査のように緊急性の高い検査は、どのような状況でも先延ばしせずに対応してきたが、受診者が減ったことで肺がん治療数の落ち込みを止めることはできなかったという。