そんな同院も、コロナ2年目の21年以降は回復基調に転じている。呼吸器内科に限ってみれば、コロナ禍前を上回る実績を示しており、22年は未集計だがさらにその数は増えている実感があるという。
「受診控えの反動が起きています。健診や検診から送られてくる患者も、診療所から紹介されてくる患者も軒並み増えています。21年は、進行した肺がんの症例が多かった印象があります。これは1年間の受診控えの影響だし、何より健診の重要性が示される結果になったと思います」(宮崎医師)
ここに来てようやく「元の状況」に戻ってきたという宮崎医師の実感は、数字にも表れている。国立がん研究センターが発表した「院内がん登録2021年全国集計 速報」(国が指定するがん診療連携拠点病院等と小児がん拠点病院のうち計455施設を対象に集計)によると、全がんの登録件数は20年に3万3034件減少したが、21年にはコロナ禍以前の水準まで戻った(下表)。その登録されたがんが検診で発見された割合も、20年は14.4%減少したが、21年はコロナ禍以前の2.8%減まで回復している。
■病態の悪い患者が多い科では、患者数は微減にとどまった
東京都中央区にある国立がん研究センター中央病院。同院では20年4月にコロナ病棟を開設し、中等度までの患者を受け入れてきた。そんな同院の肝胆膵内科では、コロナ禍によるがん患者数の大きな落ち込みはなく「微減」にとどまった。肝胆膵内科長・奥坂拓志医師の分析はこうだ。
「肝胆膵内科の特性として『病態の悪い患者』が多いので、『セカンドオピニオンだけ』というケースはもともと少ない。そのため治療開始数も入院患者数も、コロナによって影響を受けたという感覚はあまりないんです。減ったとすればおそらく遠方からの患者。当院には、『がんになったら国がん(国立がん研究センター)へ』と考えて地方から来院する患者さんが一定数いるのは事実です。そうした患者さんはコロナ禍で移動制限がかかったことで地元の病院を受診するようになったものと思われますが、これも、当科の性質上、他科に比べるともともとの数が少なかった」