「顧客情報や属性を分析できて、今のトレンドをいち早くつかめるかどうかがカギになります。何より、統計学的思考は必須です」(松本さん)

 年収別の転職先選択にも注目したい。リクルートエージェントの調査によると、前職の年収が400万円を超えるかどうかが、キャリア選択の分岐点の一つといわれている。翻って、年収が上がるほど、職種を変えずに業界だけまたぐ転職者が増える傾向にあるという。

 リクルートキャリアの藤井薫HR統括編集長は言う。

「スポーツの世界でたとえると、野球の世界で大活躍しているイチロー選手がサッカー選手にならないのと同じです。筋力もあるし、運動センスもある。ですが、球団を移すことはあっても、競技を変えることはないでしょう。熟練スキルが求められる職務を担うほど、その職種が持っているスキルをベースに移動していくのです」

 さらに、異業種への転職でも業界トップなどにこだわらず、成長産業にスライドするケースが年々目立ってきたと言う。

「上司や同僚など一緒に働く人材を重視する人が多いです。伸びている会社であれば、自然と優秀な人が集まってくる。年俸が下がってもメジャーリーグに行くのと同じで、高年収者ほど刺激し合える仲間という、目に見えない報酬を求める人が増えていきます」(藤井編集長)

 来年には、小学生のプログラミング教育が始まり、将来、バリバリのIT人材と机を並べる日も遠くはない。だが、不安に思うこともない。

「20年くらい前は多くのビジネスパーソンがパワーポイントやエクセルを使いこなせていませんでしたが、今は誰でも使えるようになった。それと同じで、簡易に需要予測や統計学的なものをアウトプットするツールがいずれ出てくるでしょう。分析力を鍛え、自分の仕事のヒントにできる人であれば戦うことはできる。もはや職種名一本でやっていける時代ではありません」(doda」大浦征也編集長)

 長年培ったスキルをどう生かすかは自分次第。因数分解したスキルを組み合わせることで、転職の可能性は無限に広がる。(編集部・福井しほ)

AERA 2019年9月30日号

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