京都大学総長 山極寿一さん(66)/1952年、東京都生まれ。ゴリラの研究と、その保護活動にも尽力する。著書に『「サル化」する人間社会』(集英社インターナショナル)など(撮影/写真部・岸本絢)
京都大学総長 山極寿一さん(66)/1952年、東京都生まれ。ゴリラの研究と、その保護活動にも尽力する。著書に『「サル化」する人間社会』(集英社インターナショナル)など(撮影/写真部・岸本絢)
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 愚かだと分かっていながら、人間はなぜ戦争をするのか。戦争を回避するにはゴリラに学べと、ゴリラ研究の第一人者、京大総長の山極寿一氏が提言する。

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──戦争は人間の本性だとも言われてきました。

 人間の進化の歴史は約700万年ですが、武器を持って人間同士で戦うようになったのはせいぜい1万年前。それ以前は平和的だったはずです。それが戦うようになったのは「共感能力」が暴発したからだと思う。

──「共感能力」とは?

 共感能力は、自分以外の者の気持ちを理解する能力のこと。そもそも人類に近い類人猿は、食べ物も限られていたことから熱帯雨林から一歩も外に出たことがありませんでした。しかし、人間の祖先は二足歩行が可能になったことなどで、熱帯雨林を出て暮らし始めます。そこでは大型肉食獣から身を守り、食料を確保するには分業や共同保育が必要となります。そのため、他人と心を通じ合う共感能力が求められ、飛躍的に増大していったのです。

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