──生存のために培った共感能力が暴発したのはなぜですか?

 共感能力が高いということは、逆に言えば仲間が他の集団の人間に傷つけられれば、敵意となって発現される。そこに7万年くらい前に言葉が出現します。言葉によって「あいつはオオカミのように残忍だ」といった具合に比喩を使うことが可能になり、敵意が増幅されることになったのです。さらに約1万年前に農耕が始まります。定住化した人類は、土地に価値を見いだし、土地への執着は縄張り意識を醸成し、縄張りをめぐって集団間の戦いが発生しました。

──今も中東などの内戦も含め、なぜ人間は愚かだと分かっていながら、戦争や紛争を繰り返すのでしょう。

 それは、もう一つ、人間は「死者を利用する」ようになったからです。

 人間の営みは現実の人間だけでできているのではなく、祖先からも受け継いでいます。その象徴が墓です。墓を建てるということは、祖先を崇拝し、アイデンティティーを共有し、一つになるということ。

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