著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、落語家・立川談春さんの「フルヌス銀座」の「人参のムースとコンソメジュレ」だ。
* * *
僕はフレンチの世界はよくわかりません。だけどこの店は面白くて気に入っています。まずメニューがない。その日の食材を実際に見ながら、シェフと相談して料理を決めます。僕は前菜からデザートまでしっかり食べることが多い。遅い時間にやってきて、ワイン片手に軽く食べる人もいます。型にはまらない自由なところが魅力ですね。
カウンターに座って、目の前で料理が作られるのを眺めながら食事するのも楽しい。だけどシェフは特別愛想がいいわけでもない。機嫌がいいのか悪いのかさえもよくわからない(笑)。まるで自分を見ているような気がして……むしろ親近感をいだきます。料理に対して真摯に向き合う姿も共感がもてますね。このムースに合わせるコンソメジュレは、1週間もかけて丹念に作っているとか。下に隠れた甘みのあるムースと一緒に食べると、フレンチが素人の僕でさえ、すごい料理だなって感動します。炭の窯で焼く魚や肉もおいしいですよ。一度、遊びに出かけてみてください。
(取材・文/沖村かなみ)
「フルヌス銀座」東京都中央区銀座6‐5‐13銀座美術館ビル6F/営業時間:18:00~23:00最終入店/定休日:月、第1・第3日
※週刊朝日 2020年2月7日号