「学び」は、シニアにとって最良の習慣のひとつ。果敢に学ぶシニアに会いに、京都シニア大学を訪ねた。試験のためでもない、就職のためでもない。ピュアな向学心がそこにある。週刊朝日ムック『60歳からはじめる 認知症予防の新習慣』では、その現場を取材した。
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「起立!」「礼!」「着席!」
一般教養講座が始まる朝10時。講師の紹介に続いて、ひとりの学生が通る声で号令をかけた。級長を務めるこの男子学生は、なんと101歳だ。
ここは「京都シニア大学」。毎週木曜日、京都御所にほど近い京都新聞社本社ビル内で、授業がおこなわれる。55歳以上なら誰でも入学できる民間のシニア大学。平均年齢73歳、この日級長を務めた101歳の学生を最高齢に、約210人が在学し、大学の運営を担っている。
カリキュラムの基本は、午前の「一般教養講座」と、午後の「選択科目」。この日の一般教養講座は京都府立大学の小松謙教授を講師に迎え、「中国の豪傑たち」をテーマにした約2時間の講義がおこなわれた。理事長の熊谷篤さんはこう話す。
「以前、一般教養講座の講師で来てくれた大学教授に『うちの学生にはない熱気がある』と驚かれたことがあります。学生のみなさんから感じられるのは純粋な向学心。自らの心とからだを豊かにするために学ぶという人がほとんどです。いい大学に入りたいとか、いい会社に入りたいなどで学んでいるわけではないので、とても熱心ですね」
そう言われて教室を見回すと、ほとんどの学生が顔を上げ、講師の話に目を輝かせて耳を傾けている。授業の計画表には、「シニアのためのなるほど京都学」と銘打ったシリーズ講座から、カラーセラピーをテーマにした「暮らしに役立つハッピーカラー」「今から気になる遺産、贈与の基礎知識」といった実用的な講座まで、バラエティーに富んだ講座が並んでいた。
「京都老人大学」として開講したのは、45年前の1973年。着付け教室の経営指導をしていた熊谷さんの父が、口コミで二十数人のシニアを集めて開講したのが始まりだった。シニアが学ぶという発想も、「生涯学習」という言葉もない時代。定期的に通学して学べるシニア向け大学の先駆けとなった。