「『生活レベル』と『生活年数』は変更可能です。生活年数を減らすことは、働く年数を増やすことを意味します。私の計算では、60歳の時点で『3233万円』用意できていて、65歳まで働き、その間、一切資産に手をつけないとすれば、65歳の時にそのレベルに追いつけます。それでも厳しければ生活レベル指数の68%を60%に変えて生活費を引き下げれば、月々の引き出し額は減りますが、60歳の時に『2816万円』あれば何とかなります」

 ちなみに、60歳時で60%レベルの約2800万円をためるためには、30代で月4万円、40代は5万円、50代6万円の積み立て運用(利回り3%)ができればいいという。加えて、退職金のうち1千万円を老後マネーに使えるなら「3950万円」が見えてくる。積み立てだけで「3950万円」を準備しようとすると、「30代月6万円、40代7万円、50代8万円」が必要になるそうだ。

 なお、モーニングスター社の投資信託の評価サイトで検索すると、運用年数が15年以上あって、10年の長期リターンで利回り「3%」以上を達成している投信が150本以上存在している。

「年金に合わせた生活」から「現役時代の約7割」まで、さまざまな生活レベルと、それに対応した老後マネーの考え方を見てきた。どの生活レベルを選んで、どこまで準備するかは、まさに個々人の選択に委ねられている。老後マネーは家庭ごとに千差万別だ。

 そして、もう一つ、運用で老後マネーを準備する場合は、元本を減らしてしまう可能性があることを決して忘れてはならない。(本誌・首藤由之)

週刊朝日 2017年12月1日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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