しかし、目標額に届かない場合もあるだろう。「その時こそ、引き算と割り算の出番」と深田さん。仮に「3千万円」しかたまらなかったら、どうするか。

「その時は3千万円から特別支出分の1千万円を、まず引いてください。すると残りは2千万円。今度はそれを残りの年数25で割る。2千万円÷25=80万円ですから、年間の取り崩し額が80万円になるような生活を考えればいいのです」

 深田さんは、老後は生活レベルの調整に失敗しないようにすべきだという。

「60歳以降、一気に収入が減る、いわゆる『収入ダウンの崖』が2~3回あるからです」

 1回目は60歳の定年時。再雇用されて同じ会社で働き続けるとしても、収入は半分以下に減る。2回目は65歳の年金生活スタート時。公的年金が収入の柱になり、さらに低くなる。

「最近は企業年金が終身のところは少ないので、企業年金をもらえる方はそれがなくなる時も加わります。崖に直面した時に、漫然とその前と同じ生活をしているとお金が早くなくなってしまいます」(深田さん)

 収入の減少に合わせて、生活レベルを調整し支出を減らすことが必須なのだ。

 大手資産運用会社フィデリティ投信の研究所、フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は、今夏を含めて、これまでの多くのアンケート調査の結果をもとに、老後マネーへの新しいアプローチ方法を作り出してきた。名付けて「逆算の資産準備」だ。

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