「魚介醤油らーめん 和屋」のらーめん並盛は一杯870円。チャーシュー、ナルト、茎わかめ、おぼろ昆布、青菜、ネギがのせられている(筆者撮影)
「魚介醤油らーめん 和屋」のらーめん並盛は一杯870円。チャーシュー、ナルト、茎わかめ、おぼろ昆布、青菜、ネギがのせられている(筆者撮影)

 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。千葉のユーカリが丘で地元密着にこだわる店主の愛する一杯は、勢いでラーメン業界に入り、2年で人気店を作った店主のセンスあふれる一杯だった。

【写真】勢いで業界に飛び込んだ店主が作る「貫禄のラーメン」はこれだ!

■味を変えてはパニックの繰り返し ブームに流されない一杯

 千葉県佐倉市の京成ユーカリが丘駅から徒歩7分。国道296号沿いにある人気店「魚介醤油らーめん 和屋」は、同じ千葉の名店「海空土」出身の大久保和仁さんが2010年9月にオープンした。魚介を効かせた和風な一杯で、煮干を中心に動物や貝、野菜、乾物など20種類の食材の複合的なうまみが特徴的だ。おぼろ昆布がトッピングしてあるのが珍しい。手間暇かけて作られているが、決して押しの強くない横綱的な一杯だ。

魚介醤油らーめん 和屋/〒285-0854 千葉県佐倉市上座1185-4/11:00~15:00、[土・日]11:00~15:00(L.O.)、火曜、第1・3・5月曜定休/筆者撮影
魚介醤油らーめん 和屋/〒285-0854 千葉県佐倉市上座1185-4/11:00~15:00、[土・日]11:00~15:00(L.O.)、火曜、第1・3・5月曜定休/筆者撮影

 開店から11年、順風満帆に思われるが、味のブラッシュアップには常に苦労してきている。

「味が安定してきたなと思えたのは、ここ最近です。味を変えてはパニック、変えてはパニックの連続でした。ラーメンはバランスが大事。一つの食材が主張してはダメなんです。はじめは煮干しを押し出しすぎていました。それぞれの味の引き出し方を学んでいき、とにかくバランスを重視して味をまとめていきました」(大久保さん)

 土地柄もあり、お客さんは地元の住民が多い。ファミリーからお年寄りまで、年齢層も幅広い。

麺は細め縮れの三河屋製麺製(筆者撮影)
麺は細め縮れの三河屋製麺製(筆者撮影)

「街に愛される味を目指しています。修業先で学んだ味を大事に、地元・千葉の煮干しをメインに昆布も加えてどんな世代にも食べやすいラーメンを作りました。ブームや流行に流されずに、一生やっていける味で続けていきたいですね」(大久保さん)

 大久保さんは決して器用な方ではなく、いろいろなラーメンを作ることができなかった。1種類の味を極めるのが精いっぱい。それが逆にブレずに長く続けられた理由だという。常に一つの味を追求し続けての11年。街に長く愛される味づくりをこれからも続けていく。

「街に愛される味を目指している」と店主の大久保さんは語る(筆者撮影)
「街に愛される味を目指している」と店主の大久保さんは語る(筆者撮影)

 そんな大久保さんの愛する一杯は、同じ千葉県で開店2年目となる新店のラーメン。ベテランをうならせる一杯を紡ぐ店主は、勢いだけでこの業界に飛び込んだ男だった。

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井手隊長

井手隊長

井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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