ひっきりなしに入ってくる情報に脳の処理能力がついていけなくなると「情報メタボ」ともいうべき状況に陥る。この生活が長く続くと、脳の機能が低下する恐れがある(撮影/写真部・小黒冴夏)
ひっきりなしに入ってくる情報に脳の処理能力がついていけなくなると「情報メタボ」ともいうべき状況に陥る。この生活が長く続くと、脳の機能が低下する恐れがある(撮影/写真部・小黒冴夏)
AERA 2020年9月7日号より
AERA 2020年9月7日号より

 自粛生活やテレワークでデジタル機器を使う時間が急増。それとともに、「オンライン疲れ」を訴える人が増えている。オンライン中心の生活では視覚情報が中心となり、偏った脳の使い方で脳の一部が疲弊、使われない機能はさびつき、衰えてしまう。AERA 2020年9月7日号は「テレワークの弊害」を特集。解消法をレクチャーする。

【図】脳の疲れを取る方法はこちら

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 午後5時30分、テレワーク終了。都内の機械メーカーに勤務する女性(49)は自宅のパソコンのスイッチを切った瞬間、ぐったりとソファに倒れこむ。

「とにかく、疲れています」

 新型コロナウイルスが拡大した3月から、女性の会社では在宅勤務が始まった。仕事は一般事務。最初の数週間は最高だった。何しろ毎朝早く起きる必要はないし、通勤時の満員電車の苦しみもない。ビデオ会議がなければメイクもせず部屋着のまま、自分のペースで仕事ができた。

 でも、1カ月もすると、どうしようもない疲労感が襲ってきた。考えられる原因は、拘束時間の午前9時から午後5時30分までトイレや食事に立つとき以外、ずっとパソコンの前に座っていること。頭が休まる暇が全くないのだ。

 在宅で仕事を怠けていると思われたくないので、メールの着信があれば、即返事、ビデオ会議のTeams(チームズ)の呼び出しがあれば、即受信。会社だと、その場でひと言聞けば解決するようなことでもメールの確認が必要になり、膨大なメールを処理するように。Teamsでの会議はイヤホンを使っているが、耳に声がこもったり、相手の声がよく聞こえなかったりしてそれがストレスにもなる。

 かくして、今では定時になりパソコンを切ると、何もする気力が起きずソファに倒れこんでいるのだという。

「もともと肩こりや腰痛持ちでしたが、それが悪化したのはもちろん、全身に疲労感があります」(女性)

 コロナ禍で外出自粛が叫ばれる中、オンライン会議やオンライン授業、オンライン飲み会などオンラインを活用した仕事や交流が積極的に行われるようになった。場所を選ばずどこでもできるというメリットがあるが、一方で、先の女性のように「オンライン疲れ」を訴える人が増えている。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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