「そこで重要となるのが、デフォルトモードネットワークを活性化させることです」

 これは前出の(3)ぼんやりと考える部分のこと。デフォルトモードネットワークは聞き慣れない言葉だが、21世紀の脳科学の最大の発見の一つだという。

 従来の脳科学では、脳は、何もしないでぼんやりしている時は活動していないと考えられてきた。しかし実は「ぼーっと」している最中、脳は決して活動をやめているわけではなく、内側前頭前野や後部帯状回など、脳内の複数の離れた領域が、同期・協調して働いてネットワークでつながり、活性化していることがわかった。デフォルトモードネットワークを稼働させることで、ひらめきやアイデアが浮かびやすくなり、(2)の熟考機能がフォローされ、記憶力が鍛えられたり、脳の老化が抑えられたりという効果もあるという。

 奥村医師はデフォルトモードネットワークを「我に返る脳機能」と呼ぶが、この時、脳は活動時の15倍ものエネルギーを消費し、それまで蓄積された情報を整理整頓して頭をリフレッシュしてくれるという。ただし、このネットワークは、視覚を遮断した時にしか活性化しない。デジタル画面を眺めていてはフリーズして働かないのだ。そこで奥村医師はこうアドバイスする。

「1日5分でいいので、ぼんやりする時間を作ってほしい。その5分間は、目をつぶる必要はなく、対象物を追いかけず、ぼーっとするだけで大丈夫。パソコンやスマホから完全に離れてメールや電話などの邪魔が入らない環境で、窓の外に目を向け、自然を眺められればさらに効果的です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年9月7日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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