「入試改革を考える会」のシンポジウムでは、主体性評価に関する様々な懸念が噴出した。問題の所在は共通テストにとどまらない(撮影/編集部・大平誠)
「入試改革を考える会」のシンポジウムでは、主体性評価に関する様々な懸念が噴出した。問題の所在は共通テストにとどまらない(撮影/編集部・大平誠)
国公立大学を想定した入試モデル(AERA 2019年12月16日号より)
国公立大学を想定した入試モデル(AERA 2019年12月16日号より)

 大学入学共通テストの英語民間試験の延期に続き、国語や数学の記述式問題も政府が延期の検討を始めた。大学入試改革のもう一つの柱とされる「主体性評価」にも、現場の教員たちが懸念を示している。現場の声などを取材した、AERA 2019年12月16日号の記事を紹介する。

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「主体性評価」という指標が大学入試の出願に取り入れられることになり、高校生がクラブ活動やボランティア経験などの「主体的活動」を自ら記録し始めている。多くの生徒が記録を蓄積するのに活用しているのは、文部科学省の委託で開発されたeポートフォリオと呼ばれる電子ファイルだ。

 この主体性評価は、延期の決まった英語民間試験や、採点の問題などが噴出し、政府が延期の検討を始めた国語や数学の共通テスト記述式問題と同様、国が進める大学入試改革の一環だ。

 文科省は(1)知識、技能(2)((1)を基にした)思考力・判断力・表現力等(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度──を「学力の3要素」として「高校教育で確実に育成する」と定めた。(1)に対応するのが聞く、話す、読む、書くを英語「4技能」と位置付けて導入を推進した英語民間試験。(2)の力をはかるため採用を進めたのが国語と数学の記述式問題に当たるといえる。そして、推薦入試やAO入試ではなく一般選抜入試でも(3)を評価するために編み出した概念が「主体性評価」だ。

 この新たな評価基準については、すでに複数の教育関係者が懸念を示している。「入試改革を考える会」(代表、大内裕和・中京大学教授)が11月24日、東京大学で開いたシンポジウムでは、登壇した中村高康・東京大学教授が「入試制度は現実的かつシンプルにすべきで、調査書重視は好ましくない。生活全般が評価の対象になると、生徒にとって抑圧的な空間が増える」などと発言。パネルディスカッションでも「主体性評価はあってもいいが、一般選抜にはなじまない」「日々の活動の評価は大事だが、入試に組み込むと受験生は『評価されること』をするようになる。それは主体性と言えるのか」などの意見が相次いだ。

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