この仕組みを簡単に振り返ると、文科省が2016年度からの3年間で「大学入学者選抜改革推進委託事業」を開始。これを受託した関西学院大学を代表校にした関西、同志社、立命館、大阪、大阪教育、神戸、早稲田の計8大学の共同事業体が「高大接続ポータルサイトJAPAN e-Portfolio(JeP)」を開発し、17年10月から高校生が「学びのデータ」と呼ばれる活動歴を入力できるサービスが始まった。JePは19年度から「一般社団法人教育情報管理機構(EIMO)」が運営・管理を引き継ぎ、今年度の入試から大学側も利用するべく参加申し込みが始まっている。しかし、随時更新しているという参画大学は、昨年12月7日時点で公表された111校から、1年後の現在、29校へと激減している。

 都内の私立高校教諭は言う。

「真の主体性がゆがめられて高校生の学びが打算的になる恐れがあるし、そもそも主体性を評価できるのかという議論が棚上げされたまま推進されてきたことに対して、大学側にも懸念が広がってきたからではないでしょうか。英語民間試験と同様、これも財界などの要望でスタートしている側面もあるので、導入の経緯が不透明です。利用予定のない大学は志望書や学習計画書の提出、調査書の点数化を検討していると聞いています」

 JePを運営するEIMOは金沢大学の学長を会長に、他の理事や監事も国公私立の大学長で構成する「非営利組織」を謳っているが、JePの「運営サポート」にはベネッセコーポレーション(本社・岡山市)が名を連ねており、利用にも同社への登録が必要だ。JePは生徒が本人の活動成果や学びを記録し、蓄積したデータを大学に提出できるほか、指導や調査書作成の参考にするため教員からもアクセスできるが、生徒も教員もベネッセのIDを取得しなければログインできない。

「文科省の委託事業として、高校の教員が申請を手伝って生徒の個人情報を集約し、私企業のサービスを活用するよう誘導することには、疑問を感じます。生徒の不利にならないよう、1年前から入力などの指導はしていますが、教育的に正しいことをしているとは思えません」(前出の教諭)

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