「逆に僕たち大人にルールがあります。街づくりとはこういうものだと、教育したりしない。大事なのは居場所と出番をつくること。あとはすべて女子高生たちで考えてもらい、それを具現化するのが大人の役割。裏方として、サポートに徹することです」

 アイデアは次々と生まれ、4年で72ものイベントを行った。地元の菓子店組合の力を借りてオリジナルスイーツを作ったり、図書館の空席状況がわかるスマートフォンのアプリを作ったり。ゴミ拾い企画は「ピカピカプラン」と名づけ何回も行っているが、毎回100人近い市民が参加する。拾ったゴミの重さを競ったり、ハロウィーンでは仮装したこともあった。

 JK課には活動費はないので、クラウドファンディングで募った。これまで2回実施し、計140万円近く調達したという。

 いまメンバーは47人。女子高生たちは、JK課の活動を通し鯖江を好きになったと声をそろえる。1期生13人のうち、12人は卒業後も県内にとどまった。

 2期生で、高校3年のゆうきさん(17)は、高校卒業後はきらびやかな東京か大阪に出ようと思っていた。

 が、JK課に入り地元の人との交流を通して地域の温かさを知った。いまでは鯖江のことを、「めちゃ好きです」と笑う。4月から隣の石川県の看護系大学に進学するが、卒業後は地元に戻って働きたいと考えている。

 女子高生たちの活動は大人たちを刺激した。JK課に続けと14年6月、鯖江に市民団体「OC(おばちゃん)課」が結成された。40代、50代の女性を中心に約40人。“おばちゃん”ならではの視点で、男子トイレにおむつ交換台の取り付けを提案したり、道の駅で地元の伝統薬味を入れたおを売ったりと活動を広げている。

 JK課には全国から視察が相次ぎ、全国の自治体の若手職員がJK課にインターンシップで参加する。JKたちは、鯖江市の若者施策の中心的な事業に育った。高橋さんが言う。

「若者が動くと大人が変わる。大人が変われば、地域も動く」

(編集部・野村昌二、柳堀栄子)

AERA 2018年2月19日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら