高橋藤憲さん(47)/1992年入庁。「信じて任せる」を大切にする(写真:鯖江市役所提供)
高橋藤憲さん(47)/1992年入庁。「信じて任せる」を大切にする(写真:鯖江市役所提供)
JK課の女子高生たち。「めがねの街」だけあり、国際メガネ展IOFTではJK課オリジナルメガネも出品(写真:鯖江市役所提供)
JK課の女子高生たち。「めがねの街」だけあり、国際メガネ展IOFTではJK課オリジナルメガネも出品(写真:鯖江市役所提供)

「地方創生」のために、若者の力を借りた変わった取り組みを行う地域がある。当初は誹謗中傷も受けたが、その取り組みは確実に成果を上げ始めている。

【写真】JK課の女子高生たち

 福井県鯖江市の市役所に2014年4月、何やら変わった「課」が発足した。

「鯖江市役所JK課」。その名の通り、メンバー全員が女子高生(JK)だ。

「行政と距離感のある女子高生自らが企画した地域活動を実践することで、若者や女性が進んで行政参加を図っていくことを目指しています」

 と話すのは、JK課を担当する市民まちづくり課参事の高橋藤憲(ふじのり)さん(47)。

 人口7万人弱の鯖江市の若者は高校を卒業すると多くが県外に流出する。女性の流出も少なくなく、日本創成会議の試算によれば、同市の40年の20~30代の女性人口は、10年に比べ27.1%減ると予想される。

 女性にとって魅力があり、若者が集う鯖江にしよう──。こうして発足したのがJK課。担当者として白羽の矢が立ったのが、市民主役のまちづくり業務などを担当していた高橋さんだった。

 JK課は逆風の中でスタートした。

 14年2月、構想が発表されると、1週間で100件以上の誹謗中傷のメールなどが全国から市に殺到した。多くはJKのネーミングに対してで、「JKトいう言葉は隠語ではないか。行政が使うにはふさわしくない」といった声。しかし、苦情の大半は県外から。鯖江市内からはほとんどなかった。「市民は応援してくれている」。高橋さんは確信した。

 こうして、鯖江市内在住か市内の高校・高等専門学校に通う女子高生13人でJK課はスタートした。「課」とつくが市役所で働くわけではない。週に1、2回、放課後に市役所の会議室などに集まって活動する。

 JK課のコンセプトは「楽しいことを、大人を巻き込みながら進めよう」。

 市役所のプロジェクトだが、ルールもノルマもない。あるのは、飲酒はしないなど「法令順守」のみ。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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