自民党総裁選が終わった。党員票では河野太郎行革相が169票で、110票の岸田文雄氏に60票近い差をつけた。河野票には、安倍晋三元総理と菅義偉前総理の9年近くに及ぶ強権利権政治に終止符を打って欲しいという願いが込められていたと見るべきだ。
一般国民を対象にした世論調査でも、次期総理候補として河野氏が断トツの支持を集めていたから、民意を反映して総裁を選ぶなら、河野氏で決まりだ。しかし、1回目投票では、国会議員票の割合を党員票と同じに拡大し、決選投票ではさらに党員票の割合を1割強まで縮小して党員の意思を無視するのが、今の自民党のルール。それなら最初から国会議員だけで選べばよいのにと思う。9月17日からのお祭り騒ぎは茶番でしかなかった。
しかも、岸田氏の事務所には、安倍元総理の秘書官だった今井尚哉氏が出入りするなど、岸田氏の背後に安倍氏がいることは公然の秘密だ。これでは、党員の願いとは正反対の結果ではないか。
自民党が野党だった2012年、私は河野氏主催の勉強会に出席し、自民党の何が悪いかについて講演した。その時、小泉進次郎氏も参加していたのを思いだす。そこでの議論を私なりにまとめれば、自民党には大罪(この言葉を小泉氏が使ったのを覚えている)がある。日本を「借金大国にしたこと」、「少子高齢化を放置し、社会保障基盤を崩壊させたこと」「成長できない国にしたこと」、そして「原発神話を作り福島の事故を招いたこと」の4つである。これを反省し、新しい政策を掲げて政権を奪取すべしという結論だった。
今振り返ると、第二次安倍政権になってからの自民党は、この4つの大罪を見事なまでに継続した。借金は増え続け財政再建の目標を棚上げせざるを得ない状況だ。少子化も深刻化し、改善の道筋も見えない。成長戦略は不発でリーディング産業は競争力を失い新たな成長の芽が見えない。原発にしがみつき、再生可能エネルギー普及では先進国最後尾。再エネ産業はほぼ壊滅した。