自民党の新総裁に選ばれた岸田文雄氏(C)朝日新聞社
自民党の新総裁に選ばれた岸田文雄氏(C)朝日新聞社

 その上にこの10年の間に、格差が拡大し、食べるのに困る人が巷にあふれる。先進国とは名ばかり。「格差拡大と貧困の蔓延」。これが5つ目の大罪として加わった。

 アベノミクスで株が上がった!不動産が上がった!と喜ぶのは富裕層だけ。一般庶民は、「未曽有の危機」を肌身で感じ、だからこそ、「奇人変人」の河野氏に期待した。

 新総理になる岸田氏は、温厚な人柄で知られる。しかし、その裏に安倍氏がいるとなれば、国民に寄り添う政治など期待できない。現に、森友学園事件の再調査は完全否定。不透明で説明責任を果たさない政治が続くだろう。政策的にも憲法改正に前のめりで、原発の新増設にまで踏み込んだ。安倍傀儡と言われても仕方がないが、それ以上に、自民党が犯し続けた大罪を無反省に継続しそうなのが怖い。

 幸いにして11月には衆議院選挙が待っている。民意に背を向けて選ばれた総理が本当の意味で国民の承認を得られるのかが問われる。
野党は次々と新しい公約を発表し、自民党との対立軸を明らかにしている。国民は、それでも自民党を選ぶなら、安倍政治と心中するのと同じだということを肝に銘じなければならない。


週刊朝日  2021年10月15日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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