大原千鶴(おおはら・ちづる)/1965年、京都府生まれ。京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さなころから自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。結婚後、京都市中に移り住み、2男1女の母として子育てのかたわら、料理研究家として活動を始める。NHK「きょうの料理」、NHK BS4K「あてなよる」レギュラー出演、NHK BSプレミアム「京都人の密かな愉しみ」料理監修のほか、家庭料理の講習や講演など、幅広く活躍している。第3回京都和食文化賞受賞。著書多数。近著に、初のエッセー本『旨し、うるわし、京都ぐらし』(世界文化社)。 (撮影/写真部・掛祥葉子)
大原千鶴(おおはら・ちづる)/1965年、京都府生まれ。京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さなころから自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。結婚後、京都市中に移り住み、2男1女の母として子育てのかたわら、料理研究家として活動を始める。NHK「きょうの料理」、NHK BS4K「あてなよる」レギュラー出演、NHK BSプレミアム「京都人の密かな愉しみ」料理監修のほか、家庭料理の講習や講演など、幅広く活躍している。第3回京都和食文化賞受賞。著書多数。近著に、初のエッセー本『旨し、うるわし、京都ぐらし』(世界文化社)。 (撮影/写真部・掛祥葉子)
大原千鶴さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・掛祥葉子)
大原千鶴さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・掛祥葉子)

 和服に京言葉がトレードマークの料理研究家、大原千鶴さん。「きょうの料理」をはじめ、テレビに雑誌に引っ張りだこの美人料理研究家は、仕事と並行して介護子育てを両立してきたタフな精神の持ち主。気取った料理ではなく、家庭で普通に食べられる味を提案する姿勢にも、ご本人が表れているようで──。作家・林真理子さんとの対談では、キャリアのきっかけから伺いました。

【写真】大原千鶴さんと林真理子さんの2ショットはこちら

*  *  *

林:料理旅館「美山荘」(東京都・花脊)のお嬢さまならお料理のほうに行くのは当然かもしれませんけど、きっかけは何だったんですか。

大原:お料理が好きで、実家でもお仕事させてもらってたんですけど、結婚して子どもを産んだあと、主人の母の介護をしてたんです。家の中でのことばっかりして生きていくのがつらくて、何かつくっていく仕事がしたいなと思って、「料理研究家」という名前でお仕事してみようと思って始めたんです。

林:トントン拍子にすぐ料理番組なんかにお出になったんですか。

大原:義母を8年介護して、最後の2年ぐらいは寝たきりだったんですが、それと並行して子どもを育ててましたので、6年ぐらいはぼちぼちという感じでした。「グラツィア」という雑誌があって……。

林:はい、ありました。講談社の女性誌ですね。

大原:「京の手習いはじめ」という、石田ゆり子さんと一緒に錦に行ってお買い物して、うちでお料理してお伝えするみたいな企画があって、そのとき初めて私の料理が誌面に載ったんです。それをごらんになった方から連絡いただいたり、一緒にお仕事させてもらった編集の人とかカメラマンの人が、ときどきお仕事を持ってきてくださったんだけど、義母が亡くなって1週間ぐらいしたときに、編集の方から「本を出しませんか」というお話をいただいて。それからちょっとずつそういう形になっていきました。

林:子育てとお義母さまの介護をなさりながらって、ほんとに大変だったでしょう。

大原:ヘルパーさんに来てもらったり、なるべく自分で全部やらなくてもいいようにしてたんですけど、それでも人の命をあずかる重さみたいなものを感じるし、すごくストレスがかかりますよね。誤解を恐れず言えば、介護で虐待とかする人の気持ちもわからなくはない、というのも正直なところで。

林:そうでしょうね。

次のページ