大原:でも、そういう機会を与えられてよかったなと思うんですよ。うちの主人は男4人兄弟の四男なんです。お義兄さんも「面倒見ようか」って言うてくれはったんですけど、主人の母から「千鶴さんがいい」ってご指名を受けて、「えっ、私?」みたいな。

林:あらら、ご指名を受けちゃったんだ。

大原:半分一緒に住んでたので、「そりゃそうなるわよね」と思って。

林:お泊まりの仕事のときなんか、どうしてたんですか。

大原:今でこそ「はいはい、行ってらっしゃい」ですけど、まだ子どもが小さいときなんかは、晩ごはんつくって食べさせて、終電で東京に行って、真夜中にNHKで仕込みして、そのまま「あさイチ」に出て、終わったらすぐ帰って、2時半ぐらいには京都に着いてました。

林:ひぇ~、ほんとですか。たいへ~ん。

大原:だんだん子どもが大きくなってくると、「ママがいんぐらいのほうがええわ」みたいになってきますので、今は応援してくれますけど、男の人ってけっこう気が小さいじゃないですか。主人はいろいろ心配してくれたり、なんやかや考えたりしはるんです。「男の人は、仕事や言うて出ていったらいいんやし、ええなあ」と思った時期もありましたけど、一個ずつ一個ずつ乗り越えて。

林:前に栗原はるみさんにお目にかかったら、「料理研究家って、撮影スタッフがうちに来てくれて、みんなが写真を撮ってるあいだに洗濯ものを取りに行ったりできるので、主婦にとってこんなにいい仕事はない」とおっしゃってました。

大原:はい、おっしゃるとおりです。子どもが帰ってきたら「お帰り」って言えるし、できあがったものをおやつ代わりにつまんだりもできるのでね。あるときなんか、撮影してるときに息子が友達を連れて帰ってきて、そのときハモのてんぷらをしてましてね。

林:ハモのてんぷら! まあ、おいしそう(笑)。

大原:帰ってきて「何かない?」って言うから、「これでも食べとき」って出したんです。友達はべつに何も言わずに帰ったんですけど、その次にその友達がやってきて、「おやつ、何しよう」言うたら、「ハモのてんぷら」って(笑)。いつもはないですよね。

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