林:大原さんは、調味料とかもふつうにうちにあるようなものを使うんですよね。皆さんからよく「すごい調味料を使ってるんでしょう?」って言われるそうですけど。

大原:スーパーにあるふつうの調味料で、お味噌も、安売りのときは750グラム298円とか、そんなの使ってるんですよ。

林:そうなんですか。

大原:すごくいい材料を取り寄せればおいしいものができると思うんですけど、自分はそういう料理を目指してるわけじゃないのでね。子どもが小さかったころは、たとえばコショウなんかも、挽くコショウはからくて食べにくいじゃないですか。だからふつうのうちにあるふつうのコショウになるんですよね。そういうものを使うと、味が昭和な感じで、落ち着いた味になるっていうか。

林:ああ、昭和の落ち着いた味。

大原:私、家の料理って、きのう何を食べたか覚えてないぐらいすっと食べていくものがおいしいと思うんですよ。お母さんが張り切って難しい料理をして、それなのに食べてくれなくてイライラしたりするほうが弊害だなと思ってるんです。お母さんがラクにつくれて、子どもたちも旦那さまもラクに食べられるような料理をつくっていきたいなと思ってるんです。

林:確かに大原さんの本を読むと、肩ひじ張らずにラクにできそうな気がします。

大原:京都には「三里四方の食材を食べろ」という言葉があって、12キロってえらい狭いですが、近くで育った野菜とかとれたものを食べると、同じ土、同じ空気、同じ水で育ってるものだから、体になじんで健康にもいいというんですね。「身土不二」とかいいますよね。そのほうが自分らしい食べ方ができるような気がします。

林:京都には京野菜があって、見た目も美しい野菜ですが、あれを東京で買うと、まあ高いこと高いこと。

大原:そうですよね。京都だと、それがちょっと曲がってたりしたら、すごく安く売ってますからね。東京の方は江戸の野菜を召し上がっていただいたらいいと思うし、そこに無理をすること自体が、私にはストレスな感じがします。

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