しかし、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「説明には明らかな誤りがある」と指摘する。

「内閣府が招待者名簿を廃棄した根拠とする規定は、今年10月28日に書き改められたものです。招待者名簿は5月9日に廃棄していますから、その時点ではなかった規定を根拠にしています。それ以前の文言は招待者名簿が含まれているか不明確です。内閣府は説明責任をまったく果たしていません」

 内閣官房関係者も首をかしげる。

「保存期間が1年未満となっているのに1カ月ほどでの廃棄は、感覚的にはあり得ない。役人の習性だと、1年未満という決まりなら最低1年は残します」

 ホテルニューオータニでの「前夜祭」についてもあいまいな点が多い。安倍首相は、主催者は自分の後援会であることを認めたが、「明細書などの発行はなかった」「収入、支出は一切なく、政治資金収支報告書への記載は必要ない」などと主張。受付で事務所の職員が参加者から現金を受け取り、ホテルが発行した領収書を手渡したと説明する。その後、全額をホテルに渡し、あくまで集金業務を代行したに過ぎないとしている。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士はこう話す。

「事前に現金を支払っていたのなら、その時点で政治団体としての支出があったことになり、政治資金収支報告書に記載しなければならなくなります。本当に集金事務を代行しただけならば、安倍首相や後援会幹部、来賓は会費を支払っていなければならないはずです。いずれにしても政治資金規正法違反は免れません」

 安倍首相の推薦者1千人も含め、自民党関係者の推薦は約6千人。まるで、自民党議員に対する「功労者」のための宴だ。税金を使っているということを、政治家にも役人にも改めて意識してもらいたい。(本誌・上田耕司、亀井洋志、吉崎洋夫/今西憲之)

週刊朝日  2019年12月6日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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