作りたてふわふわのケランチムが食欲をそそる韓国食市のお料理。全19店のお店は、どれもしっかり料理にこだわっているのが渋谷横丁の特徴です。

渋谷横丁・責任者の高橋さん。「渋谷横丁はどのお店でも他店の料理を注文できるんです。まず1〜2品頼んで次に回るお店を決めると、はしご酒がより楽しくなりますよ」

まるでひとつの街のような渋谷横丁。「流し」のアーティストやマジシャンなどが登場することも!

おいしそうにクラフトビールを飲むたけうちさん。「飲むときは楽しく、きれいに飲む」がモットーだとか。

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トークイベント「横丁好き必聴! 新旧横丁のキーパーソンが語る横丁の作り方・楽しみ方」開催レポート

令和6年度「東京の魅力発信プロジェクト」に採択された「みんな楽しい!東京の横丁」では、東京にある古くから続く「横丁」や、「ネオ横丁」と呼ばれる新しいジャンルの横丁まで、横丁のさまざまな魅力を紹介してきました。そして、東京ブランドをPRする事業として、総仕上げとなるトークイベント「横丁好き必聴!新旧横丁のキーパーソンが語る横丁の作り方・楽しみ方」が1月17日(金)、吉祥寺にて開催されました。

「横丁の中の人」ならではの
リアルな話がたくさん

「横丁好き必聴! 新旧横丁のキーパーソンが語る横丁の作り方・楽しみ方」というタイトルで開催されたこのトークイベント。出演いただいたのは、吉祥寺・ハモニカ横丁の“仕掛け人”として知られる手塚一郎さん(株式会社ビデオインフォメーションセンター 代表取締役)と浅草横町など数々の“ネオ横丁”を成功させてきた戸田博章さん(株式会社Hi-STAND 代表取締役)。MCにはテレビ東京「二軒目どうする?〜ツマミのハナシ」に「おつまみさん」としてレギュラー出演するフリーライター・コラムニストの朝井麻由美さんをお迎えしました。

20時から開始されたトークイベントは、多くのお客様にお越しいただき会場は満員御礼! まずは、おふたりの自己紹介からスタートしました。

「本当のことを喋ったりすると、横丁にみんな来なくなっちゃうんじゃないかと思って、心配しながら今日来ました。毎回いろんな人に『言い過ぎだよ』って言われるので、言い過ぎにならないように(笑)。うまく言えるかどうか楽しみにしてください」(手塚)

「元々中野のバーのバーテンダーから始めて、その後に居酒屋業界に飛び込みまして。最初に任されたプロジェクトが、今では想像できないと思うんですけども、ガラガラの恵比寿横丁でした。現在は御存知の通り、人が通れないほどの横丁になっています。僕自身は今は焼鳥屋を経営して、あと代々木のほぼ新宿のれん街や浅草横町などのプロジェクトに関わらせてもらっています」(戸田)

「高校とか大学の学生時代、吉祥寺で遊んでいたので、まさに吉祥寺のハモニカ横丁は思い出のたくさん詰まった場所。この吉祥寺の街でこういったイベントに出演させていただけるのがとっても嬉しいなと思っています」(朝井)


この日のメインテーマは「横丁の作り方・楽しみ方」。最初の議題は、なぜおふたりが「横丁に注目したか」という話。これがとても対照的で、最初はハモニカ横丁でビデオテープショップをオープンし、そこから「何か面白いことできそうだな」と思って飲食店になっていったというのが手塚さん。

一方で、戸田さんは「ビジネス」の視点で横丁に注目したと言います。広い店舗をひとりの事業者が借りるのは賃料の高さなどもありハードルが高い。そこでいわゆる「サブリース」という、飲食専門の事業者が物件を借りて単店に貸していくという手法で横丁を作ろうとしたそうです。一店舗あたりの賃料は割高になるデメリットはあるけれど、「ほぼ新宿のれん街」のように空き家が密集していたところをネオ横丁として開発したことで、人通りが増えて防犯上良くなったという結果もある……、そんな話題でイベントは幕を開けました。

ここで話は「昔ながらの横丁とネオ横丁の違い」に。そのふたつの現状の違いについて、例えば浅草横町では阿波踊りやサンバが体験できるといった例を出し「現在の新旧横丁の違いは“コンテンツ”の有無」という戸田さんの言葉から、手塚さんは昔ながらの横丁と新しい横丁の大きな違いは「自然発生的にできたか否か」だと語ります。そこから、現在の昔ながらの横丁が戦後、どうやって生まれていったかという歴史について語る手塚さん。また、「新しく横丁をつくる」ことに関しては、手塚さんが新たな横丁を施設として手掛けたけれどもうまくいかなかったという経験などが赤裸々に語られました。

続いて、この日の登壇者が個人的に好きな横丁と好きな店についての話題に移ります。手塚さんが挙げたのは、新宿思い出横丁の焼鳥屋。その他にも、手塚さんが好きな立ち飲み屋の店名などが次々と挙げられ、この日来場していた横丁好き・居酒屋好きの人たちが前のめりで聴いていました。

戸田さんが挙げたのは、自身が手掛けた恵比寿横丁にある中華料理『浜椿』。実はこのお店、『TVチャンピオン』で2年連続優勝、『料理の鉄人』にも出演したことがあるという、横丁にある佇まいからは一見わからない!?凄腕シェフの店だとか。「本格中華なんですごくおいしいです。ただ、めちゃくちゃおいしいんですけどそれなりのお値段で、この間4人で行って5時間飲んでいたらお会計が8万円でした」という話に会場が沸きます。

最後にMCの朝井さんが挙げた好きな横丁と好きな店は、会場のすぐ近くにある『ハモニカ横丁』と、手塚さんがハモニカ横丁で最初に手掛けた飲食店でもある『ハモニカキッチン』。「高校生の時に初めてハモニカ横丁に降り立ったんですが、『千と千尋の神隠し』の世界みたいな空間が広がっていて、こんなに歩いているだけで面白い場所があるんだなと衝撃を受けました」とのことでした。その後も、かつてハモニカ横丁にあったお気に入りのパスタ店の思い出エピソードなども語られました。

ここで戸田さんから手塚さんへ「横丁をやっていると、うまくいかない店舗が抜けてしまうことがどうしてもある。大家としては抜けた分の家賃の穴埋めが必要になるしリスクが高い、そうなったときはどうしています?」といった、実際に横丁や店舗を経営している人ならではの生々しい質問が。手塚さんの答えは「いや、僕も(出店は)失敗ばかりですよ。商売を長くやっているとどんどん計算高くなるから、そういう失敗はだんだんしなくなる。でもそうすると、なんだかつまらなくなるんだよね」というもの。ユニークな店舗が多い、手塚さんの経営哲学が垣間見えた一瞬でした。その後休憩を挟み、トークは後半戦へ。

今後の横丁の変化と
抱える「課題」は?

後半、最初のテーマは「これからの東京の横丁」について。

手塚さんは「以前ハモニカ横丁でやりたかったのは、半径300mくらいの町の人が来てくれて、夕方飲んで行くような場所作り。それで立ち飲み屋を作った。また原点に戻って立ち飲み屋をやりたい」と想いを語ります。「でも今の若い人は座ることしか考えてないんだよね」とぼやき、会場が笑いに包まれます。「誰か立ち飲みやりませんか」と手塚さんが会場に呼びかけると、その話題に呼応するように戸田さんも「僕もずっと飲食に関わって23年。今44歳なんですけど、飲食店で独立したいっていう人が本当に少ない。コロナ禍の影響もあったのだろうけど、現実主義の若者が多い。だから横丁の小さな箱の中で、自分の持っている世界観や、やりたいお店を表現できるような、若者を支援する横丁をやりたい」と語りました。

戸田さんはそれに加え、「例えばハモニカ横丁もそうですが、自然発生的に生まれた昔ながらの横丁は、今後はもう二度と生まれない。日本で生まれない理由としては、土地の問題や後継者の問題もあるし、再開発の理由もある。だからこそ、今残っている昔ながらの横丁にはぜひ残って欲しい。皆さん、飲みに行って支えてください!」と客席に呼びかけました。

その後、話は「今後の横丁の課題」という話題に。戸田さんはトークショーの前半で話した、娯楽施設や商業施設が潰れ、大きな物件が空き家となってしまっている地方の現状を例に上げ、「今後は東京で成功した横丁を地方に持っていく、これは東京の横丁がやらなくてはいけないことかなと思う」と語ります。

また、今後の課題として手塚さんが挙げたのは「人手不足」と「外国人労働者とどううまくやっていくか」という点。手塚さんが人手不足の解消法としてスキマバイトを簡単に募集できるサービスのタイミーを取り入れたところ、従来のアルバイト採用とはあまりにも違うそのシステムに驚いたとのこと。衝撃のあまり「タイミーの創業者に会いに行った」というエピソードは会場からも驚きの声が上がっていました。そして、手塚さんの店舗では今かなりの割合を外国人の従業員が占めているということで、彼らとともに働くには価値観や文化の違いをどう受け入れ、どう対応するかを考えなければならないといいます。実際にそれらの現場に直面している手塚さんの話からは、人手不足や、増え続ける外国人居住者との共生といった、今まさに東京が直面しつつある「現実」が見えてくるようです。

最後は、参加者から事前に募集した質問コーナーに。「居酒屋で他人から話しかけられることについてどう思う?」という質問では、「飲食店はそういったコミュニケーションからコミュニティが生まれる場所でもあるからいいのでは、とは思う」という戸田さんに、朝井さんが「私はあんまり話しかけられたくない派なんですよ」と「ソロ活女子」ならではの発言。結局はそういう、話しかけられたくないかどうか見極める「空気を読む力の重要性」という話になるなど、「居酒屋ルールあるあるエピソード」で盛り上がりを見せました。

新旧の横丁の違いや横丁の歴史、“今”の横丁の現状、店舗経営者として見据える横丁の課題……、さらにはここでは書けないような!?裏話もたくさん飛び出したこの日のトークイベント。盛りだくさんの内容で、これから横丁に遊びに行くときの見方、楽しみ方が少し拡張されたような、そんな一夜となりました。

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・未成年者の飲酒は法律で禁じられています。お酒は20歳になってから。
・妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
・飲酒運転は法律で禁止されています。
・飲みすぎに注意、お酒は適量を。