いまある貯蓄額の差は広がっている (週刊朝日2019年11月22日号より)
いまある貯蓄額の差は広がっている (週刊朝日2019年11月22日号より)
所得の差も開いている (週刊朝日2019年11月22日号より)
所得の差も開いている (週刊朝日2019年11月22日号より)
生活保護を受ける人の年齢別推移 (週刊朝日2019年11月22日号より)
生活保護を受ける人の年齢別推移 (週刊朝日2019年11月22日号より)
年金はもらい始めてからも目減りし続ける (週刊朝日2019年11月22日号より)
年金はもらい始めてからも目減りし続ける (週刊朝日2019年11月22日号より)

「55歳ごろにはリタイアして悠々自適の老後を送ろうと思っていたのですが、それどころではありません」

【図表】所得の差も開いている

 埼玉県の60代前半の男性はため息を漏らす。約20年前に家業の飲食店を継いだが、最近は消費増税もあって客足は伸びない。90歳近い母親の介護や2人の子どもの教育費もかさむ。お金の蓄えは少なく、リタイアどころか他店でのアルバイトもして稼がないといけない。妻も昼間は飲食店を手伝い、夕方はスーパーで働く。男性は将来を考えると不安が募る。

「働くのをやめたら、収入は国民年金だけになってしまいます。体が動ける限り働き続けるしかありません」

 お金に余裕がある高齢者と、ない人の差は広がっている。

 金融広報中央委員会が2018年に行った「家計の金融行動に関する世論調査」によると、預貯金や株式、投資信託など金融資産の保有額は、世帯主が60代の2人以上世帯では、3千万円以上が18.6%。これだけあれば、老後の生活もとりあえずは安心だ。60代の約5人に1人がお金に余裕があるといえる。

 一方で、金融資産がないという60代の世帯は22%に上る。こちらも約5人に1人が、余裕が全くない状況なのだ。人生100年時代、蓄えがなくては将来は厳しい。

 内閣府の「高齢社会白書」を見ても、貯蓄や所得の格差がわかる。

 世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄の状況では、1世帯当たりの金融資産の保有額の平均値は2384万円。ちょうど真ん中の数値でより実感に近い中央値は1639万円。4千万円以上の世帯が17.6%ある一方で、100万円未満も6.7%ある。グラフで示すと両端が高く真ん中がくぼんでおり、二極化していることを示している。

 所得の状況を見ると、65歳以上でもかなり稼いでいる人がいる。一方で、65歳以上の高齢者世帯の所得の平均値は年318万円、中央値は年258万円。現役世帯よりも低い所得で、家計をやりくりしている世帯が目立つ。

 高齢化が進み、日本人の平均寿命はいまや男性が81歳、女性が87歳。長く生きると現役時代の収入や貯蓄などの差が積み重なって、格差が広がりやすい。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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