生活保護を受ける高齢者も増えている。厚生労働省によると、生活保護を受けている65歳以上の高齢者は17年に102万人に上り、全体の49.1%を占める。最後のセーフティーネットである生活保護を受けるのは当然の権利だが、これからも受給者が増えると見込まれている。

 頼りになるはずの年金や医療、介護などの社会保障制度の先行きも厳しい。少子化で高齢者を支える人が減るからだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、総人口に対する65歳以上の割合は、15年の26.6%から40年には35.3%に上がる。3人に1人が高齢者だ。15年は高齢者1人に対して現役世代(15~64歳)は2.3人の割合だったが、40年には1.5人となる。

 医療費や介護費の自己負担の増加は避けられない。10月から10%に上がった消費税率も、さらに引き上げられる可能性がある。

 老後の生活を支えるはずの年金も目減りする。厚労省が8月に公表した年金の財政検証の試算をもとに、65歳の夫婦2人がもらえる標準的な受取額と、それぞれの時点の「所得代替率」の推移を示した。各時点の年金の価値を示す指標で、低いほど年金が目減りしてしまう。

 経済が成長し働く人が増えるケースと、成長や働く人の増加が一定程度にとどまるケースのどちらでも、年金は大きく目減りする。65歳時点の所得代替率は61.7%。90歳になる44年では経済が成長するケースで41.9%、一定程度のケースで45.7%。経済成長に応じて現役世代の賃金は上がるため、年金の価値がいまより2~3割減ることになる。

 年金が当てにならないことは政府自身も認めている。今年注目されたのが、「老後資金2千万円問題」。金融庁の報告書が、無職の平均的な高齢世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)が30年間暮らすには、年金だけでは足りず、約2千万円の蓄えが必要だと指摘した。これを満たす世帯は全体の半分ほどしかない。 

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