2千万円でもまだ足りないかもしれない。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、ゆとりのある老後生活(2人世帯)の費用を聞くと、平均値で月36万1千円となった。金融庁の報告書の想定に当てはめると、30年間暮らすには約5500万円の蓄えが必要になる。

 ここまで見てきたように、老後の不安が高まるのも当然だ。若い人なら将来を見据えて、貯蓄や運用を始めればいいが、高齢者はどうしてもあきらめがちになる。

 だが、何もしないと、老後の不安は深刻になるばかりだ。実は60歳になってからでも、やれることは少なくない。大金持ちになることは確かに難しいが、余裕のある「金持ち老後」は努力次第で実現できる。

 専門家が、まず大事だと口をそろえるのは、自分の収入や貯蓄など、家計の現状と見通しを把握すること。

 ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんはこう助言する。

「自分のいまの位置を確認しましょう。年金や退職金など入ってくるお金のほか、預貯金などいつでも引き出せるお金、さらに生活費などの出ていくお金を洗い出します。入ってくるお金と出ていくお金が把握できたら、今後、どれだけ働いたり、節約したり、運用したりするとよいのか方針を固めます。決めるのは早ければ早いほどいい。選択肢が広がるからです」

 家計の「現在地」がわかったら、次に収入をどう増やすかを考える。

 多くの高齢者にとって収入の柱は年金だ。金融庁の報告書によると、無職の平均的な高齢世帯収入20万9198円のうち、年金(社会保障給付)が19万1880円を占めた。

 年金に詳しい社会保険労務士の北村庄吾さんは、「亡くなるまで保証される収入手段は年金しかない」と重要性を強調する。

 まずは日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」や、ネットサービスの「ねんきんネット」などで将来の見込み額を確認しよう。よくわからなければ、近くの年金事務所に相談する。

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