コールセンターでは、怒声を浴びせられたり、キレられたりすることもたびたび。榎本さんは「悪口ノート」をつくり、心の平穏を保つよう心がけている。

 嫌なことを言われたら、ノートに書きとめる。言われた悪口が10個たまると、「マッサージに行く」とか「いつもより500円高いランチを食べる」などのごほうびを用意しておく。

 すると、発想が「嫌だ」から「集めるぞ」に変わる。相手からの罵倒すら、その表現がおもしろいと受け止められる余裕も出てくる。

「ノートの記録を振り返ってみると、そのときに『あぁ嫌だな』と感じたことが、ただ自分が否定的に捉えていただけだったと気づくこともあります」と榎本さん。

 今日もまた、どこかでだれかがぶつかり合う。世代も性格も境遇も違う人間同士。衝突し、思いがすれ違うのは自然なことだろう。

 それが当たり前とあらかじめ理解し、怒りを抑えるコツを身につけていれば、無用に激突せずにすむ。こだわらず、つっかからず、「ケ・セラ・セラ~」。これがいいのかもしれない。

週刊朝日  2017年6月9日号