嫌なことを言われたらノートに書きとめるのも、心の平穏を保つための一つの方法だという (※写真はイメージ)
嫌なことを言われたらノートに書きとめるのも、心の平穏を保つための一つの方法だという (※写真はイメージ)

 キレる人は、普段顔を合わせる上司・部下だけではない。顧客などの取引先、満員電車で肩が触れ合った見知らぬ人、飲み屋で隣のテーブルに座る酔客……。いつ、だれが、どこで、いきなりキレるかわからない。

 記憶に新しいのは、今村雅弘・前復興担当大臣の4月の会見。質問した記者に、「うるさい」「出ていきなさい」と感情を爆発させた。

 今村氏は一人の記者との質疑応答を繰り返すなかで、「責任をもって回答してください」と詰め寄られた。すると、「なんて無礼なことを言うんだ。(発言を)撤回しなさい」と色をなし、会見を打ち切った。

 今村氏はその後陳謝したが、怒りの姿はニュースなどで繰り返し伝えられた。キレたら終わり。多くの国民はそう認識し、代償の大きさを実感しただろう。

 人事・経営コンサルタントの増沢隆太氏は今村氏の会見について、「攻撃的なトゲトゲしい場面だけに、ユーモアのセンスでかわしてもよかった。アメリカの政治家なら、ジョークで対応して空気を変えたかもしれない」と語る。

「今村氏の会見は、怒りのモデルを見せてくれた。あれは反面教師ですね」

 そう話すのは、東京都内の聖路加国際病院リエゾンセンター長の保坂隆医師。

 今村氏の事例の場合、記者とやりとりを繰り返すなかで、怒りの“時限爆弾”にスイッチが入ってしまったとみる。そこで、「自分自身で怒りをどう抑えられるか、修練になる」(保坂医師)。

 お勧めの方法が、腹式呼吸。7~8秒間かけて、ゆっくり息を吐く。怒りを感じる“交感神経モード”から、リラックスした“副交感神経モード”に変わり、怒りの増長を抑えられる。

 脳を「だます」ことも有効だ。例えば、窓の外の空などの自然を眺め、心が奪われる時間をつくる。青空に雲が流れているなぁ、木々の葉が風に揺られているなぁ、などとあるがままをただ実況中継するかのごとく眺めるとよい。

 保坂医師は精神科医として、診療現場でがん患者の心のケアをしている。ネガティブ思考に陥り、今を味わうことなく未来を悲観してしまう患者に数多く接してきた。

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