「脳は放っておくと後悔のネタばかり探してしまう『ネクラ』さん。一つのことしか考えられないから、怒りモードのときは、脳を別のことに食いつかせるとよいのです。例えば、アイロンがけや風呂のタイル磨きのような、単調な繰り返し続ける作業。すると、堂々巡りの状態から脱却できるのです」
揺れる光をずっと見つめる「ろうそく瞑想」という方法もある。
ろうそく(火を使わないLEDのキャンドルライトでも)を机に置く。それを5分ほど眺めていると、高ぶった感情が少しずつ収まり、集中して無になれるという。
「怒りの原因の上司や部下の姿が、思い浮かんできてもいい。そんな自分を、また眺めればいいのです」
瞑想を続けていると、自分の状況が客観的に見えて、心が落ち着いてくるという。
もう一人、怒りに向き合う達人の経験を紹介したい。
著書『督促OL修行日記』などで知られる榎本まみさん。カードの支払いが滞る顧客に督促するコールセンターでの仕事の体験をつづった。キレた人への向き合い方や、自らの心が折れないようにする術を、職場で身につけた。
「電話口のお客さんも部下も、キレる人はみんな同じです。自分の言いたいことをわかってくれないから、キレるのです」と話す。
大切なのは、キレている相手が「自分は理解されているんだ」と思えるように接することだという。
例えば、督促などの本題に入る前に、ワンクッション置く。会話の最後は気持ちよく終われるようにする。これだけでも、怒りは鎮まりやすい。当初どんなにキレた相手でも、会話が気持ちよく終わると、不思議とその怒りは「チャラ」になり、落ち着くのだという。
部下に指示を出すときも同じだ。相手が普段嫌だなと思っていることがあれば、まずそれを話す。心を少し解きほぐし、本題に入る。
「わかります、そうですよね。○○は、不快なことですよね。でも、あなたのこういうところも良くないんです。だから、こんなふうに直すといいですよ」といった具合だ。