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錦織圭、五輪の雪辱へ! 今夜開幕の全米オープン、“怪物”マリーが最大の障壁か
錦織圭、五輪の雪辱へ! 今夜開幕の全米オープン、“怪物”マリーが最大の障壁か
全米オープンでは、五輪で敗れたマリーとの対戦が予想される準々決勝が山場になるとみられる。(写真:Getty Images)  現地8月29日、シーズン最後のグランドスラム、全米オープンテニスがニューヨークで開幕する。日本の錦織圭は、この大会で2年前に準優勝。悲願のグランドスラム制覇を目指し、大会2日目にベンジャミン・ベッカーとの初戦に臨む。  錦織圭は、ドローが決まった時に確認するのは初戦の対戦相手のみで、そこから先は見ないのだという。  それは多くの選手が言うことで、不確定な先々のことに捉われたくないというのは、ほとんどの選手たちが望むメンタリティだ。だがそうは言っても情報を遮断するのは難しく、世界ランキング2位のアンディ・マリーは「知りたくなくても、すぐに君たち(メディア)が教えてくれるから」とシニカルに笑い、また最近では「ツイッターで知ってしまう」という選手も多い。一方で同1位のノバク・ジョコビッチは、「基本的には次の試合のみに集中するが、そうは言ってもやはりドロー全体に目を通す」と言っており、全体像を把握しておきたいタイプのようだ。  ところが錦織は、本当に先々の対戦相手を知らないことが多い。会見で「ドローは言わないでください」と笑いながら取材陣に釘をさすこともあるし、勝利後の会見で次の対戦相手を聞かされ「えっ、また彼と当たるんですか?」と驚くこともあるほどだ。目的地点からの逆算ではなく、一歩ずつ進んで行けば目指す彼方まで辿り着けるとする彼の姿勢は、一つのトーナメントのみならず、初めてラケットを手にした少年の日から今に至るまで変わらぬロジックである。  実際に今回の全米オープンのドローを見ても、錦織が先々で当たる相手が誰になるかは予測がつきにくい。初戦でベッカーに勝利すれば、2回戦で当たるのはカレン・カチャノフとトマス・ファビアノという、予選突破者対決の勝者。その先となると、シード順で行けば3回戦でフィリップ・コールシュライバー、4回戦でダビド・ゴフィンということになるが、ゴフィンの山には、この7月以降で2大会に優勝するなど、15勝4敗と絶好調のイボ・カロビッチもいる。  なお、ここまでに名前を挙げた対戦候補者のなかで、錦織が過去に敗戦を喫したのはベッカーとカロビッチ。対ベッカーは2勝1敗、カロビッチは1勝2敗であるが、錦織が急成長を果たした2014年以降に限れば負けなしというのは、心強い数字である。  ただベスト8まで勝ち進んだとすれば、かなりの可能性で対戦することになるのが、マリーだ。錦織が1勝7敗と大きく負け越している相手であり、先のリオ五輪で対戦した際にも「しょんぼり」するほどに圧倒された、現テニス界の“2強”の一人だ。  五輪で錦織を破り勝ち進んだマリーは、決勝も制して金メダルに輝くと、翌週のシンシナティ・マスターズでも決勝まで進出。さすがに決勝ではマリン・チリッチに敗れたが、金メダルを懸けた死闘の翌日にはリオから北米へと移動し、その後すぐに5試合を戦い抜いたのだ。錦織も「あれだけ疲れていても決勝まで行けるというのが、“怪物”的な体力を持っている……」と、同世代のライバルであるチリッチの優勝以上に、マリーのスタミナに衝撃を受けていた。  もっともそのマリー、実はマスターズの初戦を終えた時点で、肩に痛みを覚えて棄権も考えたという。だが、トレーナーや医師の「酷使による炎症で、靭帯や骨には異常はない」との診断を聞いた時、「この大会が終わればしばらく休める。ならば行けるところまで行こう」と決断したことを後に明かした。これまではジョコビッチやロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダルらに次ぐ“第3、第4の男”の地位に長く甘んじてきたマリーの頂点への執念は、悲願のグランドスラム優勝を目指す錦織の前に立ちはだかる、最大の障壁かもしれない。  そのように、現在ジョコビッチと双璧を成すマリーだが、1年前の全米では4回戦で敗れているのだから、これも勝ち上がり予想の困難さを示す証左。昨年そのマリーから殊勲の星を奪ったのが、203cmのビッグサーバー、ケビン・アンダーソンであり、そのアンダーソンと今大会の初戦で当たるのが、「テニス界の牛若丸」とも称される、西岡良仁である。170cmと小柄な西岡の武器は、高い打点をも苦にしないリターンと、スピードを生かしたコートカバー能力。「じゃんけんで負けるのも嫌」というほどの負けん気と分析力が、アンダーソンの時速220kmを超えるサーブやパワーをいかに攻略するかがみどころだ。  女子では、今大会初めてグランドスラムのシード選手となった土居美咲に期待が集まる。第30シードの地位は、3回戦まではシード選手と当たらないことを約束される権利。その3回戦で当たる可能性が高いのが、昨年準優勝のロベルタ・ビンチだ。土居が目標に掲げる「大会2週目まで残る」……つまりは4回戦以上に勝ち進むためにも、大物狩りを果たし、さらなる上位進出を狙いたいところだ。  膝のケガのためウィンブルドンを欠場した18歳の大坂なおみも、今大会の注目選手だ。この初夏は、クレーと芝という、ほとんど経験したことのなかったコートサーフェスでの慣れぬ戦いでケガを重ねたが、北米のハードコートは彼女のホーム。しかも全米オープン会場のナショナルテニスセンターは、彼女が5歳の頃に初めてテニスボールを打った、始まりの地でもある。初戦の相手は、第28シードでビッグサーバーのココ・バンダウェイ。迫力ある打ち合いが展開されるだろう。  そのほか、日比野菜緒はクリスティナ・ムラデノビッチ、奈良くるみはシュテファニー・フェーゲレと、いずれも初戦はノーシードと対戦する。ムラデノビッチは昨年ベスト8に入った実力者だが、最近は調子を落とし気味。日比野はこの機に、グランドスラム初勝利を手にしたいところだ。  一方奈良は、グランドスラムでの初戦負けは2度しかないという優れた調整力の持ち主。今回も前週の大会はスキップして、全米に照準を合わせてきた。良い状態で北米シリーズを戦ってきただけに、久々の3回戦進出に期待がかかる。(文・内田暁)
錦織圭
dot. 2016/08/29 16:30
おかしな声優・アニメ業界を描く新TVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』OP&EDテーマなど解禁
おかしな声優・アニメ業界を描く新TVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』OP&EDテーマなど解禁
おかしな声優・アニメ業界を描く新TVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』OP&EDテーマなど解禁  10月6日にTBSにて放送開始となるTVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』の、キービジュアル、OP&EDテーマ、登場人物情報が公開された。『ガーリッシュ ナンバー』 新公開ビジュアルなど  かわいい外見と世を舐めきったメンタルを持つ女子大生・烏丸千歳(cv.千本木彩花)が、夢と希望と野心を抱いて踏み込んだ声優業界での活躍や奮闘を描く本作『ガーリッシュ ナンバー』。烏丸千歳をはじめ、久我山八重(cv.本渡 楓)、片倉 京(cv.石川由依)、苑生百花(cv.鈴木絵理)、柴崎万葉(cv.大西沙織)からなる5人組ユニット“ガーリッシュ ナンバー”の楽曲も見どころの一つで、OPテーマ「Bloom」、EDテーマ「今は短し夢見よ乙女」も彼女らが務めている。またOPテーマ、EDテーマそれぞれのリリースも発表された。  さらに今回、おかしな声優・アニメ業界で奮闘する千歳たち登場キャラクターの情報も公開されているので、まずチェックして放送開始を楽しみに待とう。 ◎シングル『Bloom』2016/11/2 RELEASE[GNCA-0444] 1,200円+税1.Bloom(TVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』OPテーマ)/歌唱:ガーリッシュ ナンバー2.タイトル未定(第1話 劇中歌)/歌唱:kohaluna+各inst収録※kohaluna:苑生百花(cv.鈴木絵理)、柴崎万葉(cv.大西沙織) ◎シングル『今は短し夢見よ乙女』2016/11/30 RELEASE[GNCA-0445] 1,200円+税1.今は短し夢見よ乙女(TVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』EDテーマ)/歌唱:ガーリッシュ ナンバー2.タイトル未定(第4話 劇中歌)/歌唱:ガーリッシュ ナンバー+各inst収録 ◎登場キャラクター情報・烏丸千歳(cv.千本木彩花)見た目はかわいいが性格はクズな新人声優。調子に乗りやすく凹みやすい。モブ役ばかりの現状に危機感がある。 ・久我山八重(cv.本渡 楓)千歳とは声優養成所の同期で友人。天然のあざとさが一部女性から嫌われている。年がら年中ダイエット中。 ・片倉京(cv.石川由依)千歳と同じ事務所に所属する関西弁のお姉さん。売れていないのでバイトを掛け持ちしている。 ・苑生百花(cv.鈴木絵理)アイドル声優ミュージシャンとして活躍する高校生。両親は業界の大物で、そのこともあって性格は生意気。 ・柴崎万葉(cv.大西沙織)役者への憧れが強い意識高い系声優。売れっ子だがラノベアニメや役者以外の仕事をやらされる現状が不満。 ・九頭P(cv.中井和哉)アニメ作品を企画・制作する敏腕(?)プロデューサー。外見はチャラく、中身もなかなかにチャラい。 ・烏丸悟浄(cv.梅原裕一郎)千歳の兄にしてマネージャー。仕事を舐めきった妹の態度に頭痛が絶えない日々を過ごしている。 ◎TVアニメ『ガーリッシュ ナンバー』10月6日(木)深夜2時28分からTBSにて放送開始予定(サンテレビ・BS-TBS 10月放送開始予定)<STORY>かわいい外見と世を舐めきったメンタルを持つ女子大生・烏丸千歳。夢と希望と野心を抱いて踏み込んだ声優業界で、彼女が目にしたのは、おかしな業界のシビアな現実の数々だった――。仕事なし×やる気なしの新人声優・千歳に、人気声優への道は開けるのか!?<スタッフ>原作:Project GN原案・シリーズ構成:渡 航キャラクター原案:QP:flapper監督:井畑翔太キャラクターデザイン:木野下澄江美術監督:峯田佳実デザインワークス:石川雅一LO監修:益田賢治色彩設計:林 由稀撮影監督:伊藤康行編集:小島俊彦アニメーション制作:ディオメディア<キャスト>千本木彩花(烏丸千歳)/本渡 楓(久我山八重)/石川由依(片倉 京)/鈴木絵理(苑生百花)/大西沙織(柴崎万葉)中井和哉(九頭P)/梅原裕一郎(烏丸悟浄)
billboardnews 2016/08/26 00:00
異端のススメ
異端のススメ
『異端のススメ』が出版されたのは2013年12月。「いつやるか?今でしょ!」でブレーク中だった予備校講師の林修氏が衆院議員だった小池百合子氏にオファーして実現したという対談本だ。  1965年、愛知県名古屋市生まれ。東大法学部を出て長銀(日本長期信用銀行)に就職するも、わずか5カ月で退社。その後は〈もうめちゃくちゃな生活を3年ほどしていました〉。〈株でも大失敗して〉という林氏。  1952年、兵庫県芦屋市生まれ。英語で身を立てようと思っていたが、アポロ11号の月面着陸中継を見て同時通訳は無理だとあきらめ、〈高校生のときに、アラブに行こう、エジプトに行こう〉と決心。関西学院大学を中退してカイロ大学に進学。テレビ東京の経済番組キャスターから39歳で政治家に転身した小池氏。 「異端」といっても要は勝ち組同士の対談じゃんとはいえるけれども、先の都知事選への小池氏の出馬劇を考えると、なるほどねと思わされる点も多い。 〈勝てると思えば進む、負けると思ったらさっさと撤退する。私も、英語だけではダメだなと思ったので、アラビア語に行ってみたわけです〉。できたばかりの日本新党から初出馬したときの心境は〈誰かがやらなければならないなら、自分がやろう。よし、立ち上がろう、と決意しました。リスクを取ったのです〉。そして、もう一言。〈テレビ局の方には、「小池は飛行機事故で死んだものと思ってください」とお願いしました〉。  女性の活躍についても持論を展開。〈日本は女子大を除くとアカデミズムの世界に女性のトップがいません〉〈女性議員を増やすことは政治の変化を促す最短の方法でもあります〉。しかし〈権利の主張を声高に訴えるのはあまり好きではないですね。「取りに行け」と思っているんですよ〉。 〈今どき、失敗しても命は取られることはありません〉という小池氏。何事にも強気の人生。自己啓発書として読まれたのだと思うけど、こういうリーダーについていくのは大変だなと思ったよ。 ※週刊朝日 2016年9月2日号
今週の名言奇言
週刊朝日 2016/08/25 00:00
北海道発のミラクルフルーツ「アロニア」。アントシアニンがたっぷり。健康に美容に抗加齢に!!
北海道発のミラクルフルーツ「アロニア」。アントシアニンがたっぷり。健康に美容に抗加齢に!!
アロニアはここ最近、欧米の健康志向の高い女子に人気で、日本でも10年ほど前からジャムやジュース、サプリメントなどで見かけるようになりました。果実はブルーベリーほどの大きさで、北海道では早いところでは8月の終わりごろから収穫が始まります。この黒い果実には、目にいいとされている成分、アントシアニンが、ブルーベリーやビルベリーよりも豊富に含まれているそうです。健康ブームで注目されている「アロニア」。北海道ではそろそろ収穫の時期を迎えます。 ブルーベリーのような見た目だけど、ナナカマドに近い仲間 アロニアは北米産でバラ科に属し、果実は直径1cmほど、実の色は赤、紫、黒の3種類に分けられます。花の構造が、秋に赤い実をつけるナナカマドに似ているので、ロシアでは「黒い実のナナカマド」ともよばれています。 初夏に開花し、収穫は9月上旬ごろから本格化します。果実の見ためはブルーベリーに似ていますが、種類としてはナナカマドに近い仲間で、実のつき方もナナカマドと同じように、房状です。 最近は「チョコレートベリー」や「チョコベリー」などの名称でも親しまれていますが、英語名はチョークベリー(Chokeberry)です。 ブルーベリーのように生で食べるには渋味が強すぎるので、加工して食べます。果実酒やジャム、ジュースのほか、最近では錠剤のサプリメントも販売されています。アロニアの花。5~6月に咲きます。 ブルーベリーよりも、ビルベリーよりも、アントシアニンが豊富な「アロニア」 最近よく耳にするアントシアニンという成分は、赤ワインやチョコレート、ブルーベリーなどに多く含まれるポリフェノールの一種です。目の機能に関係するロドプシンという成分の再合成を促進し、目の機能を回復する力があるといわれています。 このアントシアニンが豊富なフルーツの代表選手といえば、ブルーベリーですが、最近では、ブルーベリーよりもアントシアニンが豊富なハスカップや北欧産のビルベリーなども話題になっています。しかしアロニアには、それらのフルーツの2~3倍ものアントシアニンが含まれているということで、注目を集めています。 さらに、抗酸化作用を持つカロチノイドがブルーベリーの10倍以上も含まれているほか、脂肪の分解を助けたり、血圧を下げたりする機能も報告されています。 最近では健康ブームを受けてアロニアの成分に注目が集まり、大手メーカーの飲むヨーグルトや野菜ジュースにも利用されていて好評です。 北海道が最大の生産地。ハスカップに次ぐ、北海道を代表する果実に アロニアは1976年、当時のソビエト連邦から日本に輸入された、比較的新しいフルーツです。日本では主に北海道の千歳市や伊達市、滝川市、旭川市などで栽培されているほか、岩手県や長野県でも生産されています。北米産やロシア産というと、寒いところで育つというイメージですが、丈夫で育てやすい果樹なので、日本のどの地域でも育てることができます。 日本での最大の生産地は北海道です。道内では2001年の収穫量は0.9tでしたが、2004年には4t、2013年には38tにまで増加し、さらに年々増えています。北海道のフルーツというと昔からハスカップが有名ですが、このところのアロニア人気で、アロニアもまた北海道を代表する果実になればと生産者らは期待しています。赤い実のアロニアもあります。 八雲町ではアロニアの収穫体験会。栽培は初心者向き 北海道・八雲町の「噴火湾パノラマパーク」では9月、アロニアの収穫体験会が行われます。 ・日 時…9月3日(土)~4日(日) AM11:00から ・場 所…噴火湾パノラマパーク内の果樹園 ・参加料…無料 ※収穫するための袋を持参すること。 健康成分が豊富なアロニアを育てるには、特別な肥料や水やりは必要ありません。また、大げさな剪定も不要。病害虫もつきにくいので、園芸初心者向きの果樹です。 ブルーベリーのように生でそのまま食べることはできませんが、ジャムやジュースにしたり、酢に漬けたり、果実酒にしたりと、いろいろな加工で楽しむことができます。何より、栄養分が豊富なのがうれしいですね。 最近の健康ブームで、さまざまなものがスーパーフードやミラクルフードとして紹介されています。アロニアもここ10年ほどで注目を浴びている果実です。パソコンやスマホで目を酷使している方や、加齢、肥満が気になる方には、ありがたいフルーツといえそうです。 〈参考:北海道新聞2015年8月28日夕刊10面、「アロニア収穫量 急増、健康ブーム受け道内栽培盛ん」〉 〈参考サイト:らてら「漆黒の北海道産果実“アロニア”って何?」〉 〈参考サイト:北海道バイオインダストリー「アロニア機能性研究」〉噴火湾。
tenki.jp 2016/08/25 00:00
[連載]アサヒカメラの90年 第9回
[連載]アサヒカメラの90年 第9回
1961年6月号表紙。撮影は高梨豊。構成を担当した浜田浜雄は映画のズーミングのイメージを写真に持ち込もうとした 1959年9月号「ニューフェース診断室」ニコンF キヤノンの広告には「平均年令27才」のコピーが 1960年8月号 長野重一「話題のフォト・ルポ 警視庁機動隊」 1960年1月号 東松照明「基地 HARLEM(黒人街)」 1961年1月号 濱谷浩「日本列島 火山地帯(桜島・霧島)」 1961年5月号 「現代の感情 石黒健治〈ジムの若者〉」 1960年11月号 若い写真家の発言・1 東松照明「僕は名取氏に反論する」 1962年10月号 奈良原一高「モード写真の周辺10 プリントのドレス」 写真産業の青春期  1962(昭和37)年6月号に、木村伊兵衛の「57台のカメラで銀座夜景を撮影する」というリポートが掲載された。 「銀座夜景」といっても、ロマンチックな思い出を語ったわけではなく、57年8月号から担当してきた「ニューフェース診断室」で取り上げたカメラやレンズについて振り返っ たものだ。 「銀座夜景」とは、銀座4丁目の三越百貨店前から晴海通りに沿い、日比谷方面を狙って夜間にテスト撮影を行うからだ。見通しがよく、通り沿いの建物が立体チャートの代わりになるし、夜であれば季節ごとの天候や光線状態に左右されない。  この欄を担当してからの5年間の変化はまことに激しい、と木村は言う。まず晴海通りを走る自動車の量や、ネオンサインの数が飛躍的に増えた。しかし、こうした風景の変化よりも重要なのは、カメラの主流が変わったことで、「五年の間に距離連動カメラから一眼レフになり、大衆用カメラに露出計が内蔵され、近ごろではEE式になってきた」のだ。  日本のカメラメーカーが一眼レフの可能性を模索し始めたのは、50年代半ばから。それは54年に発売された、初めてクイックリターンミラーを採用したアサヒフレックスⅡ(旭光学工業)や、翌年のペンタプリズムを付けたミランダT(オリオンカメラ、後のミランダカメラ)から始まった。開発への努力は54年にレンジファインダー機の完成形、ライカM3が発表されると拍車がかかり、5年後にはニコンFとキヤノンフレックスという高級機が発売されるに至った。  このうちニコンFは、一眼レフの代名詞的となる世界的なヒット機種に育ったことはよく知られている。ただし59年9月号の「ニューフェース診断室」では、工作精度は高いが、内面反射が多くミラーショックも大きく、デザインにも難点があると指摘している。  興味深いのは、これを読んだニコンの若手技術者が編集部に乗り込んできたことだ。木村は彼らの行為に驚きつつも、「疑問をはらすための熱心さかと思えば、却って好感が持てた」と振り返っている。また、この話とは直接関係はないが、61年5月号に掲載されているキヤノンの広告には「平均年令27才」というコピーが入っている。これは前年のフォトキナで発表した50mmF0.95のレンズを開発した技術者たちの年齢だとある。  いずれのメーカーも若い情熱によって、戦前から追いかけてきたドイツ製カメラの量と質とを猛追していた。そして工作精度の向上、自動演算装置を使った合理的な設計、徹底したコストダウンと品質管理によって輸出は急増し、その目標は手の届くところまできていたのだ。木村はこうした努力を重ねるカメラメーカーの努力を認めながらも、機材の個性、ことにレンズの味を出すように求める。「もっと各社が個性をもつべきだ。解像力だけにきゅうきゅうとなってはいけない」と、呼びかけたのである。 「第三の新人」  本誌の編集長は、60年7号に伴俊彦から小安正直に代わっている。  休刊期を除き、36(昭和11)年から本誌の編集に関わってきたこの大ベテランは、12月号の巻頭に今年の10大ニュースを挙げた。それは土門拳の『筑豊のこどもたち』(パトリア書店)の出版、第1回日本カメラショーの開催、安保反対デモへの写真家たちの参加と濱谷浩の『怒りと悲しみの記録』(河出書房新社)など関連写真集の出版、日本写真家協会による共同制作展「ここにあなたは住んでいる」の開催などである。  加えて、小安は「とくに目立ち、問題を将来に残している二つの傾向」を紹介した。それは「若い写真家たちによる“新しい写真表現”の試み」と「高級カメラの大衆化」で、後者は前節で触れたことと関連する。  また前者はテーマをより主観的に解釈して、写真家個人と世界との関係を一種のイメージとして描き出す写真家を指す。ただ、彼らが悩ましいのは、「今年のカメラ雑誌のほとんどを圧倒したといってよいほど、立派な問題作を残した。それと同時に、抽象化された画面、非常に強調された色調、そして特異な写真処理といった特徴は、アマチュアたちの間に“自分たちはついていけない”の嘆きさえ生みだし」ていたからである。  そんな写真家たちの先頭にいたのが奈良原一高だった。56年5月に2部構成の初個展「人間の土地」を開催した当時、奈良原は写真界とは縁がない、美術史を専攻する25歳の大学院生だった。つまり突然現れた新人が、こと同世代に痛烈な刺激を与えたのである。  たとえば奈良原より3歳年長の写真評論家福島辰夫は、展示から数カ月を経てもその記憶が薄れなかった。なぜなら、「あんなに時代のいぶきを全身に受けて、いきづいている写真を見たことがなかったからである。自分の世代と人生を誠実に生きている写真を見たことがなかったからである」(「カメラ」57年2月号「これからの写真家・2 青白い火花 奈良原一高」)。  この展示に刺激を受けた福島は、翌57年、同じ時代感覚を共有する若い写真家による「10人の眼」展を企画、奈良原をはじめ細江英公、石元泰博、川田喜久治、川原舜、佐藤明、丹野章、東松照明、常盤とよ子、中村正也がこれに参加した。彼らは年長の、三木淳ら集団フォトの世代とは区別されて、写真界の「第三の新人」あるいは「映像派」などと呼ばれた。  そのなかでも奈良原は一頭地抜けていた。ことに58年9月に、北海道のトラピスト修道院と和歌山の女子刑務所を撮影した、やはり2部構成の写真展「王国」によって日本写真批評家協会賞新人賞を受賞すると、世代を超えた評価を確立した。  福島と同じく、写真評論家の伊藤知巳もまた奈良原を強く支持し、「フォトアート」誌59年9月号の「今月の話題・問題」では「奈良原の存在意義は、一般に考えられている以上に重要な意味合いをもつ」と位置づけている。それは「第三の新人群と総称しても、方法意識の強烈さでは、かれの右に出るものはないと思われた」からで、常に自己の孤独な内面を見つめる奈良原は、思想を持った写真家と呼びうる希少な存在とした。伊藤は写真界の発展には、このような写真家のさらなる出現が必要だと訴えた。  伊藤がこの原稿を書いていた7月、その奈良原を含め、東松、細江、丹野、佐藤、川田はセルフエージェンシーであるVIVOを結成した。新しい写真家たちそれぞれの、経済的自立と創作の場の確保を目的とした有限会社であった。 1960年の戸惑い  60年は新年号から「“新しい写真表現”の試み」といえる3本の連載が始まっている。北海道の歴史性を重層的に浮かび上がらせた奈良原のカラー作品「カオスの地」、時事問題をテーマにした長野重一の「話題のフォト・ルポ」、そして在日米軍基地の周辺を撮影した東松照明の「基地」である。  このなかで長野は、奈良原や東松より5歳ほど年長で、集団フォト世代に入る。ただ、その「フォト・エッセイスト」と称された作法は、「第三の新人」たちの表現性と近い。日常生活から社会的なテーマを見つけ、正論やコンセンサスをひっくり返して、個人的な視点と生理的な感覚によって撮影していた。  そんな長野だが、この連載では様子が違っていた。日常生活ではなく、日米安保条約改定前後の政治状況をテーマに据えることが多く、「ある学生たち」(2月号)、「警視庁機動隊 国会流血事件前後」(8月号)、「政治屋たち」(9月号)、「選挙区の名士たち 池田首相のお国入り」(11月号)と全体の3分の1を占めたのである。そこには戦時下に大学時代を過ごし、多くの同輩を戦場で失った世代としての怒りがストレートに表明されている。  また翌年7月号では「空と海との間に ある鉱山企業の歴史」を15ページにわたって発表している。愛媛県にある別子銅山の現在から、財閥を基礎にし、日本の資本主義の発展過程を象徴的に表現しようとした意欲作だった。  東松の「基地」は、戦後の社会状況を米軍基地の街を通して描出したもので、長野の「話題のフォト・ルポ」に比べてかなり詩的である。後にこれが「占領」シリーズと呼ばれるのは、いずれの冒頭にも「とつぜん 与えられた 奇妙な果実 それをぼくは<占領>と呼ぶ」というコピーが挿入されたからである。  占領は以降も東松にとって重要なテーマであり続けるのだが、このときは「HARLEM(黒人街)」(横須賀)、「視線」(千歳)、「周辺の子供たち」(三沢)の3回で終わった。一部の強い支持を集めたものの、多くの読者と編集者には戸惑いを与えたようだった。  その戸惑いを解きほぐすべく、評論家の渡辺勉は9月号に「新しい写真表現の傾向」を寄稿した。渡辺は、新しい写真家たちは写真という表現ジャンルが確立した後に育った世代だから、「写真の視覚的表現力を自由に探究」できるという。そんな彼らは、事実を伝達するために映像的レトリックの効果を用いるのではなく、方法論そのものに自己のイメージを託す。このような傾向は「これから普遍的となりつつある」のだと渡辺は説いた。  だがこの理解に対し、翌10月号で名取洋之助が「新しい写真の誕生」で異議を唱えた。名取は、「新しい写真」とは組写真におけるイメージの連なりのなかでこそ現れる傾向だとし、それを論証するために同じ「岩波写真文庫」出身の長野と東松を例に挙げる。 小さな論争  長野と東松、この二人は報道写真から出発したものの数年前から違う道を選んだ、と名取は言う。長野の場合、映像的なレトリックを駆使してもそれは「ストーリーを理解しやすくするための手段に過ぎず」、本来の報道写真家の舞台ではない写真雑誌でひとつの「芸当を見せただけ」のことである。  一方、東松は組写真からストーリーを消し、イメージのみを残す道を選んだ。それは報道写真家にとって必要な「特定の事実尊重を捨て」て「時とか場所に制限されない方向に進む」ことである。つまり、彼は「報道写真とは、時間、場所にとらわれないことによって絶縁してしまったのだ」。  さらに11月号では東松が「僕は名取氏に反論する」を、奈良原が「ある未知への発端」を発表してこれに反論した。ここで東松は、自分はそもそも名取のいう報道写真家ではなく、「いわゆる報道写真を拒否したまでだ」と述べる。なぜなら「写真の動脈硬化を防ぐためには『報道写真』にまつわる悪霊を払いのけて、その言葉が持つ既成の概念を破壊すること」が必要だからだ。この「悪霊」とは、名取らが主導して軍国プロパガンダに陥った、戦前の報道写真の歴史に対する端的な形容である。また奈良原は、自身が写真に関わる理由は、個人的な生理感覚によるものだとした。  以上のやり取りは「名取・東松論争」と呼ばれ、誌面に小さな波を立てた。  その余談ではあるが、論争の発端となった名取の「新しい写真の誕生」は、当時から名取ではなく、そのマネジャーの犬伏英之が書いたものと推測されている。それは東松自身も感づいていたようだ。ただ、さらに後になって、「岩波写真文庫」時代から常に名取が自分に仕事を回していたことを知り、「そういうことを分かっていればあんな論争できないですよ」(『写真年鑑2008』日本カメラ社)と振り返っている。  さて、翌61年にはかつて朝日新聞出版局写真部のカメラマンが担当していた「現代の感情」が、新しい写真家を紹介するためのページとして復活している。そのラインアップは川田喜久治、川島浩、今井寿恵、中村正也、石黒健治、藤川清という、すでに知られた才能だった。これが62年には「新人」と改題され、キャリアの少ない若手にとって登竜門的な役割を果たすようになる。  むろん本誌は、新しい写真家ばかりを取り上げていたわけではない。61年には濱谷浩が「日本列島」を連載し、その迫力に満ちた空撮は読者の大きな反響を呼んでいる。これは国民的な盛り上がりを見せた安保闘争をすぐに忘れた日本人の国民性に疑問を感じた濱谷が、その心性がどんな地形や風土から育ったのかを見つめようとしたシリーズだった。  日本人が戦後の高度経済成長を実感しているこの頃、日本人の民族性をテーマに据えた作品は少なくない。その筆頭は間違いなく土門拳で、彼は59年に1年間、「カメラ毎日」で「古寺巡礼」の連載を手がけ、それと並行して本誌でも全国の祭礼をめぐる「日本風土記」を、62年には歴史的な建築や遺物を凝視した「偏執狂的な風景」を連載した。さらに、この間の60年には『筑豊のこどもたち』とその続編を出版したが、同年、脳出血で入院を余儀なくされ身体的なハンディを負った。  こうして写真雑誌の主役が交代しながら、誌面を飾る写真表現の範囲も拡大していった。高度経済成長とともに広告やファッション、あるいは自然をテーマにした写真が誌面に華やぎをもたらすのである。
アサヒカメラの90年
dot. 2016/08/22 00:00
日本男子は強豪に歴史的勝利で快進撃 惨敗 サクラセブンズが語る「世界の壁」
日本男子は強豪に歴史的勝利で快進撃 惨敗 サクラセブンズが語る「世界の壁」
奇跡は簡単には起きない…(※イメージ)  日本のラガーメンが世界を驚かせた。リオ五輪で初採用されたラグビー7人制の男子が、1次リーグでニュージーランドに歴史的勝利。続く、決勝トーナメントの初戦でも強豪フランスに逆転勝ちし、ベスト4進出を決めた。  しかし、サクラセブンズこと女子は、金メダルを目標にこの5年間で約1100日を合宿にあてるなど強化を図ってきたが、12チーム中10位と振るわず。 「奇跡は簡単には起きないってことですね。急には強くならないし、ある意味で実力通りの結果。フィジカルもスピードも世界との差を感じました。時間はかかっても、世界で勝つには、一歩ずつ強くなっていくしかないんだと思います」  昨年の春から、勤務していた広告会社の電通東日本を休職し、競技に集中してきた主将の中村知春(アルカス熊谷)はしみじみとそう振り返った。  当初はバックアップメンバーだったものの、負傷者が出たことで唯一、勝利した第4戦のケニア戦に途中出場した竹内亜弥(アルカス熊谷)は、京都大学を卒業した選手として1968年メキシコ五輪馬術の荒木雄豪さん以来、女子では初めての五輪出場を果たした。 「自分としてはそのことに何の感慨もなかったんですけど、周りの人が喜んでくれたのはうれしい」  出版社の新潮社を休職して、夢の舞台を目指してきた竹内。リオ五輪が開幕した5日には30歳の誕生日を迎え、今後については「会社と相談しながら、ゆっくり考えたいなと思っています」と語るにとどまったが、五輪が一つの区切りとなる可能性は高い。(本誌・小泉耕平、鳴澤 大/栗原正夫、渡辺勘郎) ※週刊朝日 2016年8月26日号
リオ五輪
週刊朝日 2016/08/18 07:00
先生もアゼン 塾に習い事にキャンプにと小学生の夏休みが忙しすぎる
先生もアゼン 塾に習い事にキャンプにと小学生の夏休みが忙しすぎる
深夜までの勉強や、息抜きのゲームを親も黙認してしまいがち……(※イメージ)  ふだんから塾に習い事にと、何かと忙しい今どきの小学生。授業がない夏休みも、水泳にサマーキャンプや塾の夏期講習などが加わり、休むヒマがない。  食べかけのポテトを残して、親子でファストフード店を飛び出した。息子と慌ててタクシーに乗り込んだAさん(40)は、都内在住の専業主婦。夏休み工作教室の開始時刻を勘違いしていたことに、事務局からの電話で気づいたのだ。 「せっかく無料や格安のものに申し込んでいるのに、遅刻でタクシー移動なんて、意味がないですよね(笑)。あの日は午前に伝統芸能のワークショップ、翌日も科学の実験教室があって、私が混乱していました」 ●バレエ特訓中に宿題  Aさんは小3の長男のために、夏休み前、学校で配られたプリントから参加可能なイベントすべてに申し込んだ。実費程度の参加費で、夏の自由研究にもなりそうなものが中心だ。一日をラジオ体操に始まり、午前、午後、夜に分けて、子どものスケジュールを管理しているという。 「夏休みはいろんな体験ができるチャンス。子ども向けのコンサートや舞台なども申し込みました。夫が仕事を休んで帰省できるのはお盆だけなので、サマーキャンプと野球の練習や合宿の合間を、こうしたイベントで埋めています」(Aさん)  セミの声を聞きながら部屋で一日ゴロゴロしたり、日暮れまで友だちと冒険したり……。都会の子どもたちにとって、そんな夏の日は、もう遠い昔の情景なのだろうか? 「学校がない夏休みのほうが、子どもは断然忙しい」  そう断言するのは、信販会社の女性管理職Bさん(45)だ。  小4の長女の夏の予定は、お盆時期の発表会に向けたバレエ特訓が占める。週4回で、拘束時間は長い日で午前10時から午後4時まで。 「自分の出番じゃない時間にやるよう、学校の宿題を持たせています。ただ娘はまだ気楽なほう。いったん外出させ、近所のファミレスで塾の宿題を見ているお母様もいらっしゃって、大変だなって……」(Bさん) 「気楽」とはいえ、英語やピアノなども習っているため、週末には三つの習い事をかけ持ち。レッスン場や駅まで親も自転車をとばす。 「バレエの発表会後は、短期の海外語学留学をさせます。バレエも含め、夏の予定はすべて、何より娘が楽しみにしているから、親も送迎や費用面で応援できる」(Bさん) ●忙しくも充実した夏  中学生になれば、親が関与しなくても、自分の意思で部活漬けなどの夏を迎えることになる。実際、中学生の母親たちは、 「夏休み中は連日、サッカー部の練習に合宿もあります。家族でのハワイ旅行を差し引くと、オフは2日ほど」(私立中2年女子の母) 「息子はプログラミングの大会を目指した習い事、娘は吹奏楽部に毎日通う夏。家族旅行には行きたがりません」(私立高1年女子、公立中1年男子の母)  と、わが子の忙しさにあきれつつも、やりたいことに夢中な姿勢には肯定的だ。  Bさんの場合、それが少し早まっただけなのかもしれない。しっかりした目標があり、無理強いでなければ、親たちは小学生の忙しい夏を応援しているようだ。 「ぐんぐん上達して、習得も早い年代。最初はろくに覚えられなかった武道の型でしたが、まだ小2だったのに大会であんなに頑張れた」  そう誇らしげに話すパート勤務の女性Cさん(36)は、昨夏の息子の成長を実感している。夏休み半ばに開催される武道の大会に向け、週3日の練習に加え、先生の個人指導にも5回以上は通った。ほかに週2日あるサッカーの練習と試合、合宿もすべて参加。そして週末は家族でバーベキューに出かけ、忙しくも充実した夏を満喫した。  しかし夫婦双方の親たちから、いつ孫の顔が見られるのかと、クレームが出た。夫の実家は名古屋、Cさんは京都。東京からの短期間の帰省は、交通費も気になり、控えていたからだ。 ●義母の送迎付き帰省 「夏はいつ帰ってくるのかと、親たちにずっと聞かれて……。去年は1泊でもいいからと、名古屋の義母が朝、東京まで息子だけを迎えに来て、とんぼ返り。サッカーに間に合うよう、2日後の昼にまた、品川駅まで新幹線で連れてきてくれました。あちらも嫁がいないほうが気楽みたいで(笑)、よかったようです」(Cさん)  今年は習い事がないゴールデンウィークに、Cさんの京都の実家には帰省済み。夏休みは、昨夏と同じ義母の送迎付きの帰省が、2泊ぐらいなら可能なはずだ。  実家でのんびりできないのは、きょうだいで予定が合わないからという声もある。専業主婦の女性Dさん(43)は言う。 「小5の長男は、中学受験塾の夏期講習とサッカーで予定はいっぱい。今年は海外旅行もあきらめたので、小1の次男にもいろいろ手をかけてあげたい」  その結果、次男はサマースクール、サッカーに加え、そろばん、将棋の習い事で夏休みの予定を埋めることに。一人で通えないため、親は送迎が大変だ。 「でもこの夏、本当に頑張っているのは長男。塾の成績が伸び悩んでいるので、フォローのため別の塾をかけ持ちして送迎しています。ただ私が車を運転できるぶん、子どもたちの予定を詰め込みすぎかも」(Dさん)  夏が天王山、夏こそ勝負──。そんな激励が飛び交う中学受験組は、首都圏の忙しい夏の子どもの代表選手だろう。夏期講習と宿題の時間を合わせると、一日10時間近く勉強する子どもも珍しくない。 ●9時間睡眠の確保を  医療メーカーで働く女性Eさん(37)は、マンションの同じ階で不思議な光景を目にした。自分の家の玄関の前で、小6の女の子が立ったまま一心不乱に本を読んでいる。 「鍵がないの?」  そう尋ねて、返ってきた答えに驚いた。 「ドアを開けたら今日の“やることリスト”が始まっちゃうから、その前に読み終えるんです」  母親は専業主婦で、女の子は最難関中学合格率が高い塾の上位クラスに在籍中だ。 「勉強は0時過ぎまでやっていると聞きました。うちの長女は別の塾ですが、10時には眠くなってしまい、宿題が終わりません」(Eさん)  夏休み中は毎朝の登校がないぶん、夜更かしが続きがちだ。深夜までの勉強や、息抜きのゲームを親も黙認してしまって、子どもの健康に影響はないのだろうか。 「身体の疲れは休息で回復しますが、脳の疲れは眠ることでしか取れません。せっかくの塾や習い事も、睡眠がとれてないと集中力が下がり、もったいない」  と話すのは、睡眠改善シニアインストラクターで、子どもの生活習慣に関する講演も多い内海裕子さん。では何時に、何時間ほど眠らせればいいのか? 「米国立睡眠財団が推奨する睡眠時間は、6~13歳なら9~11時間。もちろん個人差はありますが、ぜひ9時には就寝を。花火大会や旅行など特別な日の夜更かしはありですが、その場合も翌朝は早起きするルールにすると、夜は早く眠れて、生活のリズムを取り戻せます」  内海さんは、学校の時間割がない夏休みだからこそ、できることもあると言う。 「多忙にせよ、のんびりにせよ、自由に親子で時間割を組むチャンス。長期休暇は、早起きや朝食などの生活習慣や時間管理能力を、親から子へ贈ることができる。新学期に向けて目指すべきは『生活習慣エリート』です」  忙しくても、親も子どもと一緒に早寝早起き。寝る親子はよく育つ。(ライター・三宮千賀子) ※AERA 2016年8月22日号
出産と子育て夏休み
AERA 2016/08/17 11:30
福原愛 台湾の彼氏に見守られ絶好調 元彼、錦織圭とニアミスなし
福原愛 台湾の彼氏に見守られ絶好調 元彼、錦織圭とニアミスなし
悲願のメダルにあと一歩届かなかった愛ちゃん (c)朝日新聞社  11月で28歳になる卓球女子の福原愛にとって今回のリオ五輪は、最後の大舞台とされていた。が、現地入りした福原は絶好調だった。  シングルスでは、ロンドン五輪金の李暁霞(中国)に準決勝で0−4で敗れたものの、初のベスト4に進出した。  その飛躍の立役者とされるのは、4月に自身のブログで「良いお付き合いをさせていただいております」と交際を公表した台湾の卓球代表選手の江宏傑(27)だ。  リオ五輪の開会式で江を見つけた福原は、人ごみをかき分け、そばに駆け寄り、一緒に記念撮影。大舞台でツーショットをメディアに初披露していた。 「福原はロンドン五輪後、ケガや不調に悩まされましたが、精神面で支えたのが、江です。2014年末に江が福原にSNSで猛烈アタックをし、翌年春頃から交際を続けています。直前の国内合宿では、限界まで自分を追いこんで練習し、心身ともに“リア充”だったようです」(スポーツ紙記者)  福原といえば、過去にテニスの錦織圭とのデート写真が週刊誌に掲載されたこともあった。 「錦織は、開会式の前にリオ入りしていましたが、式には調整のため参加せず、2人とのニアミスもなかったようです」(同)。(本誌・小泉耕平、鳴澤 大/栗原正夫、渡辺勘郎) ※週刊朝日  2016年8月26日号
リオ五輪福原愛
週刊朝日 2016/08/17 07:00
福原愛「負けた責任は私にある」 卓球女子団体は決勝進出ならず メダルかけ三位決定戦へ
福原愛「負けた責任は私にある」 卓球女子団体は決勝進出ならず メダルかけ三位決定戦へ
卓球女子団体は準決勝でドイツに黒星。伊藤(左)、福原(右)は「私の責任」と、揃って敗戦を悔やんだ。(写真:Getty Images)  ロンドン五輪に続く2大会連続メダルに王手をかけた日本女子卓球団体チームは現地14日、リオ五輪の準決勝に臨んだが、強豪ドイツに2-3で敗れ、決勝進出を逃した。  1番手に起用されたのは五輪初出場の15歳、伊藤美誠。「強い相手ほど燃える」という持ち前の強心臓で、パワーのあるペトリサ・ソルヤに強打を連打し、1ゲーム目を11-5で先取した。しかし、2ゲーム目に入ると、打ち急ぎによるミスが目立ち、逆に4-11でソルヤに1ゲームを与えてしまう。フルゲームにもつれ込んだ試合は第5ゲーム、伊藤が9-3とリードするも、ここからまさかの7連続失点。結局、ゲームカウント3-2でソルヤが競り勝った。  続く2番手の石川佳純は手ごわいカットマンのハン・インと対戦。序盤はハンの特殊なカットボールに苦しめられ2ゲームを先行されるが、3ゲーム目からは相手の打球にも慣れ反撃を開始。得意のフォアハンドが炸裂し、3ゲーム連取で1勝をあげる。  スコアを1-1にした日本は福原愛・伊藤ペアがダブルスに登場。福原がチャンスボールを作り、伊藤が決めるコンビネーションが期待されたが、それを阻んだシャン・シャオナとソルヤのペアに一歩及ばず。フルゲームの末に敗れてしまった。  ダブルスを取られ1-2に追い込まれた日本は、ここで再びエースの石川が底力をみせる。ダブルスで福原と伊藤を苦しめたシャンに対して、第1ゲームの頭から圧巻の10連続ポイント。この勢いのままストレート勝ちを収め、スコアを2-2に戻した。  そして、勝負の行方を左右する運命の第5試合は福原に託された。相手はカットマンのハン。本来、得意ではない戦型の相手に対し、福原は1ゲーム目からフォアのスマッシュを打ち込む攻めの姿勢をみせる。しかし、相手の打球の回転に押され次第にネットオーバーが目立つように。試合はフルゲームにもつれ込み、第5ゲームを4-7でリードされながらも6連続ポイントで勢いを盛り返し、一気に逆転勝ちを収めるかに思われたが、最後はハンの打球がきわどいエッジボールとなり、あっけない幕切れを迎えた。  4時間近くに及んだ大激戦を制したのはドイツ。2-3で敗れた日本は3位決定戦に回り、銅メダルをかけて今大会最後の一戦に臨む。  この試合でダブルスとシングルスを落とした福原。試合後、涙を浮かべながら、「両方を落としてしまった。負けの責任は私にある」と話し、「(3位決定戦では)今日の悔しさをすべてぶつけたい」と唇をかんだ。また、団体戦初戦から想定外のプレーで観客を魅了してきた伊藤も五輪の洗礼を浴びる形となり、「1番手でいい流れを作れなかった。今日の負けは私の責任かなと思う」とコメントしている。  日本は、3位決定戦で日本時間15日夜に行われるもうひとつの準決勝、中国vsシンガポールの敗者と対戦する。(文・高樹ミナ)
リオ五輪
dot. 2016/08/15 18:13
東京パフォーマンスドール 上西星来 タワレコ学生応援の2代目キャンペーンガールに!!
東京パフォーマンスドール 上西星来 タワレコ学生応援の2代目キャンペーンガールに!!
東京パフォーマンスドール 上西星来 タワレコ学生応援の2代目キャンペーンガールに!!  9人組ガールズグループ・東京パフォーマンスドール(通称 TPD)が、8月14日 タワーレコード渋谷店B1F「CUTUP STUDIO」にて、ニューシングル『純愛カオス』(8月17日発売)のリリースイベントを開催。メンバーの上西星来が、タワーレコード学生応援キャンペーン2代目キャンペーンガールに大抜擢されたことを発表した。TPD 上西星来 キュートな画像一覧  この日誕生日を迎え20歳になったばかりの上西だが、ガールズグループとしての活動だけでなく、女性ファッション誌『Ray』の専属モデルや、三井住友銀行のTVCM、9月17日開催の神戸コレクション出演など、ソロ活動でも注目されている1人。ミニライブ後のMCで本人よりこのことが発表されると、会場につめかけたファンからは歓喜の声があがった。  本キャンペーンは、学生の音楽との出会い、音楽生活をより豊かにすべく、昨年よりタワーレコードが一部限定店舗でスタート。“新しい音楽との出会いはいつもワクワク♪”のテーマのもと、3種の撮りおろしポスターを制作。メインとなるポスターは、試聴機で音楽を聴いているシチュエーションで撮影され、自然体の表情が素敵な内容に仕上がっている。8月15日より、対象のタワーレコード主要店舗にて掲示開始となる。是非チェックしてほしい。 ◎TPD 上西星来 コメント 「今回はタワーレコード学生応援キャンペーン2代目キャンペーン女子に選ばれたことを、とても嬉しく思います!! 音楽は私にとって、いつも生活の中にあって、昔のことを思い出したり将来のことを思い描いたり、自分に勇気をくれたりする素敵なパートナーです。私が活動する東京パフォーマンスドールの曲も、皆さんの心に残る一曲になってくれたら嬉しいなと思います!! ぜひポスターを見つけてくださいね!」 ◎タワーレコード学生キャンペーン対象店舗 札幌ピヴォ店、仙台パルコ店、浦和店、池袋店、新宿店、渋谷店、吉祥寺店、町田店、八王子店、川崎店、横浜ビブレ店、静岡店、名古屋パルコ店、名古屋近鉄パッセ店、あべのHOOP店、アミュプラザ博多店 http://bit.ly/2aTDvqm ◎シングル『純愛カオス』 2016/8/17 RELEASE [初回生産限定盤A(CD+DVD)] ESCL-4663~4 1,667円+税 [初回生産限定盤B] ESCL-4665 926円+税 [初回生産限定盤C] ESCL-4666 926円+税 [初回生産限定盤D] ESCL-4667 926円+税 [通常盤] ESCL-4668 926円+税 [期間生産限定盤] ESCL-4669 463円+税 ※その他詳細などは公式HPに掲載中 <リリース記念予約イベント(ミニライブ&特典会)> 8月16日(火)19:00~ 東京 SHIBUYA TSUTAYA 2F特設会場 ※ミニライブはございません。 8月17日(水)19:00~ 東京 タワーレコード渋谷店 B1F 「CUTUP STUDIO」 ※リリース日 8月18日(木)19:00~ 東京 都内某所 ※イベント参加券に会場記載 8月19日(金)18:30~ 神奈川 ラゾーナ川崎プラザ2F ルーファ広場 8月20日(土)13:00~/16:30~ 神奈川 たまプラーザテラス屋外イベントスペース 8月21日(日)13:00~/16:30~ 埼玉 ららぽーと富士見 屋外広場 8月27日(土)13:00~/16:30~ 兵庫 阪急西宮ガーデンズ 4階スカイガーデン・木の葉のステージ 8月28日(日)13:00~/16:30~ 愛知 イオンモール木曽川1F ノースコート ・5thシングル『純愛カオス』リリース記念SPライブ~ファイナル~ 9月4日(日)13:00~/16:30~ 東京 ららぽーと豊洲 ※各日程の詳細は公式HPにて ◎【東京パフォーマンスドール DANCE SUMMIT DREAM CRUSADERS】 9月16日(金)TSUTAYA O-EAST OPEN 18:15 / START 19:00 チケット:4,500円(税込、オールスタンディング) 各種チケット先行: ・GET TICKET 8月18日(木)23:00まで http://bit.ly/2bse4h7 ・イープラス 8月15日(月)12:00~8月21日(日)18:00 http://bit.ly/2bheWZx ・ローソンチケット 8月15日(月)13:00~8月21日(日)23:59 http://bit.ly/2aXkchm ・チケットぴあ 8月15日(月)11:00~8月22日(月)11:00 http://bit.ly/2aTEpmV ◎東名阪ツアーも決定! 11月3日(木・祝)梅田クラブクアトロ 11月6日(日)新宿BLAZE 11月13日(日)名古屋 ボトムライン
billboardnews 2016/08/15 00:00
黒ビキニに「大丈夫かな?」 名物・女子大生「表紙」に空手美女登場
黒ビキニに「大丈夫かな?」 名物・女子大生「表紙」に空手美女登場
週刊朝日8月19日号 表紙の大学生公募モデル・太田紅葉さん(成城大学)  女優、タレント、アナウンサーも輩出した週刊朝日の名物企画「女子大学生公募モデル表紙」が今年もスタート! 気鋭の写真家・川島小鳥が撮る今週の女子大生は、成城大学1年の「太田紅葉(おおた・くれは)」。  今年の本誌女子大生モデルの中で最年少の18歳。空手初段の腕前を持つ、川島小鳥さん曰く「スポーティーなクール美人」だ。  プライベートで着る水着は赤やピンクなどのかわいい系ばかりという太田さん。大人っぽい黒いビキニが衣装と知ったときには、「大丈夫かな?」と思ったそうですが、透明感のある色気を見せてくれました。  高校時代は空手部に所属。平日は夜9時まで練習、夏休みはひたすら合宿。その甲斐あって高3で全国大会に出場。7月に部活を引退してすぐ受験勉強が始まった。大学合格を果たした現在、これまでできなかった“女子の青春”を満喫中だ。 「ショッピングしたり、カフェでお茶したり。一人暮らしを始めて、自分が料理好きと気づきました。親子丼、おいしく作れます」  でもそろそろ、空手が恋しくなり、道場に通おうかと思っているそうです。 ※週刊朝日  2016年8月19日号
朝日新聞出版の本
週刊朝日 2016/08/14 11:30
米ケンタッキー州、キリスト教原理主義者が造った巨大な「箱舟」に詣でる人たち
米ケンタッキー州、キリスト教原理主義者が造った巨大な「箱舟」に詣でる人たち
全長155メートルの「箱舟」。1500種7千匹の動物が大洪水を生き延びたと信じる熱心なキリスト教信者たちは、みな一様にうれしそうだった/2016年7月、米ケンタッキー州ウィリアムズタウン(撮影/モーガン・フリーマン) 「箱舟」の館内はきれいに装飾され、ノア夫妻の人形も置かれている。家族は音楽を奏で、おしゃれな敷物で飾られた部屋で、磁器の製作もしていたとの説明があった(撮影/モーガン・フリーマン)  米中西部約1700キロを走破する旅の道中のある夜、行く手に巨大な「ノアの箱舟」が姿を現した。キリスト教原理主義者が造った「博物館」には、敬虔な白人たちが列をなしていた。  今もカウボーイがいるオクラホマ州を出発し、反人工中絶派が産婦人科医を殺害して全米を驚かせたカンザス州を経て、ケンタッキー州ウィリアムズタウン(人口約4千人)に向け、ひたすら東へ車を走らせる。気温30度を超える蒸し暑い日の夕方、白いイトスギで造られた巨大な「箱舟」が、緑の丘を切り開いて造成された広大な駐車場の奥に姿を現した。  7月7日にオープンしたばかりの「箱舟との遭遇博物館」は、長さ155メートル、幅26メートル、高さ16メートル。聖書に記述されたとおりの寸法で、「世界最大の木造建築」と喧伝する。8月15日までは深夜まで開館しており、この日も午後8時だというのに、人々が続々と集まってきていた。子どもも大人も幸せそうな笑みを浮かべ、巨大な箱舟に目を見開いている。  入館待ちの人々が並ぶ約30メートルの長いスロープに設置されたモニターには、旧約聖書の「創世記」に出てくる、ノアが神と対話する場面の映像が流れている。神が、自ら創造した世界が堕落したことに心を痛め、洪水で滅ぼす計画をノアに伝える。ノアとその家族、動物、鳥のつがいが生き延びられるよう、箱舟の建設を命じる場面で、ノアを演じる俳優の苦悩の表情が画面いっぱいに広がる。  スロープを上ってたどり着く1階は、大中小の木造の檻が所狭しと並ぶ。中からは鳥のさえずりが聞こえ、熊、鹿、キリンなどの動物の張りぼてが見える。檻と檻の間には、ノアがどうやって7千匹もの動物や鳥を箱舟で世話したかを、できるだけ「科学的に」説明しようとするパネルもある。 ●建設費は約1億ドル信者の寄付で調達  2階は、食物を保管した部屋や、鍛冶や織物までできた箱舟の「工場」部分の展示。そして3階は、ノアと家族の生活空間になっている。箱舟の中が3階建てだったという聖書の記述どおりだ。オレンジ色や黄色のクッションが置かれたノアの寝室、緑やピンクなど美しい織物で装飾された食堂、さまざまな大きさの鳥かごやハーブが保管されている部屋が、美男美女のリアルな人形とともに展示されている。訪れた子どもたちが「きれいね」「素晴らしい」と囁きながら、展示の間を走り回っていた。  この時点で、同行したフォトグラファーも記者も、同じことを考えていた。「キリスト教の熱心な信者なら、ノアの家族がこんな快適な生活を実際にしていたと信じるに違いない」と。  箱舟博物館建設を計画したキリスト教原理主義者のグループ「答えは創世記に」の創始者ケン・ハム(64)は、米紙ニューヨーク・タイムズにこう語っている。 「ノアの箱舟は、ディズニーのようなテーマパークではない。これを造ったのは、宗教的な理由だ。キリスト教信者としてメッセージを伝えるために造った」  世界は神が6千年前に6日間で創造したと信じるハムらのグループは、建設費約1億ドルを信者の寄付で賄った。同紙によると、建設に関わった従業員には「信仰の声明」にサインをさせ、教義に同意しない人や同性愛者は雇用しなかった。さらに、人工中絶賛成派、無神論者、同性愛者などの「悪」が「蔓延」する現代については、 「世俗化が進む今日は、まさにノアの時代に似通ってきている」(ハム)  と同紙に語っている。  南部テキサス州ダラスから来たという自称「イエス・キリストオタク」、パトリック・ブライデニック(52)は、記者のために祈りたいと手を握ったまま、こう言った。 「箱舟はあったのだと信じている。創世記が記された死海文書だって発見されている。紀元前のものだ。自分の中のイエス・キリストが、キリスト教のメッセージをいろんな人に伝えるようにと言うので、やって来た」  旧式のカメラを記者に渡し、記念撮影を頼んできた老夫婦も、満面の笑みで臆することなく言った。 「箱舟を信じているわ。一生の思い出になる」  入館記念の合成写真を見ると、記者の横には、背に鋭いとげのある恐竜が、チーターやチンパンジーとともに写っていた。地球の年齢は約45億歳で、恐竜の時代には人類は誕生しておらず、動物は進化により種を増やしてきたという現代の常識は、館内では完全に無視されている。 ●「トランプ氏とともに『神』を再び降臨させる」  テレビで人気の科学者ビル・ナイ(60)は、ケン・ハムと2014年に行った討論会で、こう警鐘を鳴らした。 「私たちは、科学的なことを全く知らない子どもたちを育ててしまうことになる」  箱舟の存在を信じて疑わない白人たちで埋め尽くされた博物館を後にしてから2日後。オハイオ州クリーブランド(人口約39万人)にたどり着いたとき、記者はデジャヴ(既視感)に襲われた。7月19日、実業家ドナルド・トランプを大統領候補に選出した共和党大会の会場周辺では、中西部のキリスト教原理主義者の白人たちが集まり、混沌とした状況を生んでいたのだ。  その前日、トランプの過激な支持者であるロジャー・ストーンらが後援したデモ「アメリカ・ファースト・ユニティー」が開かれた川沿いの公園。司会を務めたブロンドに赤いサマードレスの白人女性が冒頭こう言うと、割れんばかりの歓声が上がった。 「私たちは、トランプ氏とともに、『神』をアメリカに再び降臨させるのです! 神の名を呼びましょう! 神の言葉を聞きましょう!」  キリストや聖母マリアが描かれたTシャツを着た人や、隆々とした筋肉に入れ墨を入れ、革のベストやジャケットを着てオートバイで駆けつけた「バイカーズ・フォー・トランプ」が次々と公園に到着し、歓迎の声が上がる。オハイオ州では公共の場で銃の携帯が許されているため、他州からやってきた若者は銃を腰にぶら下げ、顔を輝かせている。最もよく見かけたTシャツは、「ヒラリー・フォー・プリズン」(ヒラリーを刑務所に)と書かれたものだ。星条旗に交じって、保守強硬派「茶会党」の蛇が描かれた黄色い旗も翻る。  公園には、銃の所持を支持し、人工中絶に反対し、気候変動は信じず、オバマ大統領はインドネシアで生まれたイスラム教徒だと信じ、移民を排除し、地球の歴史も信じない白人であふれ返り、異様な雰囲気だった。 「茶会党」のラジオ司会者、ケン・クロウもマイクを握った。黒いカウボーイハットに黒い革ジャケットといういでたちに、参加者から歓声が上がる。 「トランプ氏は、彼が築き上げた富を維持するために出馬しているのではなく、俺たち皆が築き上げてきたものを守ろうと、大統領選に出ているんだ。この国には変化が必要だ!」  そう語るクロウに、人々は熱い視線を送る。 ●声上げるメキシコ移民イスラム教徒の女子高生  そこから約800メートル離れた共和党大会会場のアリーナ前では、キリスト教至上主義のグループが練り歩いていた。「キリストは磔にされ、復活を果たした すべてのイスラム教徒の死の床のために」「赤と白と青(星条旗の色)の血が流れていなければ、この国から出て行け」「民主党員、同性愛者は罪深い」と書かれた看板やTシャツが目立ち、一部の歩行者から声援を受けている。  その横に、「壁を止めろ」と書かれた手製の布袋をかぶった若者が立った。トランプの最大の公約は、メキシコから不法移民が来ないよう、国境に「万里の長城」のような壁を建設するというものだ。トランプは、メキシコ移民について、 「多くの場合、犯罪者で、薬の売人で、強姦魔だ」  とも発言している。こうした移民差別と排他主義を煽るトランプの発言に対し、全米から集まった若者が布袋をかぶって手をつなぎ、布の壁をつくろうとしていた。  これに対し、トランプ支持者から声が上がった。 「移民・難民は、結核を米国に持ってくる!」  すると布袋の若者の一人が、涙声で言い返した。 「僕はメキシコ移民の1世だ。自分の家族のことを、犯罪者だ、強姦魔だ、と言われていいはずがない」  その横で、赤いヒジャブ(イスラム女性が髪を覆う布)をかぶった高校生ソンドス・ミシャル(17)が、静かに人々に語りかけていた。トランプは、イスラム教徒の入国禁止を提案している。 「私たちイスラム教徒に対する逆風に耐えきれず、市民団体に頼んで、ここに連れてきてもらいました。8歳でパレスチナから米国に来て、9年間、何の問題もなく暮らしてきました。でも、最近の私たちへの憎悪と、それが引き起こすショックには耐えられません。宗教が違っても、同じ人間なのだと、私たちはトランプ氏が言う『化け物』ではないのだと、多くの人に訴えたいんです」  混沌としたクリーブランド市内の複数のデモ隊の中で、何度も険悪な雰囲気をつくり出し、同市警に取り囲まれたのは、キリスト教関連団体だった。異教徒、移民、そして彼らが「低俗」と見なす人々に対する憎悪は、大会期間中、最も激しさを増した。  ケンタッキー州の箱舟博物館を訪れる前、記者はミズーリ州インディペンデンス(人口12万1千人)という街に行った。広島・長崎への原爆投下の決断を下した第33代大統領ハリー・トルーマン(民主党、1884~1972)が育った、中西部の物流の拠点だ。 ●「全決定に責任を持つ」トランプは宣言できるか  トルーマンは最後の高卒大統領として知られる。若いころ銀行員の職を捨て、家族のために中西部のつらい農場生活を選んだ。保守的な中西部の出身ながら、有色人種の人権を認めようという公民権運動を初めて支持した大統領でもある。先代のフランクリン・ルーズベルトが第2次世界大戦中に4選を果たしたものの終戦直前に急死し、副大統領だったトルーマンが昇格した。就任4カ月で原爆投下を決断するという、皮肉な運命に弄ばれた大統領でもある。  記者は、インディペンデンスにあるトルーマン大統領図書館を訪れた。訪問者を最初に迎える展示物が、“The buck stops here”と書かれた木製の札だ。buckは雄鹿という意味の単語だが、ポーカーゲームではディーラーポジションを示すボタンのことで、そこから「責任」という意味でも使われる。つまり、すべての決定に大統領が責任を持つという宣言で、トルーマンの執務机に置かれていた。39代大統領ジミー・カーター(民主党、1924~)の執務机にも置かれ、カーター、レーガン、オバマら民主・共和両党の歴代大統領が演説でこれを引用したという。大統領職の重さを言い表した名言なのだろう。  記者もその札を見たとき、ある種の衝撃を受けた。そして思った。はたしてこれほど重みのある札を、トランプがホワイトハウスの執務机に置けるだろうか、と。  オクラホマ州に始まり、オハイオ州の共和党大会、そして激戦地ペンシルベニア州の民主党大会へと駆け抜けた米国横断の旅。そこで出会った有権者たちは、日本人がよく行くニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどでは絶対に交わることのない人々だ。白人が多く、信心深く、排他的で、深い葛藤を抱えた彼ら・彼女たちが、11月の本選挙で、「トランプ大統領」を誕生させるのか。中西部の「赤い州」から目が離せない。(文中敬称略) (ジャーナリスト・津山恵子) ※AERA 2016年8月15日号
AERA 2016/08/12 07:00
五輪ゴルフ辞退が増えたのはジカ熱のせいじゃない!?
五輪ゴルフ辞退が増えたのはジカ熱のせいじゃない!?
池田勇太(左)と大山志保 (c)朝日新聞社  リオデジャネイロ五輪ではゴルフも新たに登場する。「新種目」ではあるが、実は112年ぶりに五輪に復活して、戻ってきたのだ。  今回は国別の団体戦はなく個人戦のみで、五輪ランキング上位の60人が出場する。1世紀ぶりの正式種目入りで出場経験のある選手はいない。ツアー大会とは違う、母国の代表としてメダルを争う姿が見られるということで、コアなファンも興味深いはず。だが直前になって男子代表で思わぬ展開が……。辞退者が相次いだのだ。  これまでに日本の松山英樹が出場を見送ったほか、ジェーソン・デー(豪)やダスティン・ジョンソン(米)、ロリー・マキロイ(英)ら世界ランキング上位陣が相次ぎ辞退を発表。これには国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も怒り心頭で、2020年の東京五輪以降のゴルフ存続の判断に影響するとの見方も示したという。  今回の混乱についてゴルフ解説者のタケ小山氏は言う。 「国際ゴルフ連盟と選手が一緒になって、長年IOCにゴルフの五輪復活を働きかけてきました。ロンドンでは実現しませんでしたが、リオで実現した。そんな経緯もあり、当然トップ選手も出場するものだと思っていました。ところがフタを開けてみると出なかった。愛国心の強い米国からも不出場者が出たのには、ちょっと驚きました」  辞退の事情はそれぞれだが、よく聞く理由は現地の治安情勢やジカ熱の問題だ。だが小山氏はこう続ける。 「あまり関係ないと思います。本音は(五輪では)賞金が出ないというのが大きいでしょう。五輪出場のためにツアーのシード権を失うリスクを訴える選手もいる。そもそも男子ゴルフには全英など四つのメジャー大会があり、勝利すれば賞金も名誉も手に入る。成熟したプロ競技にとって選手を出し続けるのは難しい面もあるのかもしれない」  とまあ、今回の騒動はオトナの事情も絡んだ話のようなのだ。辞退が連鎖する中でも出場する選手は、愛国心や士気がいかにも高そうで、戦いがヒートアップするのも間違いない。注目選手は誰なのか。  小山氏によると、海外勢の男子で注目は、40歳の“イケメンオヤジ”で7月の全英オープンで初のメジャー優勝を果たしたばかりのヘンリク・ステンソン(スウェーデン)、どこでゴルフをしても万能ぶりを発揮するというジャスティン・ローズ(英)、スペイン国旗を身に着けてやる気満々のセルヒオ・ガルシア(スペイン)の3人が要注目とか。  女子も面白い。リオ五輪では男女とも4日間計72ホールの総スコアで順位を争うが、この戦いで強さを発揮するのは「勝てる技術」と「勝ち方」を知っている選手とか。今回出場する海外勢の女子選手では、例えばリディア・コー(ニュージーランド)、アリヤ・ジュタヌガーン(タイ)、ステーシー・ルイス(米)らが有力という。  さて、わがニッポン代表の顔ぶれはどうか。男子では、あの和風、国産ショーユ顔の池田勇太と片山晋呉。小山氏は太鼓判を押す。 「池田勇太はいい。根性もあるし、金メダルは難しいかもしれませんが、入賞してメダルを持ち帰る、海外勢相手に一泡吹かせてくる可能性はあります」  女子は野村敏京と大山志保の2人だが、 「中でも今季米国ツアーで2勝している野村は勝ち方を知っている実力者。金メダルを取れる力がある」(小山氏)  ゴルフ会場は大西洋に近い新設コース。コースの芝も日本で使用されているタイプに近い高麗芝で日本勢には有利に働くという。  ゴルフ競技は男子は11日、女子は17日からスタートする。 ※週刊朝日  2016年8月19日号
リオ五輪
週刊朝日 2016/08/11 07:30
【リオ五輪 10・11日の注目競技】 福原愛、水谷隼が「打倒中国」に燃える! 内村航平「ダブル金」に挑む 
【リオ五輪 10・11日の注目競技】 福原愛、水谷隼が「打倒中国」に燃える! 内村航平「ダブル金」に挑む 
女子シングルス、ベスト4進出を決めた福原愛(c)朝日新聞社  またも日本のメダルラッシュに沸いたリオデジャネイロ五輪は大会6日目。日本時間の今夜から明日の昼にかけて、引き続き注目の競技が目白押しだ。  今夜、最大の注目を集めそうなのが卓球だ。初戦(3回戦)から切れ味鋭いプレーを連発し、神がかり的な強さを発揮している福原愛は、前日の準々決勝でロンドン五輪銅メダリストをストレートで撃破。今大会3試合を戦って1ゲームも落としていないパーフェクトな戦いぶりで、自身初の五輪ベスト4進出を果たした。  日本卓球界、史上初となるシングルスのメダルまであと1勝。対戦相手の李暁霞(中国)はロンドン五輪の金メダリストで高い壁だが、今の調子なら「打倒中国」もありそうだ。男子もエースの水谷隼が準決勝に進出した。こちらは日本時間11日の夜、世界ランキング1位の馬龍(中国)と対戦する。  団体戦で五輪3大会ぶりの金メダルを獲得した体操男子は個人総合予選がスタートする。エース・内村航平が団体・個人の“ダブル優勝”を狙う。  競泳では、前日に坂井聖人が銀メダルに輝いたバタフライ200m決勝で、今度は女子の星奈津美にメダルの期待がかかる。星はロンドン五輪の銅メダリストとあって、背負う重圧も期待も大きい。  男子200m平泳ぎも決勝を迎える。前日に行われた準決勝では、活躍が見込まれていた小関也朱篤に加えて、19歳の渡辺一平が五輪記録(2分07秒22)で驚きの全体1位通過。二人そろって決勝へ駒を進めた。男子平泳ぎといえば、4大会連続五輪出場で計7個のメダルを持つ北島康介の偉業が光る。二人は北島から渡されたバトンをしっかり受け継ぐという使命に燃える。  テニスはシングルス3回戦には錦織圭が登場する。この試合で世界ランク121位のアンドレイ・マルティン(スロバキア)に勝てば、ロンドン五輪に続くベスト8進出となる。また、錦織と同じく3回戦に臨むダニエル太郎は、1回戦で世界ランク1位の絶対王者ジョコビッチを破ったフアン・マルティン・デルポトロ(アルゼンチン)と対戦する。デルポトロはケガで長らく戦列を離れていたが、グランドスラム優勝経験もある強敵。ダニエル太郎の「大金星」なるか。  今夜は団体競技も熱い。まず、サッカー男子が決勝トーナメント進出をかけてスウェーデンと戦う。日本はここで負ければ予選敗退という勝負の一戦。強豪コロンビアに引き分けた勢いを持ち込み、なんとしても勝利をつかみたいところだ。さらに、女子バレーボールも大一番を迎える。北京、ロンドン五輪を連覇している開催国ブラジルが相手だ。地元の大応援が予想される完全アウェーで、「火の鳥NIPPON」が王者ブラジルに立ち向かう。  王者ニュージーランドを相手に大金星を挙げた日本の7人制ラグビー男子はケニアと対戦。同じ予選プールCの英国には惜敗しているため、ここは何としてでも勝って決勝進出をもぎ取りたい。(文・高樹ミナ)
リオ五輪
dot. 2016/08/10 00:00
丸山茂樹 リオ五輪ゴルフ「一人は表彰台にあがってほしい」
丸山茂樹 丸山茂樹
丸山茂樹 リオ五輪ゴルフ「一人は表彰台にあがってほしい」
 開幕が間近に迫ったリオデジャネイロオ五輪。丸山茂樹氏は、表彰台に立つ感動を日本代表にも味わってほしいと意気込む。 *  *  *  さあ8月、夏本番って感じですね。リオデジャネイロ・オリンピックのゴルフ競技は男子が8月11~14日、女子が17~20日にあります。  僕は日本代表のヘッドコーチですので、オリンピックの期間中はメディア活動が禁じられています。この連載は、来週号から3週はお休みさせていただきまして、帰国後にドンとリオの思い出を語らせてもらいます。いい報告ができるといいなあ。  現地からの情報によると、日中は気温が30度に達する日もあるそうなんですけど、朝晩は15度以下だそうです。ジカ熱を媒介すると言われている蚊を見ることは、ほとんどないって聞いてます。僕は競技会場になる「オリンピック・ゴルフコース」のそばのホテルに泊まります。車で「オリンピックロード」という道を走って、10分ぐらいで着くんですって。  有力選手の辞退が相次いだのは事実ですけど、7月の全英オープンではオリンピックに出るヘンリック・ステンソン(40、スウェーデン)がメジャー初優勝を果たし、リオに向けて大きな華を添えてくれました。ヘンリックのようにオリンピックへ出場の意欲が強くて、前向きな人もいっぱいいます。僕としては頑張って日本勢を応援してこようという気持ちですね。  日本の4選手から一人は表彰台に上がってほしいと思ってますし、十分にメダルの可能性はあると考えてます。  表彰台はいいもんですよ。僕は日大3年だった1990年の北京アジア大会で個人、団体とも優勝できました。表彰台の真ん中の一番高いところに立って、メダルを首にかけてもらい、「君が代」が流れて国旗が揚がっていく。あのときの気分は格別ですよ。感極まるものがあります。オリンピックならなおさらでしょう。ぜひ日本の選手に経験してもらいたいです。  厳しい戦いを乗り越えて栄冠をつかんでくれたら、これからの日本ゴルフ界を担う若い選手たちにも、広くオリンピックのよさが伝わっていくはずです。   さて、今季の海外メジャー最終戦となる全米プロ選手権(7月28~31日、米ニュージャージー州スプリングフィールドのバルタスロールGC)です。締め切りの関係で結果に触れられないんですが、舞台となるバルタスロールGCについて語りましょう。  ここで全米プロ選手権が開かれるのは2005年以来2度目なんですね。僕はそのときに出場してまして、予選落ちでした。調整がうまくいかなかったこともあって、全然お話にならない試合でした。「バルタスロールでやれるんだ!」という意気込みだけは強かったんですけどね。  というのも80年の全米オープンがここで開かれて、最終日の最終組で青木功さん(73)が「帝王」と呼ばれたジャック・ニクラウス(76、米)と回り、2打及ばずに優勝できなかったんです。いわゆる「バルタスロールの死闘」です。当時10歳の僕はニュースでその映像を見て、「青木さんすごいな。僕もここを回ってみたい」って強く思ったんですよね。プロになって、そういった夢をいくつもかなえられたのはラッキーでした。  それではロサンゼルスの自宅に寄って、リオへ行って参ります。朗報を待っててください! ※週刊朝日 2016年8月12日号
リオ五輪丸山茂樹
週刊朝日 2016/08/07 07:00
炎天下の東京五輪マラソン、史上最も過酷で最大難所は“四谷”
炎天下の東京五輪マラソン、史上最も過酷で最大難所は“四谷”
解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(1) 新国立競技場:メインスタジアムの隣は明治神宮外苑。生い茂る緑に囲まれていることもあって、体感温度は低い(撮影/小暮誠) 解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(2) 四谷:復路では四ツ谷駅前と四谷三丁目駅を結ぶ新宿通りが上り坂となる。ここがレース最大の難所と予想される(撮影/小暮誠) 解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(3) 皇居周辺:お堀の水があるものの体感温度は高め。ビル等の遮蔽物がないため、日陰はなし。炎天下では帽子が必須に(撮影/小暮誠) 解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(4) 浅草:観光地なだけに、多くの観戦者でごった返す可能性が。選手よりも観戦者の健康管理が求められるスポット(撮影/小暮誠) 解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(5) 日本橋:高層ビルが立ち並ぶため、朝方は日陰ができやすい。午後はビルの空調の排気で気温上昇は必至(撮影/小暮誠) 解説者・金哲彦さんのマラソンコース分析(6) 東京タワー:復路では増上寺の後方に東京タワーを望むことができる。街路樹が並ぶものの、日陰は少ないエリア(撮影/小暮誠) 金哲彦(きん・てつひこ)/1964年、福岡県生まれ。小出義雄監督率いるリクルート・ランニングクラブのコーチとして数々の五輪選手を指導。マラソン解説者としても活躍(撮影/小暮誠)  猛暑が直撃すること必至の2020東京五輪。五輪史上最も過酷なレースとなりかねないマラソンのコースを金哲彦氏と最速チェック!  夏本番。連日、全国各地で35度を超える猛暑日を記録している。3連休の最終日となった7月18日には、500人以上が熱中症とみられる症状で救急搬送。1人が意識不明の状態で発見され、命を落とした。  そんな酷暑にあえぐ日本で、かねて危惧されている夏の祭典がある。ご存じ、2020年の東京五輪だ。7月24日から8月9日の開催期間は、夏真っ盛り。猛暑が選手たちを直撃するのは必至だ。なかでも危険視されているのが、炎天下の路上を走らされることになるマラソン。プロランニングコーチで陸上競技・駅伝解説者の金哲彦氏は、次のように警鐘を鳴らす。 「スタジアム内での競技は屋根や芝などで暑さを軽減できますが、ロードレースは対策が難しい。多くの棄権者を出す可能性もあります」 ●夏季五輪は棄権者続出  過去、五輪は何度も暑さと闘ってきた。04年のアテネ五輪では、暑さを避けるためにスタート時間を夕刻18時に設定。それでもスタート時の気温は女子マラソンが35度、男子が32度という暑さだったことから、途中棄権する選手が続出。金メダルを獲得した野口みずき選手でさえも、ゴール直後に嘔吐した。  続く08年の北京五輪でも、スタート時間を朝7時半に設定。それでも男子マラソンの後半戦では気温が29度に達し、5人に1人が途中棄権する過酷なレースとなったのだ。  近年の東京の気温はどうか? 13年から15年の8月の平均気温は26~29度台。最高気温は13年に38.3度を記録している。東京五輪の女子マラソンが予定されている8月2日に絞れば、その平均気温は14年、15年ともに30度以上。アテネ五輪に迫る過酷な環境でレースが実施される可能性が濃厚なのだ。が、マラソンランナーたちを襲うのは、酷暑だけではない。 「実は、暑さ以上に体を蝕むのは湿気。70~80%を超えてくると、汗の水分が気化せず、体温を下げられなくなる。また、空気中の水分が熱を媒介してしまうため、日陰の温度も上昇します」(金氏)  最悪のケースは昨年1月に開催された第19回スタンダード・チャータード香港国際マラソンで見られた。当日は気温17度で、湿度84%。涼しい気候ではあったが、その高い湿度と大気汚染指数の高さも相まって、途中棄権が続出。10キロマラソンに参加した24歳の男性はゴール手前数百メートルの地点で倒れ、そのまま息を引き取ったのだ。 「高温多湿の環境下でのマラソンは熱中症や脱水症状、熱射病などのリスクが付きまとう。水だけ取りすぎても塩分が足りず、低ナトリウム血症に陥ることもある。これらの症状が悪化すると、体温コントロールが利かなくなり、筋肉のけいれんやめまいを引き起こし、意識が朦朧となって走れなくなるのです」(金氏) ●五輪史上最悪の環境  現在、東京五輪のマラソンのスタート時刻は7時半と予想されている。13~15年の8月2日の同時刻の気温は23~29度台。日中と比較すれば、幾分“涼しい”時間帯であることは間違いない。だが、湿度は朝方ほど高い傾向にある。昨年8月2日7時の湿度は83%。東京五輪の男子マラソンが予定されている8月9日も昨年の7時は72%。アテネの8月の平均湿度が40%台であることを考えれば、アテネを超える、五輪史上最悪の環境でレースが開催されることになる可能性は非常に高い。  一体、ランナーたちはどんなレースを強いられることになるのか? 7月某日、金氏の協力を得てコースの下見を行った。  すでに発表されているコース案によると、新国立競技場をスタートした選手たちは四谷、飯田橋と北上した後、南下して皇居前を通過。東京タワーから再び北上し、銀座・中央通りを抜けて浅草で折り返した後、同じルートをたどって新国立競技場を目指す。  7時半スタートならば、折り返し地点到達が8時半頃。その時刻に合わせて、浅草・浅草寺を訪れると、気温は早くも30度に達していた。気象庁によると同時刻の湿度は59%。照りつける日差しに、金氏は「レース当日、帽子とサングラスは必需品ですね」と漏らした。 ●体感温度高い皇居周辺  復路をたどる道中、金氏がしきりにチェックしていたのは、コースを取り巻く環境だ。 「朝の時間帯ならば、高いビルや街路樹が日陰をつくってくれます。ビル風がタイムに影響する可能性もありますが、夏場の暑い時期ならば、その風も選手たちにとって心地よい」  林立するオフィスビルは会社員の出勤時間に合わせて空調を稼働させる。その排気熱が気温を上昇させるため、都市部では夕刻も気温が下がりにくくなる。アテネのように夕方スタートではなく、早朝スタートが予想されるのは、そのためだ。  意外にも、下見を行ったなかで最も体感温度が高かったのは、緑豊かな皇居周辺だった。周囲に高層ビルがないため、日陰になるエリアがない。その日も熱心な“皇居ランナー”たちが汗を流していたが、金氏は「かえって体を壊しかねない」と不安を漏らすほどだった。  実は、マラソンランナーは暑さに弱いとされる。暑さが及ぼす身体的負担の大きさに配慮して、主要な国際大会は真夏を避けて開催されている。おのずと選手たちは、夏場も気温の上では負担の小さい高原などで走り込むため、暑さへの耐性が低いのだ。それは、アフリカのトップ選手なども同様だ。 「アベベ選手などの一流アスリートを生み出したエチオピアは首都アディスアベバも標高2400メートル。暑さに強そうなイメージがありますが、実際には夏場の平均気温も、日本よりずっと低い」(金氏)  では、いかにして暑さを克服すればいいのか? 炎天下でのトレーニングは逆効果だという。「アテネで金をとった野口は直前まで涼しいヨーロッパで練習を積みましたが、5位に終わった土佐礼子は暑さに慣れるために沖縄で合宿を行っていた。さらに1984年のロス五輪でも、宗兄弟は北海道で練習を積んで弟の猛選手が4位に入りましたが、瀬古利彦さんは炎天下の東京・神宮外苑で40キロ走を繰り返して体調を崩し、血尿まで出した結果、14位に終わりました」 ●冷えたドリンク不可欠  金氏曰く、「暑さに慣れるよりも、経験することが重要」。本番の1、2年前に日本国内で唯一真夏に開催される北海道マラソンを経験しておく程度でいいという。本番当日は給水もレースを左右する可能性がある。 「猛暑の中のアテネ五輪で野口は給水ボトルに“魔法瓶”を使って冷たいドリンクと水を確保しました。後に魔法瓶の使用は禁止されましたが、東京五輪では冷えた状態のドリンクを手渡せる態勢づくりが不可欠になってくるでしょう」  このほかにも、東京五輪に向けて運営側に求められる暑さ対策は数多い。一般に5キロおきの給水がルール化されているが、さらに給水ポイントを増やすことも検討するべきだろう。コースの随所にミストシャワーを設置するといった対策も必要だ。現在検討されている路面温度を低減する遮熱舗装は早急に進めたい。ただし、暑さは日本人選手に有利に働く可能性があることも付け加えておきたい。 「日本の気候に不慣れな外国人選手に対してアドバンテージがあるのは間違いありません。地の利もある。コースを見る限り、最大の難所はゴール数キロ手前の四ツ谷周辺の上り坂。この付近までトップ集団にいられれば、メダルは濃厚です」(金氏)  棄権者が続出しないことを祈りつつ、日本のメダルに期待したい。(ジャーナリスト・田茂井治) ※AERA 2016年8月1日号
東京五輪
AERA 2016/07/31 07:00
上野優華 涙を誘うバラードの女王? アイドルの匂いかぐ悶絶女子? 可愛い顔に隠された実態(3周年イベント取材記事)
上野優華 涙を誘うバラードの女王? アイドルの匂いかぐ悶絶女子? 可愛い顔に隠された実態(3周年イベント取材記事)
上野優華 涙を誘うバラードの女王? アイドルの匂いかぐ悶絶女子? 可愛い顔に隠された実態(3周年イベント取材記事)  聴き手の心に寄り添い、涙を誘える歌手でありながら、女優としてホラー映画等でトラウマ級の狂気も演じ、アイドルとして見ても独自路線を突き進んでいる上野優華。7月24日 AKIBAカルチャーズ劇場にて【デビュー3周年記念イベント~進め!すだちっ娘!青春は君と共に!3年目~】を開催した。上野優華 キュートなライブ写真一覧 <寄り添える歌をうたっていくことが、私が想い描く歌手の理想像>  最新シングル『恋日記 / Summer Mission』のインタビュー(http://bit.ly/2atm3NU)では、「誰かの気持ちを救える……って言うと大袈裟に聞こえるかもしれないけど、寄り添える歌をうたっていくことが、私が想い描く歌手の理想像なんですよ。だからそうなっていけたらいいなって思います」「みんなでライブの臨場感を楽しめる曲も大事だなと思っていて、だから今年の夏はこの曲(「Summer Mission」)でみんなのハートをバキュン! したいと思います」と語っていた彼女だが、同公演ではその両方を体現するアクトもしっかり展開。 <アイドル界のバラード女王と称される女の子の実態=NOT清純派?>  3周年を盛大にお祝いするべくアッパーチューンを畳み掛けた前半、「一緒に声を出して盛り上がってきましょう!」と一瞬でシンガロングや「優華!」コールを生み出し、前述したサマーチューンでは「バキュン!」と満員の観客を片っ端から狙い撃ちし、その度に「ドキュン!」とハートマーク付きでリアクションさせるという、半ばノスタルジックですらある王道アイドル然とした光景を生み出していく。少女マンガも「角でぶつかった相手が実は転校生だった」的なベタベタの王道展開を好むと云う、上野優華らしい展開で楽しませてくれた。  アイドル界のバラード女王と称されることも多い彼女だが、そのイメージと実際のキャラクターには大きなギャップがあり、大好きなアイドルと対バンする際には必ず相手の匂いをかぎ、勝手に大悶絶して引かれるぐらいにはぶっ飛んだ女の子。というのがファンからすればよく知る実態。前述のハートマーク付き「ドキュン!」もさも自然発生したように記してみたが、実際は「やらなきゃ歌わない!」とダダをこねて強制したものであったり、「可愛い!」と褒められても「知ってます!」と即答したり、それをスタッフが実は「ウザ過ぎる」と思っていたり、それを知りながら「やめないけど!」と言い放ったり……要するに清純派のイメージとは掛け離れている。  が、それがとっても面白い。ツッコミどころ満載のツンデレキャラではあるが、それが実にチャーミングでもあり、放っておけばいつまでも観客とコミュニケーションが取れてしまうこのフレンドリーさは、アーティストとして見ても、女優として見ても、アイドルとして見たとしても、なかなか誰にでもマネできるものではない。このめちゃくちゃなところもあるけれども他に類を見ない稀少な存在感は、ぜひとも一度ライブ現場に足を運んで体感してみてほしい。 <幾度となく涙誘うバラード 杏里「オリビアを聴きながら」カバーも>  また、上野優華の体感してほしい部分と言えば、やはり歌声である。どんなに笑いを誘いまくっても、想定外の言動で驚かせることがあったとしても、それ以上に彼女のライブを観て驚かされるのは、まだ18歳の女の子とは思えない、どんなアイドルイベントに出ても衝撃を与えるであろう、王道バラードをドラマティックかつエモーショナルに熱唱してみせるその姿。この日も最新シングルより「恋日記」なる遠距離恋愛の歌を届けてくれたが、歌詞を練り直してもらうほど自身が表現したい世界観へ構築した楽曲だけあって、冒頭のフレーズ「好きにならなかったら こんなつらい想いすることはなかったのでしょうか?」から彼女の歌声が胸に沁みる。  ライブ後半では、ちょっとだけ大人っぽい衣装に着替え、岩永知佳(key)と加藤文枝(cello)の生演奏でバラードの数々を立て続けにお届け。憂いのある美声を存分に味わえるブロックが設けられ、誰かの気持ちに寄り添える歌をうたっていきたい……その想いが見事に体現された歌声は、先までの傍若無人な女の子のものとは思えないほど切なく、優しく、胸が張り裂けんばかりに想いを溢れさせながら歌い上げていく姿は、幾度となく涙を誘う。無論、音楽シーン全体を見渡せば、彼女より声量も技術もセンスもハイレベルなシンガーはたくさんいるが、この聴けば聴くほど愛おしくなる声質と、とにかく大好きな歌を誰かに届けたい、溢れるほどの純粋無垢な想いは、聴き手を選ばず魅了する。  この日も杏里「オリビアを聴きながら」を生演奏で歌唱していたが、家族の影響で子供の頃からバラードを歌い続けて育った上野優華は、ダテじゃない。さらに、アンコールでは、初めて作詞作曲の両方を自ら手掛けた「やくそく」も披露していたが、より自分らしい歌を追及していく為になら何にだってチャレンジする。一言で言えば、逸材である。アイドルの匂いをかいでいるただの変な女の子と思わず、ぜひその生歌を一度聴きに来てみてほしい。  「いつか、ここにいるみんなと一緒に夢を掴めるように頑張りたいと思います。皆さん、よろしくお願いします!」「すだちっ娘(※上野優華ファンの総称)本当に大好き! 愛してるよ~!」 <2nd Music Letter初内 初ツアーでWHY@DOLL/callme/さんみゅ~と2マン>  なお、この日のトークコーナーでは、2nd Music Letterを10月3日にリリースすることを発表。Music Letterとは、新曲をダウンロードできるシリアルコード&生写真が封書にセットされた“音楽の手紙”で、上野優華独自の音楽メディアとなっている。また、初となるツアーの【上野優華 1st LIVE TOUR ~すだちっ娘には旅をさせろ!~】開催も発表され、10月2日 東京・恵比寿ガーデンルーム(ワンマン)を皮切りに、WHY@DOLL、callme、さんみゅ~とのツーマン、そして11月23日大阪・梅田Zeela(ワンマン)で最終公演を行うことが明らかになった。可愛くて面白くて涙も誘える奇跡みたいな女の子・上野優華を丸ごと体感できるこの機会、お見逃しなく。 取材&テキスト:平賀哲雄 ◎ライブ【デビュー3周年記念イベント~進め!すだちっ娘!青春は君と共に!3年目~】 07月24日(日)AKIBAカルチャーズ劇場 セットリスト: 01.夢へのキズナ 02.旅立ちハイタッチ 03.Summer Mission 04.虹色シャボン玉 05.恋日記 06.すだちパッション 07.君といた空(生演奏) 08.星たちのモーメント(生演奏) 09.オリビアを聴きながら(生演奏) 10.シナモンティー(生演奏) 11.ありがとうを君へ(生演奏) EN1.やくそく ◎2nd Music Letter『タイトル未定』 2016/10/03 RELEASE 1000円(税込) ◎ツアー【上野優華 1st LIVE TOUR ~すだちっ娘には旅をさせろ!~】 10月02日(日)東京・恵比寿ガーデンルーム(ワンマン) 11月06日(日)神奈川・横浜BAYSIS(ツーマン/昼夜2公演)ゲスト:WHY@DOLL 11月13日(日)千葉・千葉ANGA(ツーマン/昼夜2公演)ゲスト:callme 11月20日(日)埼玉・西川口HEARTS(ツーマン/昼夜2公演)ゲスト:さんみゅ~ 11月23日(水・祝)大阪・梅田Zeela(ワンマン/TOUR FINAL) ※7/25(月)0:00~FC先行予約開始
billboardnews 2016/07/26 00:00
猫好きは悶絶…福井のお寺に「猫のパラダイス」があった! 
猫好きは悶絶…福井のお寺に「猫のパラダイス」があった! 
若いお坊さんに抱っこされて、猫もご機嫌… 最長老の猫「れお」。書籍の表紙などにたびたび登場している 「猫愛」を語る、御年89歳の板橋住職 外国からも観光客が続々。写真は香港から来た女子高校生 招き猫の周りには猫が集まる?  「福井に猫がいっぱいいる寺があるらしい」と聞いて車を走らせた。その寺は越前市庄田町にある御誕生寺(ごたんじょうじ)。曹洞宗の禅寺で、猫の供養、捨て猫の保護などを続けていたところ、常時30~80匹が集まるようになったとか。境内に入ると、いるいる! 石仏の足元、本堂の軒先、若い修行僧に甘えている猫も……。どの猫ものんびりとしていて、見ているだけで癒される。「猫好き悶絶」のスポットだ。  御年89歳の板橋興宗住職のそばでも、猫が居眠りしている。板橋住職によると、寺の建立中だった2002年、敷地内に段ボールに入った子猫4匹が捨てられているのを見つけ、えさをやったのが始まり。その後、子猫・成猫にかかわらず、多くの猫が持ち込まれ、“猫寺”と呼ばれるようになった。  猫が集まると、けんかが起こり、治療費もかかる。最も多い時で80匹にまで増えたため、えさ代と医療費が膨れ上がった。そこで捕獲して避妊・去勢手術を施したほか、3年前からはフェイスブックやブログで情報を発信し、飼い主を見つける「キティ ウォーカー」という活動を始めた。これまで、御誕生寺が結んだ縁でもらわれていった猫は280匹を超えたという。  板橋住職は宮城県出身で、海軍兵学校の学生時代に心のバランスを崩したことから禅に傾倒し、戦後に東北大文学部宗教学科で学んだのち出家した。福井県武生市(現・越前市)の瑞洞院、金沢市の大乗寺などの住職や、曹洞宗の大本山である總持寺の貫首、曹洞宗管長などの要職を経て御誕生寺を建立、住職となった。總持寺を開いた瑩山禅師が越前武生で生まれたことから、越前市に「御誕生寺」を建てたそうだ。 「私は宮城の農家の息子です。家ではネズミ捕りのためにいつも猫を飼っていた。幼いころは猫を抱いて勉強し、眠った思い出があります。猫はけんかをするけれど、人間みたいに戦争はしませんわなあ」(板橋住職)  板橋住職のあふれる猫愛が伝わったのだろう。現在は全国に御誕生寺の猫を支えるサポーターが増え、えさや募金、首輪などがどんどん送られてくるようになった。平日も観光客がいっぱいだ。社務所には募金箱が置かれ、足を運んだ人の多くが協力している。募金のお礼には、猫にちなんだ品やお守りをもらえるのがうれしい。記者も募金に応じ、カレンダーをいただいた。  カレンダーの主役となっているのは最古参の「れお」だ。10歳前後らしい。中国出身の女性が母国へ帰る際、寺に託していったとか。れおは、ぷっくりした口元とショボショボの目が愛らしく、取材した日はずっと眠ったままだった。「フェイスブックで(寺の存在を)知りました」という香港から来た観光客に安心しきった目を向け、頭をなでられていた。  現在、御誕生寺には30匹前後の猫がおり、二十数名の修行僧が交代で世話をしている。えさは1日2回、午前7時と午後3時半。当番の僧は猫砂を替え、本堂裏にある猫小屋(といっても、ちょっとした納屋のような大きさで、かなり立派)の掃除などを行う。冬場は小屋の中に湯たんぽやホットカーペットを入れて暖かくする心配りも。以前は病気やケガに苦しむ猫を動物病院に連れて行くこともあったが、近年は近隣の獣医師が往診に来てくれるようになった。  集まってくるのは生きた猫ばかりではない。本堂の裏には猫用の納骨堂があり、月に何度か「亡くなったペットを供養してほしい」と遺骨を持ち込む人もいる。「遺骨は10年経過すると、土に返す予定です」(板橋住職)とのことだ。御誕生寺では日曜日の午後に座禅会を開いており、「猫のご縁で出会った方が、その後もお寺に来てくださればうれしい」(同)との思いがある。  「十代後半に肋膜炎で長く入院していた時期がありました。また、敗戦濃厚な時期はイモのつるを食べて飢えをしのいだりもした。終戦がもう1週間遅ければ、私は飢え死にしていたでしょう」と板橋住職。青年期に、さんざん心身の苦痛を味わうも、長生きしてもうすぐ90歳に手が届く。これまでの人生で、猫から得た教えは少なくない。 「頭の中を空っぽにして、ただ寝転んでいられる。それで春の柔らかな風が吹いてくれば、気持ちよさそうに目を細めるし、危険が迫ればさっと身をかわします。思考や言葉の介入なしに、ただ反応するだけの実に爽やかな存在です」(板橋住職)  境内で蓮の花を眺め、猫をかわいがる板橋住職の周りには、訪問者が絶えない。御誕生寺はすっかり観光地となり、人が集まる場となった。ここは、猫が自由気ままに生きるパラダイス……。「うちの寺は宗教・宗派にこだわりません」(板橋住職)とのことだが、しいていえば集まる人はすべて“猫教”か“猫派”。座禅の極意を猫に求めているようでもある。(ライター・若林朋子)
動物
dot. 2016/07/22 11:30
ポケモンGOも影響する? 母親が知らない中学生の“スマホ事情”
ポケモンGOも影響する? 母親が知らない中学生の“スマホ事情”
子どもとスマホの正しい付き合い方は…(イメージ)  老若男女問わず、多くの人が手にするようになった、スマートフォン。便利なアイテムではあるが、一方で子どもに持たせる場合には注意も必要だ。うっかり課金してしまったり、思わぬトラブルに巻き込まれたり、ということがあり得るからだ。さらに、スマホ向けゲーム「ポケモンGO」もきょう7月22日に日本国内での配信も開始され、夢中になった子どもが事故や事件に巻き込まれる可能性も指摘されている。こうした状況をうけて、子どもがスマホとどう付き合っていくのか、さらに注意していく必要があるだろう。  現在の子どものスマホ事情はどうなっているのか。スマホを持つ中学生と、中学生の子どもをもつ母親への調査から読み取った。  モバイル専門マーケティングリサーチ機関であるMMD 研究所が6月に、中学1年生~3年生の子どもを持つ女性1148人と、スマホを所有している中学生370 人を対象に調査を実施。調査によると、中学生の携帯電話の所有率は57.1%。そのうちのスマホの割合は40.9%だった。スマホの所有率は2015年と比較して3.0ポイント増加していた。  母親に、子どもにスマホを持たせたタイミングをたずねたところ、中学1年生(48.7%)がもっとも多く、環境が変わるこの時期がひとつのタイミングとなっていることがわかる。持たせたきっかけについては、「子どもが塾に通い始めたから」(33.0%)、「自分が働きに出ているから」(22.6%)など、やはり環境の変化にともなって、子どもの安全やコミュニケーションを考えて購入する人が多いようだ。  そんな一方で、当の中学生はスマホをどう使っているのか。中学生に「自分のスマホを持ったとき、一番したいと思ったこと」をたずねると、ダントツで多かったのが「LINE」(53.0%)。2位のゲーム(19.2%)を大きく引き離した結果は、LINEが中学生にとっていかに重要なツールであるかを感じさせるものだった。  さらに、母親からは、子どものスマホにまつわる「驚いたエピソード」が寄せられた。エピソードはLINEにまつわるものが多く、「中学生になってLINEの友達の人数が200人を超えた(41歳・中学1年女子の親)」「LINEにつながっていないとクラスの中で話についていけないらしい(41歳・中学2年女子の親)」など。なかには「LINEのタイムラインはチェーンメールのように使用されていること(43歳・中学3年女子の親)」に驚いたという声もあった。  昔なら手書きの手紙で「○日以内に、○人にこの手紙を回さないと不幸が訪れる……」といった内容で回ってきた「不幸の手紙」が、携帯の普及とともに「○人にこのメールを出さないと……」というチェーンメールに変化。そしてスマホが普及した今では「○人にこのLINEを送らないと……」という形になっているという。友達作りやクラスのコミュニケーションに欠かせないツールなだけに、そういった迷惑メールの類も回ってきやすいのかもしれない。  また、子どもにスマホを持たせる際に気を付けたいのが「知らないところで課金されていた」という事態に陥らないようにすること。実際に子どものスマホについて、調査で「自分(親)の許可していない請求があった」と話した人も少なからずいた。請求の最高額を回答してもらったところ、その平均は「5万6616円」。背景としては「好きなアイドルについてネットで調べていたら、有料会員につながってしまった(52歳・中学3年女子の親)」、「子どもが、無料ゲームをしていたつもりで、知らずに課金していた(51歳・中学1年男子の親)」といった“無意識の課金”がある一方で、「子どもがコンビニ払いにして勝手に商品を頼んで買っていた(41歳・中学2年女子の親)」などというケースもあった。  いずれにしても平均5万円以上というのは決して少ない額ではない。こうしたトラブルを防ぐためにも、子どものスマホの使い方についてはしっかり把握しておく必要があるだろう。  しかしこの「把握」という点で、親と子ではその認識に大きな隔たりがあることがわかってきた。子どものスマホ使用に関して「どんなアプリを使用しているか」「メールやLINEの相手」などの8つの項目について、把握しているかどうか、母親にたずねた。すると、8項目平均で64.4%が「把握していると思う」「ほぼ把握していると思う」と回答していた。  一方、中学生に対して、同様の8つの項目について「親が把握していると思うか」と聞いたところ「把握している」「ほぼ把握している」と回答したのはわずか42.5%。親と子の認識に、2割以上も差があることがわかった。  わが子のものでも、スマホの使用実態というのはなかなかつかみづらいものなのかもしれない。トラブルを防ぐためにも、子どもとスマホの使い方について改めて話し合ってみてはどうだろうか。(文・横田 泉)
ポケモンGO
dot. 2016/07/22 00:00
貧困層に希望を…リオ五輪は“スラム街”を救えるか?
貧困層に希望を…リオ五輪は“スラム街”を救えるか?
リオ五輪開催でファベーラの子どもに楽しさや喜びを与えることができるか?(写真:Getty Images)  開幕まで、いよいよカウントダウンとなったリオデジャネイロ五輪(8月5日から21日)。ここへ来て世界の注目はロシアの組織的なドーピング問題をめぐる、リオデジャネイロ五輪出場の可否にフォーカスされている。本来ならば祝賀ムードで迎えられるはずの五輪の開幕に、またも暗雲立ち込めるといった様相だ。  しかし、その一方で目を向けたいのは、4年に1度の晴れの舞台で活躍を誓う選手たちの存在。とりわけ母国開催に臨むブラジル代表選手たちは並々ならぬ闘志を燃やす。  女子柔道57kg級での出場が予定されているラファエラ・シルバもその一人だ。出身はリオデジャネイロ。貧困層が暮らすファベーラで生まれ育った。柔道を始めたのは8歳のとき。女だてらにけんかっ早いのを案じた両親が柔道教室に通わせたのがきっかけだったという。  そんな彼女が頭角をあらわしたのは2011年。19歳のときに出場した世界選手権で準優勝し、翌年に控えたロンドン五輪の有望株に。ところが、メダル候補ともいわれ期待された本番では、まさかの2回戦敗退。しかも反則負けという悔いの残る結果に涙を呑んだ。  一時は周囲に「柔道をやめたい」と漏らしていたというシルバ。しかし、まだ20歳という若さと、貧しい暮らしの中で得たスポーツの楽しさや成功する喜び、そして何よりも地元で開催される五輪という自負が、彼女を再び競技へと駆り立てた。  女子柔道57kg級といえば、日本からはロンドン五輪の金メダリスト、松本薫が出場する。シルバと松本は2015年12月に開かれた「グランドスラム東京」の2回戦で対戦しており、このときはシルバに軍配があがった。ロンドン五輪のリベンジを誓うシルバと五輪連覇をめざす松本の対戦が再び実現すれば、注目の一戦となりそうだ。  「ファベーラの星」と称されるシルバのような子どもたちに、スポーツの機会を与え普及させるのが、南米初開催を打ち出したリオデジャネイロの五輪・パラリンピック招致の目的のひとつだった。実際、大会組織委員会は「トランスフォルマ(転換)計画」と呼ばれる独自のプログラムを大会1年前から展開。複数のファベーラで子どもたちを対象に、フェンシングやレスリング、バドミントン、ラグビーなど、ブラジルでなじみの薄い競技を体験する機会を設けてきた。  ブラインドサッカーをはじめとするパラリンピック競技も紹介され、ブラジル代表選手や学生ボランティアらの指導のもと、子どもたちが実際に目隠しをしてボールを蹴る体験やナショナルチームの試合の応援などを通じて、競技の楽しさを伝えている。  だが、五輪・パラリンピックの開催を契機とする、こうした意義ある取り組みも、相次ぐ公立小学校の授業閉鎖によって、実施が滞るという残念な一面もある。教師の賃金未払いが原因のストライキが頻発しているためだ。五輪が開催される8月は、もともと休校だということだが、そうした社会背景がスポーツ大国をめざすブラジルのスポーツ政策にブレーキをかけるばかりでなく、大会後に期待される五輪のレガシー(遺産)にも少なからず影を落としている。 (文・高樹ミナ)
リオ五輪
dot. 2016/07/21 18:00
学校現場の大問題

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クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

学校の大問題
働く価値観格差

働く価値観格差

職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

職場の価値観格差
ロシアから見える世界

ロシアから見える世界

プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

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