
想像以上に“日本に馴染んだ” DeNAバウアー「NPBに骨を埋める」可能性はあるのか
DeNAのトレバー・バウアー
今シーズン来日した超大物外国人トレバー・バウアー(DeNA)は将来的にどのようなキャリアプランを描いているのだろうか。米国復帰を目指しているのか。それとも、日本に骨を埋めるつもりなのか。
NPBではこれまで3試合に先発登板。初戦の広島戦こそ7回を9奪三振、1失点の好投で白星を挙げたが、その後の2試合は連続で炎上。その実力に疑問符がついている。だが、2020年にメジャーでサイ・ヤング賞に輝き、年齢も今年で32歳と“バリバリのメジャーリーガー”であるのは間違いない。
「体はそこまで大きくないが(185cm)、打者に的を絞らせないうまさがある。常時95マイル前後を記録する動くストレートと変化球で打たせて取ることで長い回を投げることもできる。先発に1人いれば助かるタイプで、普通ならメジャーの各球団から引く手あまたの投手」(MLBアジア地区担当スカウト)
能力的な部分では誰もが認める好投手だが、2021年5月にはDV疑惑が浮上してMLBが調査に乗り出す大事件となった。その後、出場停止処分を受け今季から復帰可能となっていたが、結果的に所属していたドジャースは契約を解除。今年3月にDeNA入りすることとなった。
「欧米ではDVに関して社会的関心が非常に高い。バウアーは法的には罰せられていないものの倫理的には大問題。獲得意思を見せただけでも非難を浴びることは目に見えており、当面の間、MLB球団との契約は難しいと見られている」(在米スポーツライター)
DeNA入りしたバウアーは問題が発覚する前から横須賀の練習場を訪れるなど、以前から交流があった。「彼は今罪に問われているわけではない、というのが大きなポイント」(萩原龍大チーム統括本部本部長)と現状を把握した上で獲得を決定。様々な条件を付けて1年300万ドル(約4億2000円)で契約を結んだ。
「優勝を狙うチームに実績ある本物の投手が加入した。DV疑惑や性格に難があるという噂があったので、チーム内に多少の緊張感はあった。しかし実際は明るく、気さくで偉そうな部分は全くないナイスガイで本当に心強い」(DeNA関係者)
来日後は親日家の面を至る所で発揮、チームに溶け込むのも早かった。移動には電車を使い、自ら神奈川県内の野球専門店で和牛JBグラブを購入して使用していることなどが話題となった。
「2009年の日米大学野球で来日してから日本が大好きらしい。自身のYouTubeチャンネルを見てもわかるが、日本文化に興味津々で多くのことを吸収しようとしている。日本に馴染むことで野球にも好影響が及ぶはず。ビジネス面を度外視すれば日本で骨を埋める可能性もある」(DeNA担当記者)
バウアーの今後に関しては多くの噂が飛び交い、MLB復帰を見据えてのDeNA入団という声も少なくない。しかしグラウンド内外で日本生活を心底エンジョイしている様子を見ると、契約延長の可能性もゼロとは言えないようにも感じるが……。
「日本のことは好きだろうが、野球選手としてのビジネスは別問題。DV疑惑という問題を抱えてはいるが、投手として一級品なのは明白。状況が整いMLB復帰に障壁がなくなれば、獲得に動く球団は複数あるはずで桁違いの契約を結べる」(スポーツマネージメント会社関係者)
「DVは重く受け取られる問題だが、米国はセカンドチャンスを与える国でもある。MLB復帰には時間が必要だろうが、獲得に向けて前向きな球団もあるという。以前に近い投球ができるなら、時期がくれば米国復帰が濃厚でしょう」(在米スポーツライター)
今季の1年契約が終了した時点で再びFAとなるため、来季以降は現時点では不透明だ。いずれにせよ、バウアーはコンディションを保ち「投げられる」状態を維持することが大事になるが、来日後ここまでは「らしさ」全開とは行かず、今後の活躍を不安視する声も出始めてはいる。
「昨年1年間は実戦で全く投げていない。多くの球種を織り交ぜた投球術を大事にするタイプなので、感覚が戻るまでは仕方がない。NPBという初舞台への適応も必要。アジャストのうまさも持ち味だけに、あと何回か投げれば結果に結びつく投球ができるでしょう」(MLBアジア地区担当スカウト)
サイ・ヤング賞投手の肩書き、DV疑惑の過去など注目を集める要素が揃っている。普通の投手なら「調整段階なら合格点」と言われる投球内容でも厳しい判断をされてしまうのは仕方がない。
「米球界関係者は冷静に見ている。メディアやファンは結果に一喜一憂するが、球質やコンディションを客観的にジャッジしている。現時点では以前と遜色ないという声も聞こえる。MLB復帰が可能となった際には獲得競争になるはず」(在米スポーツライター)
「米球界は好景気で、仮にバウアーがMLB復帰する場合はNPB球団とは比べ物にならない金額が手に入る。日本で骨を埋めるとすれば、心底から日本を愛している場合だけだろう。結局は本人の気持ち次第」(DeNA担当記者)
これまでも多くの大物外国人選手がNPBにやってきたが、“日本に合わず”早い段階で帰国するケースも少なくなかった。しかしバウアーの場合は日本で長くプレーすることもあるのでは?と思わせてくれるほど、“馴染んで”はいる。
「バウアー人気でグッズはバカ売れ、横浜駅ビルには大型広告が掲出される騒ぎ。多少の金額を払っても回収は可能なはず。DeNAを含めたNPB球団は人情のみではなく、条件面でも本気の誠意を見せて欲しいものです」(スポーツマネージメント会社関係者)
開幕から2カ月しか経過していない段階で早くもオフの去就が話題になるほど、バウアーの影響力は大きい。
野球界では不祥事が多発、イメージダウン進行中の今だからこそ必要な存在。大谷翔平(エンゼルス)ら一流の日本人選手がメジャーに活躍を求める今、逆に米国から来た大物は貴重でもある。1年でも長く日本でプレーしてNPBを盛り上げて欲しいとも思う。