気になるのは、抜歯することがあるかどうかです。うたい文句として「抜かずに治す」などが目につきますが、「絶対に抜きません」とはいえないケースもあります。日本矯正歯科学会認定医・臨床指導医でのむら矯正歯科院長の野村泰世歯科医師は次のように話します。

「たとえば、あごに対して歯が大きすぎて他の歯のスペースがない、前歯が前に突出している、口元が出ている、生まれつき歯が多い(過剰歯)などでは、抜かずにおこなうと、歯並びを悪化させてしまう、あるいは噛む機能を低下させるケースもあります。主治医から抜歯の提案があったら、じゅうぶんな説明を受けて、納得のうえで矯正歯科治療を進めるようにしてください」

 近年、取り外し式のマウスピース型の矯正装置「アライナー」を用いる矯正歯科治療が広まっています。治療開始時の歯列から治療のゴールとなる歯列まで、複数のアライナーをつくり、だいたい1~2週間ごとに交換していく方法です。装着しても目立たず、取り外しができるために扱いやすい印象をもちます。しかし毎日20時間以上の装着が必要なこと、厳格な自己管理が必要なことなどで、かなりの努力が必要になります。一つの装置で動かせる距離が少ないことから、どんどん新しいものに替えていきますが、最初にシミュレーションしたとおりに歯が動かないこともあるため、ブラケットを付けておこなう矯正歯科治療より難しい場合もあるそうです。

「アライナーが適応になるのは不正咬合が軽度な場合に限られます。不正咬合が高度な場合や、あごや顔面の骨格を治す必要がある場合、埋伏歯を引っ張る必要がある場合にはアライナーの効果が見込めません。なにより子どもの場合、成長期の歯やあごは変化が激しく、何度もアライナーのつくり直しが必要になり、さらにじゅうぶんに歯磨きができずに、アライナーを付けることでかえってむし歯が増えるリスクが高くなります。アライナーは子どもの矯正歯科治療には向かないと考えます」(野村歯科医師)

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7~9歳くらいでパノラマX線撮影を受けるのが望ましい