「野球の街越谷」実行委員会を立ち上げた、市立大相模中学の野球部顧問・長瀬翼教諭(撮影/國府田英之)
「野球の街越谷」実行委員会を立ち上げた、市立大相模中学の野球部顧問・長瀬翼教諭(撮影/國府田英之)

 チームによってはユニホームをレンタルしてくれるところも増えている。

 仮に、バットを買わず、ユニホームの上下を借りることができれば2万円が浮く計算だ。もちろんサッカーやミニバスでもユニホームをレンタルできるチームがあり、野球だけが安くなるわけではないが、それでも大幅な費用削減になる。

「よくわからないまま『高い』と思い込まずに、まずは気軽に聞きに来てください。中にはグラブを貸し出してくれるチームもありますよ」(下田さん)

 用具の高額さが野球離れの一因となっている現実に、指導する大人たちも動き始めている。

「打球がよく飛ぶ4万円のバットなど、小学生にそんな高額の用具がいるのかと疑問に思うものも確かにあります。用具を良く知らない親が見たらびっくりして、野球が金持ちスポーツだと誤解されてしまいますよね。高い用具を買わなくても、ちゃんと野球はできます」

 こう話すのは、埼玉県越谷市にある市立大相模中学の野球部顧問・長瀬翼教諭(34)だ。長瀬教諭は2005年の夏、埼玉・春日部共栄高のレギュラーとして甲子園の土を踏み、平田良介(中日)、辻内崇伸(元巨人)、中田翔(巨人)らを擁する大阪桐蔭と好勝負を演じた元球児である。

 越谷市も野球人口の減少が進んでおり、危機感を抱いた長瀬教諭は地元の少年野球チームや高校野球部の監督、大学野球部と連携し、今年4月に「野球の街越谷」実行委員会を立ち上げた。吉本興業らと協力して、初心者の子どもを対象にした野球イベントを開催するなど、野球人口の復活を目指し勢力的に活動している。

「経済的な問題で子を野球チームに入れるのをためらう親や、用具にかかるお金で親に負担をかけたくないと、野球をあきらめようとする子どもを支援していきたいんです」(長瀬教諭)

 実行委では、企業から協賛金を募って野球用具をまとめて購入し、部活動や少年野球チームに支給する計画や、野球イベントの際に古い用具の即売会を開くことなどを検討しているという。

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保護者の負担を軽減する取り組みも