そうした強さと冷静さを兼ね備えたディフェンスを披露し続けた冨安についてパートナーの吉田は「難しい処理をうまくすることがうまいし、ソツがないプレーができるのもディフェンスとして、センターバックとしてやっぱり経験を重ねないとできないことだけど、20歳でそれができているというのはすごい」と称賛する。

 さらに、長友は「今日センターバックで冨安が素晴らしかったですよね」と自ら報道陣に同意を求めた。

「あれ20歳で20番相手にね、あれはスーパープレーの連続でしたよ。彼、すごいね。ちょっと規格外だよね。20歳でこれだけのプレーができるというのはこの舞台で。この落ち着き。これはもう僕親心ですよ。成長してほしいですよ。どんどん飛躍して彼ビッグクラブで戦える選手になってほしいなと。お父さん気分です」

 本当にイランというアジア随一の相手に対して、的確に冷静に、対人能力をうまく使い分けながらほぼパーフェクトなプレーを見せた冨安。そうした20歳のプレーにはキャプテンの吉田も触発されるようにイランの攻撃を防いでいた。

 その中で22分に権田のフィードミスからショートカウンターを受けたシーンでは冨安がそこまでほぼ完璧に抑えていたアズムンとMFのハイサフィにワンツーで破られ、カバーに入った柴崎も抜かれて権田が左足一本で触って防いだシーンがあった。「(アズムンが)危険な選手ということはわかっていましたし、実際に前半の一回ビッグチャンスを作られてしまった。あれが決まっていたら、わからなかった」と冨安は反省する。

 また後半にはロングクロスに対応が被り、しかしアズムンも同時に被って助かったシーンがあった。「減らすというか、ない方がパーフェクトですし、それに近づけないといけない。それでやられているかもしれなかったので」と語る冨安はそうしたミスも成長の糧にする。すでにハイレベルで頼りがいのあるディフェンスを見せてくれているが、さらなる成長が見込めることは間違いない。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。