大舞台で「規格外」のプレーを披露した冨安健洋(写真:getty Images)
大舞台で「規格外」のプレーを披露した冨安健洋(写真:getty Images)

 森保一監督が率いる日本代表は、アジアカップの準決勝で強豪イランに3-0で勝利し、アブダビで行われる決勝に進出した。長友佑都が「スーパーゲーム」と一言で表す通りのパフォーマンスで、チームとしての勝因はいろいろあるが、攻撃面でスペシャルだったのが5試合ぶりに先発復帰した大迫勇也ならば、守備面でスペシャルだったのは冨安健洋だ。

「相手もシンプルにロングボールを放り込んでくることが多かったですし、日本の前線の選手もしっかり切り替え早くして、ある程度、限定された中でロングボールってことも多かったんで、僕だけの力ではない」

 そう謙虚に振り返る冨安だが、開始3分にイランGKベイランバンドの左へのロングキックを巡り、酒井宏樹がアミリに競り負けたシーンでは裏を狙うアズムンと並走しながらボールから遠ざけ、権田修一のカバーにつなげた。5分にはGKから中央めがけたキックに対して助走を取って跳躍したアズムンに競り勝ちボールをはね返した。さらに10分にもアズムンに競り勝ち、空中戦で完全に冨安が制空権を取ったことが日本のディフェンスを有利にした。

 地上戦でのカバーリングも見事だった。前半10分には左サイドを破られてインサイドに流れたジャハンバフシュから危険なスルーパスをアズムンに出されたが、素早く察知した冨安がアズムンのコースに先回りしてクリアしたのだ。

 これまで4得点を挙げ、多くのチャンスの起点になってきたアズムンを20歳の冨安が空中戦、地上戦と完璧に防いだことで、187cmのFWタレミを出場停止で欠くイランはかなり攻撃が限定された。対人戦の強さが目立つ冨安だが、非常にクレバーな判断力を発揮したシーンが15分にあった。

 イラン右サイドのレザイアンがロングボールを蹴ると、吉田麻也とアズムンが競り合い、彼らの頭上をボールが通り過ぎる。するとアズムンはスピードを生かして裏のボールを奪おうとするが、冨安が先回りしてそれをさせない。そしてGKの権田にただバックパスするのではなく、ゴール右側にパスを出すことで、権田がアズムンのプレッシャーを受けずに前線めがけてボールを蹴られる状況を作り出したのだ。

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ほぼパーフェクトなプレーを見せた冨安