2015年6月、メジャーのレンジャーズを退団した直後の元阪神・藤川球児を獲得した。NPB復帰を目指していた藤川にとって、故郷・高知で「プロ」として投げることは調整の場としても、さらに恩返しの意味でも、ベストマッチの場だった。観客動員を大きく伸ばした高知はその年の黒字額が1100万円と、球団創設11年目で最高額を記録。藤川はそのオフ、古巣の阪神に復帰したが、双方にとって、まさしくウィンウィンの相乗効果。メリットは実に大きかった。

 さらに2017年、高知は世界の野球界すら揺るがせた。レッドソックス、ドジャースなどで活躍し、メジャー通算555本塁打を放ったスラッガー、マニー・ラミレスを獲得したのだ。世界的な大スターが高知でプレーすることで、観客動員も大幅に伸びた。2016年の1試合平均511人から、2017年には740人に。しかも、ラミレスが出場した20試合に限れば866人。年間予算が1億円前後という独立リーグ球団にとって、1試合500人以上をコンスタントに集客できれば、収支は均衡するところまで持っていけると言われるだけに、ラミレス効果は絶大なものがあり、高知という小さなマーケットで、高知球団は2017年まで4年間連続で球団収支の黒字を達成している。2018年も黒字見込みで、経営が苦しいと言われる独立リーグ界でも、スターを呼ぶだけではなく、農業をはじめとした地域密着の球団戦略で安定した経営を続けている。

 もし、松坂が高知に来ていれば--。

「すごくフィーバーしていたんだろうなと思いますね。藤川さん、ラミレスさんと、ウチには前例がありますけど、松坂さんがもし来てくれていたら、どうなっていたのかなというのは、今でも思いますね。希望というのか、夢があるじゃないですか」

 元プレーヤーの梶田だから、よけいに感じるのかもしれない。復活をかけ、自らの力を信じて、高知という一地方でプレーする。その姿に、若いプレーヤーたちだけでなく、地元の人たちも共感し、後押しする。松坂大輔という存在の大きさは、それだけ高知を巻き込む力も大きかっただろう。

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松坂、今季最後の登板は