松坂は名古屋という新天地を選び、今季最終戦を前に6勝をマークしている。右肩、右肘にメスを入れ、ソフトバンクでの3年間では1軍登板1試合のみ。もう終わったと思われたベテランの華麗なる復活に「カムバック賞」の声も挙がっており、10月9日のセ・リーグ理事会では、松坂が同賞の対象となって投票が行われており、11月の同理事会で承認されれば、松坂の受賞が決まる運びとなる。

「周りから“無理”と言われていましたけど、いい意味で裏切ってほしいなという気持ちはありました。あれだけの活躍ですもんね」

 松坂獲得という“夢計画”は幻に終わったものの、梶田は松坂の活躍ぶりを心から喜んでいた。その復活イヤーの2018年も、いよいよ幕を閉じる。10月13日の阪神戦(ナゴヤドーム)が、中日の今季ラストゲームで、僚友の岩瀬仁紀、荒木雅博の2人がこの試合を最後に現役引退。松坂を中日に呼び寄せた恩人とも言える森繁和監督も、今季限りの退任が決まっている。

 一方の阪神も、金本知憲監督が今季限りでの辞任をすでに表明。あらゆる人たちの“お別れ”が交錯するナゴヤドームで、松坂は今季6勝のうち5勝を挙げており、さらに阪神相手には3勝とキラーぶりを見せている。その2018年のラストゲーム。松坂が登板する可能性は低いが、森監督の、岩瀬の、荒木の、そして金本監督の有終の美に花を添える男にふさわしいことだけは、誰も異論を唱えないだろう。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。