そういう意味で、やはり期待が高まるのが遠藤航(シントトロイデン)だろう。93年生まれの彼は現在25歳。2016年リオデジャネイロ五輪代表でもキャプテンを務め、ロシア大会のメンバーとして2カ月前の激闘を経験。出場機会こそ得られなかったが「ワールドカップにでられなかった悔しさ、(ベルギー戦で)ああいう負け方をした悔しさはつねに持ち続けないといけないと思っている」と自らに言い聞かせている。自分に足りないものを埋めるべく、7月末にはベルギー1部への移籍を決断。守備の選手が異国ですぐに周囲の信頼を勝ち取るのは難しいことだが、彼は新天地デビュー戦だった8月5日のゲンク戦でいきなり初ゴールをゲット。そこから一気にスタメンの座を勝ち取り、長年の希望だったボランチでプレーしている。

「ベルギーは基本的にカウンター合戦になるくらいハッキリした戦い方をするチームが多い。その中で自分は個の部分で相手キーマンを抑えられるかどうか。監督からもつねに10番的な選手をマンツーマン気味につかせてもらっているし、ベルギーサッカーにも慣れてきている」と進化の手応えをつかんでいるという。

 長谷部が抜けたボランチの穴をどうするかというのは、新生日本代表にとっても重要な命題に他ならない。ロシアでは柴崎岳(ヘタフェ)が目覚ましい働きを見せたものの、新シーズンの所属クラブではボランチの4番手と苦境にあえいでいる。今夏のビッグクラブへの移籍話もまとまらず、本人は焦燥感を抱えながら日々を過ごしているだろう。同じくロシア組の山口蛍(C大阪)と大島僚太(川崎)は揃ってケガで今回の代表を辞退していて、ボランチの人材は決して潤沢とはいえない。これまで代表では右サイドバックで起用されることの多かった遠藤も、森保監督からはボランチで使われる可能性が高い。その結果、大黒柱を担うべき選手だと判断されれば、「ポスト長谷部」浮上が現実味を帯びてくる。

 そうやって遠藤が存在感を高めるのはいいことだが、リオ世代では彼のリーダーシップがあまりに傑出しているため、他のメンバーが遠藤に依存しすぎてしまうことになりかねない。そんな危惧も少なからずある。彼自身も代表では3バックの一角やサイドをやる可能性を口にしていて、起用ポジションがまちまちになると安定したパフォーマンスが出せなくなることもあり得る。リスクヘッジという意味でも、別のリーダー候補も見つけておくべきではないか。

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思い切っての抜擢も必要か